第21話 盗賊団を成敗ですわ~~♪

 俺たち4人は、街道の脇でどんちゃん騒ぎする盗賊団の前に颯爽と飛びだした。


「そこまでですわ!」


 騒いでいた盗賊たちの目が一斉にこちらに向く。

 そのうちの一人が酒瓶を片手に、ゆっくりと近づいてきた。


 後ろには馬車が2台。そして商人と思われる人たちが縛られている。


「ああ? なにがですわ~だ。おまえ、どこぞの令嬢かお姫様かよ」


「黙りなさい!かんねんしなさいですわ!」


 たしかに、口調のクセが強い……


 仮面をつけている意味はあるんだろうか……


「うるっせぇなあ~~なんだそいつら!」

「あ……ボス」


 奥からのっそりと立ち上がる大柄の男。どうやらこの盗賊団のリーダーらしい。

 そのボスが口を開く。


「さてはおまえらぁ~俺たちの戦利品を奪いに来やがったかぁ」


「何を言ってますの?わたくしたちは正義の執行人ですわ!」


「はぁ? そんな仮面をつけた集団が正義だぁ? 俺らと同業者だろうが」


 ふむ、ぶっちゃけ反論できん。

 俺らめちゃくちゃ怪しい格好をしているのは事実。盗賊団より怪しいかもな。


「おい、なんで果物ばかり狙うんだ?」


 俺は無理やり横から会話に入った。仮面についての問答はやるだけ無駄だし。

 さっさと本題に入ろう。

 この盗賊団は果物ばかり狙っているらしいが、その理由がわからない。



「へっ!いいだろう……学のないやつに教えてやる。いいかぁ~果物ってのはなぁ、食後やおやつの時間のすっげえ大事なお楽しみだ」

「お、おう……?」


 え? なになに? なんか真面目な顔し始めたぞ、このボス。


「俺様だって三時のおやつは楽しみだからな。これが食いたくてぇ頑張ってんだ」


 盗賊団に三時のおやつなんてものがあるのかはさておき、話の続きを聞く。


「それが出ないってなったらどうなる? ああ?」

「ああ、まあ……残念ではあるだろうな」


「だろう! ってことだよ!」


 え? 


 どういうこと?


「ま~だ、わかんねぇのか? つまり俺たちが果物を奪えば、王都の奴らの楽しみが無くなるだろうが!そうなれば士気はダダ下がりだし、王への反感も高まるだろうが! その隙を俺たちがついて、この国を乗っ取るんだよ!」


 おい……


 なんだそのツッコミどころ満載の計画は!!


 なんかもっと裏があるのかと思ったが、全然違った。

 裏で糸を引いているやつとかいないだろう。


 まったく昔のニチアサ特撮悪の組織がやりそうなことしやがって。



レッド(ショウタ)、この者たちは、どうやらただの三下盗賊のようですわ」


「ああ、そのようだな」


 まあ最初から魔族つながりのイベントなんて発生するわけないか。

 最近俺もルーナに影響されてきたのかもしれない。


 だが、盗賊は盗賊だ。被害も出ているし、ここは気を引き締めてとっちめないと。


 三下と言われたボスが、苛立ちを露わにして剣を抜き放つ。


「ザコがぁ!なにをほざいてやがる! てめらぁ~~やっちまえ~~!」


 盗賊たちが武器を手にこちらへ向かってくる。


「ぐへへへ~~変な仮面つけてるけど、よく見ればいい身体してんじゃねぇか~」

「ああ、赤仮面を始末したら残りの3人はじっくり楽しもうぜぇ~~じゅるり」


 ゲスなセリフを吐きながらグフグフする盗賊たち。

 数で俺たちを圧倒しているからか、自分たちの勝利を確信しているようだ。


 俺たち仮面組も、各々戦闘態勢にはいる。


「みなさん、成敗ですわ~~!!」


 ルーナが腰のレイピアを抜き、俺たちに号令をかけた。


 シオリちゃんが風魔法で盗賊団全体の動きを鈍らせる。


 アンナさんは、短剣を両手に持ちとんでもない速度で盗賊団の中をかき回す。

 このメイドさんは戦闘も得意らしい。いつもどおりの無表情かどうかは仮面でわからんけど。


 そして俺は……


 ルーナの胸から出したピチングマシーンで、高速たわしをぶつけまくっていた。


「ぐはぁ~~痛てぇえええ!!」


 たわしが直撃した盗賊は腹を押さえ、転げ回りながら悶絶している。


 さすがに扱いに慣れて来たのか、バンバン命中するではないか。

 それにダンジョンの魔物に比べると盗賊たちの動きが速いわけでもなく、なんかちょっと拍子抜けな感じがする。


 そしてピンク(ルーナ)はレイピアをふるい、華麗に舞っていた。

 もう、舞うたびにすっごい白いの見えているけど。



 そして数分後。


 盗賊団は俺たち4人の仮面によって、あっけなく鎮圧されてしまった。


 盗賊たちを拘束して、捕まっていた人たちの縄を解いていく。

 シオリちゃんはケガ人に回復魔法をかけていった。


「ふぅ~~任務完了ですわ」

「捕まっていた人たちは、どうするんだ?」

「まずは騎士団に通報して来てもらいますわ。馬車もこんな状況ですし、被害報告もしてもらいますわ」


 たしかに、ルーナの言う通り商人たちの馬車は損傷が激しくとても使えそうにはない。

 騎士団に保護してもらう必要があるってことか。


「ですが……もっといかにもって敵は出てきませんでしたわ~~」


 少し不満気な言葉をもらすルーナ。

 こら、商人さんたちの前でそんな事言うんじゃない。


 それに……


「そんなこと言ったら、フラグになるぞ」


 捕まっていた人たちの縄をほどきながら、俺はピンク(ルーナ)に視線を向ける。


「まあ!それは予言書(ラノベ)で学びましたわ! ってことは~~今から何か起こりますのね!」


 いや、まあぶっちゃけノリで言ったけどね。

 現実的にそんなことそうそう起こらないから。


「チッ……予定外な事が起こりすぎじゃ。アホどもとの旅もこれまでじゃな」


 そうそう、こんなセリフが出てきちゃうなんてことはないから……って、あれ?


 盗賊に捕まっていた1人の男が、むくりと立ち上がる。


 ちょっと待って。この人の縄って解いたっけ?


 いきなりバリバリっという音がして、その男の体が人外のものへと変化していく。

 頭には一本の角、灰色の肌、そして背中には羽。


 えぇ……こ、これって。


「こいつら商人に紛れて【結界】内に侵入できたまでは良かったが、アホくさい盗賊が出てくるとはのう」



 ―――魔族じゃないか!!



「予定より早いが仕方あるまい。

 ここにいる奴らは――――――皆殺しじゃ。ギヒヒヒヒヒ」


 ギヒギヒと不気味な笑いを漏らす魔族。



「さあ~~出ましたわね魔族! やはりレッド(ショウタ)さまのいるところに事件アリですわ~~!」



 ええぇ……マジかよ。






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