第48話 「お題で執筆!!」短編ができるまで

 ありがたいことにこのエッセイもさまざまなお立場の方にお読みいただけるようになった。そんなときに恐縮だが、そろそろ私も「地」を出していこうと思う。「地」つまり素の自分を出さないと私自身が辛いし、読者にも、亜咲加奈とはいかなる人間かが伝わらないと思うからである。


 このエッセイの目的の一つは「カク側に役立つ内容」を提供することだ。だから今回は、現在開催中の「お題で執筆!! 短編創作フェス」応募作品の内容を私がいかにして思いついたかについて書く。なお、書き方については、私が脳内で自問自答したままを可能な限り忠実に再現することを心がけた。では、どうぞ。


(1)第1回「試験」

 「試験」かあ。どうすっかなあ……。

 そうだ、沢渡くんと織絵ちゃんがおつきあいを始めたんだっけ。そしたら織絵ちゃんのおじいちゃんに登場してもらおう。

 なになに、ベトナム戦争に反対したアメリカ兵がいた? おお、おじいちゃんはこれにしよう。織絵ちゃんのお母さんは沖縄県出身だから、おじいちゃんは海兵隊員なんてどうだろう。(スマホで検索を始める)

 海兵隊のホームページがあるじゃないか。基地はこことここで……。

 おっと話がそれた。おじいちゃんは野球をやっていた設定にしよう。「試験」だから、「沢渡くんが最愛の孫娘の恋人としてふさわしいかキャッチボールで確かめよう」という筋立てにすればいけるんじゃね?

 そうだ、織絵ちゃんと、織絵ちゃんのお兄ちゃんも野球をやっていたんだっけ。沢渡くんも、もと高校球児だし。よしよし、これで書けそうだ。

 ……うーん、野球の試合を書くのって、難しいなあ。野球観戦したときのことを思い出せ、思い出せ……。あれ、サヨナラ勝ちって、アウトの数関係あったっけ? 詳しい人に聞いてみるか。どんな勝ち方が盛り上がるかなあ。点差はどうしよう。激アツな展開にしたいよなあ。


(2)第2回「雪」

 「雪」ねえ……。あたしが生まれ育ったところは雪が降るんが当たり前だったからなあ。普通にひざ下までズボって埋まったし。

 「雪」って、普通に降る地域では、そんなにうろたえないんだよなあ。

 でも「雪」って怖いんだぞ? あたしの車、アパートの屋根から落ちた雪で天井へこんだし。まあ買い替えたけど。

 余田さんと日野さんで書くか。主人公は余田さんでいくか。余田さんの一人語りにしよう。

 ボーイズラブがどうしても苦手って読み手さんもいるけど、余田さんの苦しい胸の内を書きたい。だからボーイズラブ。「ラブ」だけど、お互い好き好きハッピーな展開じゃないから、「現代ドラマ」でいこう。

 ……おおっ、日野さんが余田さんに一歩近づいている! いいぞいいぞ! 


(3)第3回「つま先」

 「つま先」! 

 こんなの、「背伸びする」とかしかないじゃん。あとはバレエとか。うーん困ったぞ。どうするどうする。

 あ、「つま先」といえば、ネイルあるじゃん。あたしも昔、塗ってたなあ。

 ネイルって、特に「つま先」に塗ると、セクシーな気分になるんだよなあ。手の指に塗るのはただ単に「あたし、おしゃれ!」って思うだけなんだけど。でも、除光液じゃないと落とせないっていうのが不便なんだよなあ。除光液のにおいってすごくきついから苦手。

 そういえば昔ピラティス習ってたとき、先生から、消毒液で落とせるネイルがあるって聞いたっけ。それで買ってみたけど、ネイルってなかなか減らないんだよなあ。だからあたし、塗るの、やめたんだよな。落とすのも、めんどくさいし。でも、消毒液で落とせるネイルは、また買ってもいいかもしれないな。色、きれいだったし。お風呂に入ると、はがせるし。専用の除光液の香りも自然でよかった。

 おっと脱線しちまった。「つま先」にネイルを塗る話にするか。よし決定。誰が塗るか……織絵ちゃん! 織絵ちゃんと沢渡くんの話にしよう。

 沢渡くん視点で書こう。彼の大学時代の経験も入れよう。

 あ、思い出した。一緒に空手習ってた若い男の子から聞いた話。つきあってる女性と一緒に部屋にいたら、彼女の元カレかなんかが突然やってきたとか言ってたっけ。

「俺、しょうがないから、玄関先でそいつの相手しましたよ」

「相手が玄関まで入り込んだってこと?」

「そうなんです」

 彼、けっこうプレイボーイみたいだったからなあ。今、どうしてるだろう。

 そうだ、日本酒の小説を書くって、カクヨムで交流してる書き手さんたちに約束したんだ。じゃあ日本酒も入れよう。あたしの好きなお酒。母方のおじいちゃんが好きでよく飲んでた地元のお酒。あれをモデルにしよう。辛口で、おいしいんだよなあ。そこの酒造にも見学に行って、すごく楽しかったなあ。限定のトートバッグも買ったなあ。

 そういえばあたしは「エロ小説書いてます」が売りだったなあ。この小説をエロ小説にするにはどうしよう。しかしエロの描写には気をつけないとアカウント削除とかになっちゃうし……。どこをどうしてどうなったなんて詳しく書けないしなあ。

 あわわ、沢渡くんが「あの言葉」を言ってない! ひゃあ、どうしよう? ショートショートを書いてみるか。

 ……うーん、何か足りないぞ。また書き直しだなあ。沢渡くんの人物像をもっと掘り下げよう。


(4)第4回「帰る」

 第4回のお題が発表されてないけど、余田さんが不良だったときの話を書きたい。不良同士で殴り合う話を書きたい。とりあえず書き始めよう。それでお題が発表されたら、そのお題に合わせて足したり引いたりすればいいや。

 おっ、お題が発表されたぞ。「帰る」? うん、大丈夫。なんとか内容をあてはめよう。

 ケンカの場面。まずは頭の中で動きを思い浮かべる。あたしフルコンタクトつまり「当てる」空手やってるし。でも、お互いの動きを書くのは難しいな。これがマンガなら、全員の動きを描けるのにな。文章だけだと戦ってる二人しか描写できないしな。単にあたしの技術が足りないだけかもしれないけど。

 しかしあとが続かない。思いつかない。

 マンガ読んでこよ。不良が出てくるマンガ。

 ……なるほど。そうか。そうなのか。

 不良ってのは、そうなのか。

 よし! 書けるぞ!

 最後はこのセリフで決まりでしょ。アルファベットだと正確に書き表せないからカタカナで書こう。

 

 以上、参考になれば幸いです。


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