異世界召喚に巻き込まれたおっさん、みんな勇者なのに俺だけ【三流召喚士】で外れスキル認定→速攻追放かと思いきや、なぜか姫が「これ最強のパターンですわ!きた~!!」と救世主様扱いで付きまとってくるのだが

のすけ

第1話 外れスキルで追放……なんてこと~させませんわぁああ!

「うわぁああ~~ちょいまて、まて、まて~~~!」


 俺は佐藤 翔太さとう しょうた

 どこにでもいる陰キャサラリーマン32歳、普通のおっさんだ。


 そしてなぜこんな情けない声を出しているのかというと。


「さあ~~ショウタさまぁああ! そんなモブムーブしてもわたくしの目は騙されませんわよ~~!」


 俺は意味不明な事を叫ぶお姫様に、首根っこを掴まれて引きずられているからだ。

 王城内の大理石ぽい硬めの床をズルズルと。


 なぜこんな事態になったのか。

 それは、少し時間をさかのぼる。




 ◇◇◇




「おお~~!ようやく成功したぞ!」

「勇者だ!勇者さまだ!!」


 ―――んん?



 俺はたしか、取引先へ訪問する最中に……


 ―――思い出した。


 たしか俺の前を歩く3人組の高校生が急に光り出したんだ。

 びっくりした女の子の1人がパニックになって車道に出てしまったので、俺はとっさにその子を引き戻そうと飛び出したんだったけか。


 歩道まで引き戻したのはいいけど、激しい光に俺も巻き込まれて。


 その後の記憶はあいまいで、気づいたらここにいる。


 周りを見ると、例の高校生3人組もポカンとした顔であたりを見回していた。

 男子生徒1人に女子生徒2人の3人組。あの車道に出てしまった女の子も無事だったようだ、良かった。



 ……ていうかここどこだ?



 アニメにありがちな中世風の建物。


「勇者だ! 勇者様が4人も!」

「まて、まだ勇者と決まったわけではない。それに3人の反応ではなかったか?」


 そして「勇者」というワードを連呼して騒ぐ貴族っぽい服装の人たち。

 俺の周りに広がる魔法陣的な模様。



 これは―――異世界転移というやつではなかろうか。



 しかも俺は巻き込まれっぽい。


 本当にあるんだな……夢じゃないよな。


 などと頬をつねっていると、王冠被った人が俺たちの前に出てきた。


 髭をたくわえた口をゆっくりと開き―――


「よくぞ来てくれた、勇者たちよ。わしはデミスト・ロイ・ヒルステアである。ここ、ヒルステア王国の国王だ」


 聞いたこともない国名。やはり異世界にきたようだ。


 それから王様の一方的な会話が続いた。


 王様が言うには、魔王がこの世界に復活して2年が経った。

 各国が抗戦しているが、状況は芳しくなく徐々に魔王領が拡大しつつある。


 とくにこの王国は、魔王領と隣接しているため被害が大きいらしい。


 そして、救世主として勇者召喚を試みたと。


「あ、あの。言ってる意味が良く分からないです」

「勇者ってなんなのよ?」


 高校生組の2人から声があがる。

 まあ、そりゃそうだよな。頼んでもいないのに勝手に召喚されたあげく、勇者とか言われてんだから。


 高校生に魔王を討伐できるのか?

 そもそも、元の世界に帰れるのか?


