第3話 頂きの新時代
ホストクラブ『ITADAKI』。
快晴の妹──紗季の彼氏こと底辺ダンジョン配信者を騙るホストの健太はほくそ笑んでいた。
「やっぱり今の狩場はダンジョンだな」
「ダンジョン? 頂き女子のマニュアルで頂きすんのが最近のトレンドじゃないんスカ?」
健太の弟分である甘太が怪訝そうに尋ねると健太はさらに頬を釣り上げる。
「バカがよ。もう古いよそれは。頂き女子なんぞもう生き遅れのババアにすぎねえ。今のトレンドは『クソ強底辺ダンジョン配信者のフリして、助けた超人気ダンジョン配信者に貢がせまくる』ことだ」
「『クソ強底辺ダンジョン配信者のフリして、助けた超人気ダンジョン配信者に貢がせまくる』?」
「ピンと来てねえみてえだな。しゃあねえ教えてやるよ。まずよお、超人気ダンジョン配信者──カモに気取られねえ場所までダンジョンボスごとモンスタートレインさせて引き連れて、カモがやべえ時になったら颯爽と助ける。そこから俺たちの顔面と接客テクで即落ちって寸法よ」
「パ、パネエ! で、でも兄貴。どうやってホストの俺たちがダンジョンのモンスター倒すんすか? そ、それに底辺ダンジョン配信者のフリする意味ってあるんすか?」
「フン、鋭い質問じゃねえか。てめえもろくに頂きやってなかったってことか。モンスターを倒すのはダンジョン発掘物でドーピングすりゃOK。底辺ダンジョン配信者のフリするのはこっちにギブし続ける心優しいカモを選別するためだ。底辺って言って距離置こうとする奴は貢いでる途中で見返りを求めてくるようになる地雷だから営業すんのはやめとけ」
「流石兄貴! 隙がねえ完璧だ! 兄貴、俺もダンジョンで一狩り行きたいす! ダンジョン発掘物の入手ルート教えて下さい!」
「入手ルートも何もブツは店長が持ってる。ダンジョン配信で一発やりてえって自分から言った奴には配ってる。ささっと言ってこいよ」
「あ、ありあやとす! 兄貴! 言ってきます!」
「おう!」
健太は弟分の甘太の背中を見送ると懐から薬瓶──ダンジョン発掘物『イタダキDX』を取り出すと飲み干す。
「お……」
空の薬瓶──を机に置く拍子に小指が触れると、机が木っ端微塵になった。
「やっちまったな。これから新しいカモ取ってこようって言うのによお。……スタッフゥー!」
黒服のサングラスの男たちがゾロゾロと机の周りに集まると机の残骸を拾い始めた。
健太は懐から分厚い札束を取り出すと黒服の一人に押し付ける。
「俺は営業行ってくるからそいつで適当な机買ってこいよ」
それだけ言うと健太は『ITADAKI』から出て、カモたちからの入金の報告を見る。
「紗季のヤツ稼ぎ頭の兄貴が帰ってくるって言ってたのに、全然貢いでくる金額が上がってねえじゃねえか。お前の家の金は俺の金だってわかってんのか? いや兄貴からしたら帰ってきたら全財産損失だから参ってんのか。いやあ、悪いことしたなあおい。紗季に兄貴から金引き出すように催促するか。兄貴の分もきたらどんなもんになるのかねえ。億稼ぐ言うし楽しみだなあこりゃあ。ガハハハハハハ!」
自分の天下を信じて疑わない健太は次に振り込まれる額を想像して高笑いする。
その紗季の兄──快晴によって破滅がもたらされることも知らずに。
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