第13話 まあ~その筒の束、なんですの~♪ 最強のガトリングガンです

 GAU-8、通称アヴェンジャー。

 世界最強のガトリングガン。


 鋼鉄で覆われたその全身から突き出る7本の銃身が、兵器としての存在感を強調している。


 てかデカいっ! 

 ガトリングガン自体を見たことないけど、それでも異常なデカさという事はわかる。

 なんかの解説動画で見たことあるが、実物の威圧感がとんでもないぞ。



「まあ!まあ!なんですのそれ! 筒が何本もありますわ~~」



 ルーナの目が輝いている。

 前回も筒(88ミリ砲)で無双したからか、筒に対する期待感が半端ないな。


 でもお姫様が筒で喜ぶのはマズい気がするよ……


 が、今はそんなこと言ってる場合ではない。


 リンカがピンチだ。

 周囲を魔虫「G」に囲まれている。


 さらにリンカは、斬り込んだ先で意識を失っているようだ。


「よし、まずは周辺の魔虫を掃討するぞ!ただしリンカの方向には撃つな!」



『―――了解! アヴェンジャー! 射撃開始ラジャー ガトリングガン オープンファイア!!』



 7本の砲塔が、ブォオオというけたたましい駆動音を鳴り響かせ回転を始める。


 同時に30×173ミリ弾が凄まじい勢いで発射されていく。

 うぉおおお!地面が揺れるぅうう!!


 とんでもない反動だ。発砲とともにダンジョン自体が軋んでいるような感覚に陥る。


 そして、その弾丸たちの的になったやつら。


 魔虫「G」はまるで大量の風船が破裂するかのように、次々と粉砕されていく。



「うわぁ……これ、オーバーキルなんじゃ……」



 魔物に穴があくのレベルじゃない。

 原型を留めずに、バラバラに吹き飛んでいくといった方がしっくりくる。



「ヒィイイ~~な、なんだ、あの魔法はぁああ!む、無詠唱で連続発動だとぉおお!? ただのおっさんじゃないのかぁあああ!」



 魔族ゲルマが怯んだ声を漏らす。

 その気持ちは良く分かる。召喚した俺自身も「なんじゃこりゃ!」状態だよ。


 リンカの周辺にいた「G」たちも異常な事態に混乱しているようで、密集状態が少し緩みはじめた。



 ―――いた! リンカだ!



 倒れてはいるが、体が僅かに動いている。

 良かった、まだ無事のようだ。


 だがどうするか……俺が動くとアベンジャーへの指示が難しいぞ。


『マスター、召喚物の操作を一時的に委任することは可能デス』

「え? そうなのか。じゃあ……」



「まあ!では、わたくし撃てますの! バンバンしていいんですの!!」



 ヤダ。このお姫様、目がキラキラしてるよ。


『はい、マスターが委任すれば。ルーナでも射撃できマスヨ』


「まあ!まあ!まあ! では私が援護しますわ~~ショウタさまはリンカさんを救出するのですわ!」


「よし、じゃあルーナに一時的に指揮権を委任してくれ」

『了解です。マイマスター』


「フフ~~お任せくださいですわ~~」


 にしてもこのスキル、普通に他人と話してるんだけど。

 スキルの声って本来脳内に響くんじゃなかったか。


 まあ、その方が楽だからいいんだけど。


「ルーナ、アベンジャーは想像以上に強力な武器だ。取扱いは慎重に頼むぞ」

「了解ですわ~~」


 満面の笑みでビシッと敬礼するお姫様。そのポーズはどこで覚えたんだ。

 だが、頼もしくもある。


「よし、ルーナ。俺が通る道を作ってくれ。その後は周囲の敵を掃討してできるだけ「G」を近づけさせないでくれ。細かいことは任せるぞ!」



「ハイですわ~~! さあ~~まずは前方の魔虫どもを蹴散らしますわよぉおおお!」


『了解デス、マイプリンセス! ―――再装填! 撃てぇリロード ファイアー!!』



 前方に蠢く魔虫が、高速の弾丸で消し飛ばされていく。


 よし! 行くぞ!


 俺はリンカにむかって走り出した。


 アベンジャーで蹴散らしているとはいえ「G」の数は半端ない。道中ガンガン俺に体当たりをかましてきた。


 だが、覚醒君で鍛えられた俺。こんぐらい耐えられるぞ!


「―――リンカ!! 大丈夫か!」


 俺はリンカの元に滑り込むと。そのまま彼女の上に覆いかぶさる。


「G」が再び彼女の周りに接近してきたからだ。


 クソ……こいつら何匹いるんだよ!