 など、ありがちな質問が飛びだす。

 いや、当事者の俺たちにとっては死活問題だから、聞くのは当然だろう。


 そして、予想通りの答えが返って来た。


 元の世界に帰る方法は分からない。

 そして、かつて魔王が復活した際に活躍した勇者は異世界から召喚されたもの。


「ゆえに、そなたたちも勇者の力を授かっているはずじゃ」


 てことは俺たちは、なにかしらのチート能力などを持っているということか。


 それからも問答は続いたが、さして進展はしない。


 結論、俺たちは王国に協力することにした。出来る限りの範囲で。

 というか状況的にはそうするのが一番いいというか、そうするしかないだろう。

 王国の援助も無く、まったく知らない世界でいきなり自立するのは難しいだろうし、そもそも彼らがそれを許さない可能性が高い。



 そして、あれよあれよと言う間に各人の能力を測定することになる。


 さて……ここからが俺自身の問題だな。


 召喚の光は、あきらかに高校生3人組を転移させるべく光っていた。

「3人の反応だったはず」とか言ってたしな。


 つまり俺の転移は想定外ってことになる。

 いわゆる巻き込まれ召喚だ。


 まあ能力測定するから、そこで分かるんだろうけど……俺はおそらく……。



「では1人目の方からこちらへ」


 男子高校生が用意された水晶に手をのせる。

 神官ぽい人が、水晶に浮かび上がった文字を読み上げた。


三条 隼人さんじょう はやと様。16歳!

 スキル――――――【光の勇者】!!」


「おお~~やはり勇者のスキル持ちだ!」

「しかも光の勇者! かつて魔王を打倒した勇者と同じだ!」


 スキルとはこの世界の固有能力のことらしい。誰でも授かるものでは無く、一握りの者しか持っていないとのことだ。

 まわりの反応からも、勇者系スキルは超有能だということがわかる。


 そして、長身、美形の美男子。いかにも勇者って感じだ。

 高校でもさぞモテているんだろうなぁ。


 陰キャおっさんが勝手な妄想を膨らませていると、次の子の結果が発表される。



春風 凜花はるかぜ りんか様。16歳!

 スキル――――――【剣の勇者】!!」


 長い黒髪をキュッとうしろでまとめたポニーテール女子高生。

 端正に整った顔立ちと、クールで綺麗な瞳から発せられる眼力がすごい。この子、どこぞの武家子孫の娘なの? みたない感じだ。


 まあ、スキルは予想通り勇者系か。


 まわりは再び「おお~!」「すごい!」「救世主様!」の連呼がはじまる。


 2人とも照れつつも、まんざらでもない顔だ。

 まあ、こんだけ持ち上げられればね。気分はいいだろう。


 そして、次に水晶の元に歩いていくのは―――


 あの子か。


 転移の光に驚いて、車道に出てしまった女の子だ。


 小さく整った顔に琥珀色の瞳が輝いており、サラサラの黒いロングヘアが清楚な女子って感じだ。

 そして小柄だがキュッと締まったウエストにもかかわらず……デカすぎる膨らみ。

 ぶっちゃけ、彼女を助けた時も多少なりと密着したので、その凄さは体感済である。


 すでに鑑定済の2人は高校生にしては堂々とした感じだが、この子はかなりガチガチな感じで緊張している。


 手を置いた水晶が光ると「ふぇ!?」っと抜けた声を出したのが可愛かったが、鑑定結果は―――



朝比奈 詩織あさひな しおり様。16歳!

 スキル――――――【癒しの勇者】!!」


 うむ、みごとに勇者系のスキルか。

 3人とも凄いな。


 さてと……


 いよいよ俺の番だな。


 俺は水晶に手をあてる。


佐藤 翔太さとう しょうた様。32歳!」


 これ年齢を読み上げる必要あるのかな?

 高校生組の倍の年齢を知らしめた俺に、スキル鑑定の結果が告げられる。


「す、スキル―――? えっと……」


 んん? どうした?

 もしかして、ワンチャン勇者系とかあるのか!



「ええぇと……スキル【三流召喚士】さんりゅうしょうかんし……です」



 ないか……



 う~む……勇者系でないにしろ、召喚士ってのは良いひびきだ。


 ドラゴンとか大精霊とかを召喚できるすごいスキルかもしれない。


 しかし……


 三流ってなんだ!?


 スキル名に三流とかつけるなよな……


 とたんにダメダメ感満載のスキルになるじゃないか。



 ということで、鑑定の結果は出た。


 今は、高校生勇者たちに人が群がっている。


 大人気だ。


 そりゃ期待大の勇者たちだからな。

 おっさんは?


