第3話 おっさん、ガチャ召喚士として覚醒?する

「ギャハハハ~~俺様はガルマ! 魔王軍の将軍さまだぁ!」


 マジかよ……いきなり将軍来ちゃった……。


 ガルマと名乗った魔族がギャハギャハ言いながら、付近の壁や床を殴りつけて破壊していく。


 人の3倍はあろうかという背丈に、頑丈そうな鱗に覆われた身体、そして黒い翼をゆらす魔族ガルマ。

 デカいな……さすが異世界。


 破壊衝動にでもかられているのか、はたまた己の力を誇示したいのか暴れまくっている。


「まあまあ、分かりやすく破壊しまくってますわ~~」


 そして、こちらにも変な人が。


「ンフフ~~ショウタさまにワンパンKOされるとも知らずに~~♪」


 そのワクワク顔やめて! もうちょい危機感もって! 


 予言書どおりですわ~とか言ってるけど。


 だとしたら修行パートはどこいった?


 さすがになんもなしに覚醒とか、都合よすぎるぞ。



「ここにいたぞ!」

「魔族め! 王城に侵入するとは、覚悟しろ!」


 騒ぎを聞きつけて兵士たちが集まって来た。

 そうだ、ここは王城。いってみりゃ兵士のたまり場だ。いやまあ表現が悪かったが、兵士はそこそこいるはず。


 いかに魔族と言えどもたった一体だ。

 数で押せばなんとかなる―――


 ヒュッという風切り音と共に、俺の眼前にガルマにぶん殴られた兵士が吹っ飛んできた。


 おいおい……


 ガルマの一振りで数人が吹っ飛ばされていくじゃないか。


 これはガチでヤバイ……



「―――光弾魔法ライトバレット!」


「ひ、回復魔法ヒール! だ、だ、大丈夫ですか」



 光の光弾がガルマに飛んでいく。ハヤトくんか。

 そして、おれの眼前に転がる兵士に回復魔法をかけるシオリちゃん。


 マジかよ……高校生だぞ。


 2人は恐怖に顔を歪めつつも必死に戦っている。

 戦闘訓練とかほぼ受けていないのに。


 クソ……おっさんなにやってんだよ。


 やってやる、俺の出来ること……



「―――【三流召喚魔法】!」



 周辺に光が輝き始める。


「ああ? なんだこの光ぃ?勇者の他にもなんか召喚しやがったのか?」


 魔族ガルマもみんなも突然の異変にこちらに視線が集中しているようだが、そんなことを気にしている場合じゃない。


 せめて前線で戦っているみんなの助けになるようななんか!



 ―――出てこい!



 魔族ガルマの前になにかがひらひらと落ちてくる。


 いや、これ―――



 パンツやないかい!!



「ギャハハハ~~おっさんなにクソみたいな能力披露してんだ!こいつは傑作だぜぇ!」


 魔族ガルマが、腹をかかえて爆笑している。


 グッ……ネタ見せみたいになってしまった……。


 だが、このぐらいではあきらめん!


「―――【三流召喚魔法】!」


 あ、なんか違うのきたぞ。


 って……


 たわしかよぉ……


「まあ、なんですのそれ! まあ!まあ!ついに覚醒ですの~~!」


 お姫様……少し黙っていてくれ。


「しょ、ショウタさん!スキルの声は聞こえてますか?」


「え? シオリちゃん、なにそれ?」

「えと、スキルの使い方とか頭に響いてくると思います……勝手に」


 マジかよ! そんな機能あったの!


 俺、響いてたかな?


「ギャハハ~~そんななまくらや魔法ごときでは、俺様の体に傷1つつかんわぁあ!!」


「「「「「うわぁ~~!」」」」」


 俺がもたついている間にも、王国兵士たちは果敢に攻撃を繰り返していた。

 だが、ダルマの身体は鉱石のような硬度を誇っているらしく、兵士の斬撃や弓矢をすべてはじき返している。


「は、ハヤト君っ!大丈夫!」

「シオリ……くっ硬くて攻撃が通らない……」


 シオリちゃんが、弾き飛ばされたハヤトくんに回復魔法をかける。

 光の勇者も現状の手札では、勝ち筋が見えないようだ。

 剣の勇者の子は鍛冶屋に外出中らしいし……



「ギャハハハ~勇者もたいしたことねぇなあ~~魔王様の言う通り、まだまだひよっこ状態ってのは本当のようだぜぇ」



 ―――ヤバイ、急がんと!


「おい、俺のスキル!応答しろ! なんかしゃべってくれ!」


『ハイ、マスターご用デスカ?』


「うお!ほんとにしゃべった!脳内っていうか普通にしゃべってない!? ていうかなんで今まで話さないんだよ!」

『特に指示がない場合は基本沈黙シテイマス。当り前デスヨネ。指示もないのにベラベラ話す方がお好みデシタカ?』


 クソ……なんか癖のあるスキルだな。


「なんでパンツとたわししか召喚できないんだ?」


『三流召喚士は召喚物を指定デキマセン』


「ええぇ……じゃイメージとか関係ないじゃん……てかランダムガチャ召喚ってどういうことだよ!」


『ハイ、だから三流デス。ちなみにたわしとパンツはハズレデス』



 なんだと! パンツはハズレじゃねぇよ!!