 ルーナが周辺の「G」を掃討してくれるはず。それまでは―――



「―――うぉおおお、根性ぉおおおお!!」



 背中にガンガン衝撃を感じる。

 彼女は意識はあるようだが、グッタリとしている。苦手な虫、もっといえば超苦手な「G」に懸命に立ち向かったのだ。身体にも精神にも負荷が掛かりすぎたのだろう。


「大丈夫か? もう少しの辛抱だ」


 そう言うと、彼女はゆっくりと手を差し出してきた。


 俺はそっとその手を握る。


 そんな状態がしばらく続いたあと……


 俺の背中から衝撃が無くなった。「G」たちが後退をはじめたようだ。

 この気を逃すわけにはいかない。


 俺はリンカを抱き上げると。ダッシュでルーナの元へと駆ける。しっかり援護射撃をしてくれたので、妨害されることなく走り抜けることができた。


「ルーナ、助かったよ。良くやってくれた」


 俺はアベンジャーの横で奮闘する桃髪の美少女に声をかけた。


「ルーナさん……?」


 俺の問いかけに反応がない。


「なんですのこれ~~! すっごい気持ちいいですわぁああああ!

 さあ~~まだまだ攻撃続行ですわ~~~!! 撃て撃て撃て撃て撃てぇええですわ~~!!」


『仰せのままに、マイプリンセス! ―――了解! 射撃続行!ラジャー キープシューティング撃て!撃て!撃て! 撃ちまくれぇええ!!ファイア ファイア ファイア シュート ゼム オール


 聞いちゃいないよ。


 てかダンジョンの壁まで穴だらけになってきてるやん! 


「わあぁあルーナさん、いったん冷静になって! ストップ!ストップ!!」


 俺はハイテンションお姫様から、スキルの指揮権を返してもらう。


「あーん、もっとやりたいですぅ! ショウタさまのイジワルぅう!」

『マスターのイジワルゥ!』


 ダメだ……この子にこういうのやらしちゃダメだ……

 あと、スキルも変な感じに悪ノリするんじゃない。



「チクショウ!ふざけやがって! このクソ人間どもがぁああ!」



 こんなアホなやり取りを見てか、魔族ゲルマが青筋を立てて怒りの罵声を浴びせて来た。


 ハイテンションルーナのおかげでかなりの「G」が粉砕されており、残りは100匹ぐらいにその数を減らしている。



「ぬぐぅうう~時間をかけて増やした魔虫たちが……だが残った100匹は手塩にかけて育てた初期メンツだ!俺様が一ヶ月―――なにもしてなかったと思うなよぉおお! 前列ぅうう!

 ――――――詠唱はじめろやぁ!」


 先頭の「G」数匹がなにかゴニョゴニョと音を漏らしはじめた。


「しょ、ショウタさま! これ……!」


 通常テンションに戻ったらしきルーナの顔が、驚きの表情に染まっていく。


「「「「「―――ふぁいあぼーる」」」」」


 複数の何かが放たれ、俺たちの方に飛んできた。


「うおっ! 危ない!」


「G」から放たれたのは……なんと火の玉である。


 あまり狙いが正確ではなかったので、回避することはできたが……


「ヒャハハハ~~どうだ! 凄いだろ!」


 ゲルマが勝ち誇ったかのように笑いを漏らす。


「虫が魔法を使うなんて……信じられませんわ」


「そりゃそうだぜぇ~~なんせ一か月もこのダンジョンで暇すぎたからなぁ~~」


 クソ、暇つぶしで虫に魔法教えるなよ。


「ですが、ショウタさま。所詮は虫の魔法、精度は低いです!恐るるに足らずですわ!」


「ヒャハハハ~~たしかにその女の言う通りかもなぁ~でもなぁ~整列!」


 ゲルマの掛け声と共に、「G」たちがザザっと整列する。

 横一列にならんだ魔虫「G」。


「どうだ!100匹同時詠唱だぁああ! ヒャハハハ~~!」


 なるほど、一気に100発のファイアーボールを撃つのか。


 だが―――


「横に並んでくれたので簡単だな」

『はい、マスター。やはりアホな敵デシタネ』



「GAU-8(アヴェンジャー)! 虫が魔法詠唱を完了する前に終わらせるぞ!」


『マスター、毎分3900発の発射速度を誇るガトリング砲デス。トロイ詠唱ごときに遅れはトリマセン』


「―――よし、攻撃開始だ!」



『―――了解! 敵の息の根を止めるぞ!ラジャー エネミー エリミネート 射撃開始ぃ!!ファイアァアア









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