 そりゃあ、当然のごとくポツンとしておりますよ。誰も寄ってこない。


 巻き込まれおっさんの三流召喚士には、興味がないのだろう。


 そこへ1人の美少女が俺の方に向かってくる。


 癒しの勇者こと、朝比奈 詩織あさひな しおりだ。


 小柄ながらもご立派なものを揺らしながらトテトテと近づいていくる彼女が、「ひゃっ!」というかわいらしい声と共に俺の視界から急に消えた。


 思いっきり転んでた……


 俺は慌てて彼女の元に行く。


「だ、大丈夫か……?」

「ふぇえ……ご、ごめんなさい。私おっちょこちょいで……」


 床にぺたんと座りながら半泣きで謝る彼女。


 躓くものは特にないが、頭から床にダイブするという荒業をやってのけたのだ。本当におっちょこちょいなのかもしれん。

 そしてスカートがえらいことになっている。


「あ、あの……車にひかれそうなった時、助けてくれてありがとうございました。ちょっと色々ありすぎて。ずっとお礼を言えてなくて」

「ああ、気にしないでくれ」


 よし、とりあえずスカートをなおそうな。

 もう見えているから。純白のやつが。


 俺がそれとなく促すと、ふたたび「ふぇっ!?」と可愛い声をあげて、顔面真っ赤で衣服をただす女子高生。


「でも、私のせいでショウタさんを巻き込んでしまって……」

「いや、あの時は俺も無我夢中だったし」


 そうなんだよな。気づいた時には動いていた。


「でも……」

「いいんだ。俺がやりたくてやったことだし。シオリちゃんは気にすることはない」


 ちなみにいきなりの名前呼びで、陰キャおっさんに春が来たのかと勘違いしてしまいそうだが、それは違う。

 この世界に苗字を持つ人は一部の王族・貴族のみで、この世界の標準に合わせて名前で呼ぶという事になったのだ。


 だから俺もこの子の事をシオリと呼ぶし、俺の事をショウタと呼ぶ。


「はい……ありがとうございます。ショウタさん」


 いや、このルール最高やないか。


 陰キャおっさんが、超絶美少女女子高生に名前呼びされるとは……


「あの、血が……」


 シオリが俺の手を指さしてきた。

 車道にから彼女を助けた際にできたものか。俺も気づかなかったな。


「ああ、擦り傷だよ。たいしたことないから」

「でもばい菌入ったらいけないから」


 そういうとシオリはハンカチで俺の手を抑えた。クマさんのワンポイントが入ったかわいいやつ。

 するとなんだろうか、ハンカチがめっちゃ光ってるんですけど。


 え? ウソでしょ? また転移か!?


 ちがった、この子の手が緑色に光ってんだ。


 そしてハンカチを取ると、綺麗に傷が無くなっていた。


 すげぇ……これが癒しの勇者……


「おお、詠唱もなしに治癒の光を!?」

「さすが癒しの勇者さまだ!」


 やっぱすげぇんだ。


「おお! 光の勇者さまはすでに強力な光属性をお持ちだぞ!」

「剣の勇者さまも、とんでもない剣気だ!」


 みればハヤトは両手から光の玉を出していた。そしてリンカは渡された剣を振るうと、ちょっとした振動が走る。

 みんな凄い力を備えているらしい。


 そして全員の目が俺に集中した。


 ですよね……


 おっさんは何ができるのかと?


 はいはい。

 やりゃいんでしょ。なんかテンプレ展開にしか思えないが。



「ショウタさま。召喚魔法はイメージがポイントですわ。召喚するものを出来る限り鮮明に思い描くのですわ」



 王様の横にいたお姫様が、俺にアドバイスをくれた。

 桃色のドレスをゆらして、ニッコリ微笑むお姫様。


 なるほど、イメージね。


 よっしゃ、やりますか。


 俺は心のなかでイメージを膨らます。


 なにがいいか?


 やっぱドラゴンか。

 まてよ、万一ドラゴンなんか召喚できてしまったら、ここがパニックになるのではないか。


 としたら……


 精霊とかそっち系か?