 じゃなかった……


「ハズレがあるってことはアタリもあるんだよな?」


『ハイ、もちろんデス。ただしアタリは1時間のみの召喚制限がつきます』


 なるほど、わかってきたぞ。

 三流召喚士はガチャ召喚しかできない。

 だけど、たまにはアタリ(1時間制限)が出るってことか。



 わかったよ……だったら徹底的にやってやる!



「―――【三流召喚魔法】!」

「―――【三流召喚魔法】!」

「―――【三流召喚魔法】!」



 パンツ、たわし、パンツ、たわし、パンツ、ティッシュ


 上空からパンツとたわしその他が舞い降りてくる。


 やめてくれ! いまネタはいらないんだ!

 あとハズレにちょっとした変化とかいらん!


「ギャハハハ~おっさんなにやってんだよ! おまえ笑いを取るために召喚されたのかよぉ~~使えないクズ野郎だぜぇ~~ギャハハハ」


 相変わらず俺の攻撃は、魔族ガルマに大うけしていた。


 クソ……違うだろ。


【三流召喚士】、本当に外れスキルなのか? 


 いや……ルーナに約束しただろ。出来ることは全てやるって。

 俺が信じなくてどうすんだ。



 俺にはこれしかない!



「―――【三流召喚魔法】!」



『あ……アタリデス!』


「え?マジか!よっしゃルーナ、ついにきたぞ! 見せてやる!」

「まあ! きましたのね~~ショウタさまの無双開始ですわ~~」


 ズズズと筒のようなものが、召喚の光の中からその姿を現す。


 おお~~パンツやたわしじゃないぞ!


「………」


 が俺の召喚はそこでピッタリと止まってしまった。


 なんこれ?


 ふっとい鉄の筒??


「はい! そこからの~~♪」


「ルーナ、少し黙ってくれ……」


「え? ぶっちゃけ、そこからどうなるんですの?」


 それは俺が聞きたい。これで魔族ガルマを殴れってか?

 いや……こんなもんクソ重くて持てない。


『召喚不十分デス、魔力不足のため音声案内一時テイシ……』



 マジかよ……ここにきて魔力不足だと。ていうかさっきから魔力切れでめまいするし。



「ショウタさま、そろそろ本気ださないと、勇者さまたちも危ないですわよ」


「わかってるけど、魔力が不足しているんだ。ルーナ、なんか魔力回復ポーションみたいなの持ってないのか?」



「ンフフ~~そう言うことでしたら~お任せくださいですわ~~~!!」



 ――――――ビシッツツツツ!!



 痛てぇええ!


 なにやってんの! この子!


 ルーナの手には鞭が握られている。これでビシやったんか。


「わたくしもスキル持ちですの~~」


 ―――ビシッ!

 ―――ビシッ!


「わたくしのスキルは【愛の鞭】、思い入れのある相手を鞭で愛することで―――」


 ―――ビシッ!

 ―――ビシッ!


「付与効果を発揮しますわ~~♪ ほら~~~魔力回復ですわ~~♡」



 なんじゃ!そのスキルは!


 だけど……たしかに倦怠感が消えていく……これまじで魔力回復してきてるぞ。


「ふぁっ!ちょっと王女様~~ショウタさんをビシビシしないでぇ~」

「いや……シオリちゃん。俺は大丈夫だ!」


 ―――ビシッ!

 ―――ビシッ!


「鞭で叩れてるのに、大丈夫なわけないですよ!?」

「違うんだシオリちゃん」


『変態マスター、魔力回復を確認。召喚を続行シマス』


 おお! 魔力が回復してスキルの声が再び聞こえ始めたぞ!

 この際、口が悪いのは不問にしてやる。


「る、ルーナ。すごいぞこれ!」

「ンフフ~~あたくしのショウタさまへの愛がなせる技ですわ~~♡」


 ―――ビシッ!

 ―――ビシッ!


「きたきたきた~~!!」

「ふぇ? ショウタさんなんかちょっと嬉しそうですぅう」


 うん、シオリちゃん。ちょっとなんか目覚めそう俺。


 俺は回復した魔力を召喚に回して……



『―――召喚完了シマシタ』



「完了……ってこれ」

「あら、なんですの? これ?」



『88ミリ高射砲(アハトアハト)デス。


 ―――――司令官!! 攻撃準備、完了!!コマンダント アングリフ ベライトゲシュテルト



 なにこれ、めっちゃ気分上がるじゃないか。


 さあ――――――外れスキルの底力を見せてやる。




―――――――――――――――――――


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