仮婚!

岩名理子@マイペース閲覧、更新

第1話(序章) 転校生

 私、こと佐々木愛理は、一人で慌てて教室に向かっていた。

 

 朝礼開始の時刻が迫っている。鐘が鳴るのは時間の問題だ。

ただでさえ教室は下駄箱から遠い。


 しかも、出かけ間際にお父さんに、少し話があると呼び止められたのだ。

わかった、でも時間がないから帰ったらね――、と無理やり切り上げるように返事をして家を飛び出したことを思い出す。

 とても思いつめたような表情だったのが気がかりだけれども。


 学校の渡り廊下に出て、ようやく息を整えた。


 すると、私の視界に入ったのは校長室の前にいた三人の男の子だった。

 なんだか見慣れない顔の子たちが三人も。


――というのも、一目みたら全員忘れられないと思う。

 

 1番背が高い男の子はやや色素の薄い髪で、そこはかとなく色気らしきものが遠目からでもよくわかる。

2番目の背が高い男の子は、目鼻立ちが一段と整った、物静かな佇まいだった。

そして一番背が低い、――といっても私よりも高いのだが――くせっけの大きな瞳で、とても可愛らしい顔立ちをしていた。


 目を凝らしてみていると、ふいに2番目に背の高い男の子がこちらを見てきて――目が、合ってしまった。次の瞬間には私に興味を失ったのか、目をそらされてしまったけれども。


――誰だろう?


 転校生とか、そういった話だったら春香ちゃんが好きそうだな、と考え私は教室へと入っていった。


 

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