 しかし精霊なんてあんまイメージがつかんぞ。


 などとモタついていると、周りの視線がどんどん厳しくなっていく。


 いかん。とにかくなんか召喚しないと。


 俺の正面にいるシオリちゃんもなんだか不安げな表情をみせている。



「とにかくなんかでろ!

 ―――――――――【三流召喚魔法】!!」



 俺の前に魔法陣が現れ、なんか光を放つ。

 そして俺の体は一気に何かを持ってかれたかのように、崩れて片膝をついた。


「ぜぇーはぁ~、ぜぇーはぁ~~」


 なんだこれ!?


 すっごいなんか持ってかれた。


 魔力を消費したからか?


 倦怠感がはんぱないぞ。


「―――あれ? ところで俺は何か召喚できたのか?」


 上空からピラピラと落ちてくる白い布。

 なんだあれ?


 その布はちょうど正面にいるシオリちゃんの手に落ちる。


 静まり返った現場から、シオリちゃんがボソッと呟いた。


「ふぇ……これ、私の……」



 パンツでした……



 なに召喚してんだよ……俺。


 たしかにちょっと前に見ちゃったけど! だからと言ってイメージが頭から離れませんでした。とか死んでも言えないぞ。


 いずれにせよマズイぞ!これは外れスキル認定されてしまう。


 全身全霊で召喚できたものがパンツは流石にヤバイ。

 そもそも俺の人格自体が地に落ちた。周りからの刺さるような視線がそれを暗にわからせてくれる。


 しばしの静寂から、ザワツキ始める現場。


 王様は神官となんか話している。


「これは使えませんな……」

「いくばくかの路銀を渡して……ゴニョゴニョ」

「手切れ金ですな……ゴニョゴニョ」


 いや、そこそこ聞こえてますけどね。


 俺にそんな配慮をするまでもない。ということだろうか。

 さきほど声を掛けてくれたお姫様なんか、ずっと凄い顔で俺をガン見しているし。


 これは完全に巻き込まれ召喚からの追放されるパターンじゃないか。



 俺……やっていけるのだろうか。



 前に読んだラノベなら、追放後に能力が覚醒していき、自由気ままなハーレムスローライフを送るというストーリーだったけど。

 これは現実に起こっている世界だ。


 本当にそんな都合よくことが運ぶとは思えない。


 そもそも覚醒の余地はあるのか? 俺の【三流召喚士】に。



 カツカツカツ



 そこへヒールの音を力強く床に響かせて、例のお姫様が俺に近づいてきた。

 顔がヤバい事になってる。鬼気迫るぐらい俺を直視している。


 これはヤバいな。俺の耳傍でボソッと「使えないクズね」とかどぎつい事いうんだ。


 そのお姫様の口角が、これでかっていうぐらい上がった。



「やりましわ! 大当たりですわ~~~~!!!」



 え!? なに? なに!



「ひ、姫様……その者は勇者ではありませんぞ」

「そうそう、たんに勇者様たちにひっついてきただけの無能ですぞ」

「というか、おっさんですぞ」


 もう堂々と無能って言われちゃってる。

 あと、おっさん差別はやめて。全国の頑張っているおっさんたちに謝って欲しい。


「なにを言ってますの! ショウタさまが一番すごいに決まってますわ!」


 ええぇ! 


「これ、追放したあと王国が後悔するやつですわ! わたくし、以前召喚された予言書で勉強しましたの!」


 この人さっきから何言ってんの?

 なんか1人だけまわりと反応が違うんですけど。



「てことで……お父様たちがいらないというなら―――わたくしがもらいますわ~~~!!」



「ふがっ!」


 お姫さまに首根っこを掴まれる俺。


「これ最強のパターンですわ!! きましたわ~~オホホホホ~~」



 こうして俺は、この良く分からんハイテンション姫にズルズルと連れていかれるのであった。




―――――――――――――――――――

【読者のみなさまへ】


いつも読んで頂きありがとうございます。

本日より新作の投稿を開始致しました。


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