第29話 これもう配信するしかねえよな


「大丈夫か?」


 SNSでトーヤに交渉に行くという連絡があり、嫌な予感がして現場に向かったらとんでもない事態に遭遇した。

 まさか権力者の娘を殺そうとするとは。

 何か後ろ盾があるのかもしれないと警戒して、襲撃直後からミカに爆弾を仕掛けようとするところまでスマホに映像で収めたが、もっと何かミカの身の安全を確保できる手段を知っていればよかったのだが。

 これで万が一ミカの状態が悪化して死ねば約束が果たされる可能性がある。

 それだけはあってはならない。


「……ああ。なんかやばい目に遭いそうになったんだけど。その様子だと助けてくれたんだね」


「救助はしたがまだ安全じゃない。ホストたちはモンスターを流出祭りの決行日て言ってたから、入念に準備してたはずだ。一つの爆弾だけで終わらない可能性が高い」


「確実に流出させるために複数個あるってこと。じゃあ……」


「とてもじゃないがここからいくつも爆弾を見つけ出して解除するのは無理だ。あのホストたちが爆発させようとしたのをさっきだってことを考えると他も同じようなタイミングだから今爆発してもおかしくない」


「逃げる?」


「逃げるのはリスクが大きすぎる。誰かに見られてたら、ダンジョンの壁を破壊できる俺がダンジョン破壊して逃げたようにしか見えないからな。それだったら爆発と同タイミングに外に居て犯行不可能だと証明するためにここに俺がいることを配信してくれた方がいい」


 この状態でダンジョンを破壊できる俺がモンスター流出の嫌疑から逃れるためにはこれくらいしかない。


「わかった。助けられたし、モンスター流出なんてめちゃくちゃ盛り上がるだろうから配信するよ」


「できるだけ俺が殴って壊したと思われないように爆発したらすぐに配信してくれ」


「了解」


 そう頼むと懐から携帯用なのか、小さなドローンを取り出して宙に浮かべ始めた。

 いつくるかと思うと爆発音が響いた。


「配信スタート!」


    ───


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