昔と今
入江 涼子
第1話
昔の私って、何とも我の強い子供だったなあ。
現在は何にも言われないが。子供ながらに、妙に達観していたように思う。諦観とも。
まあ、なかなかにバカ正直で頑固だとは父から言われた。マイペースでのんびり屋とも。
ある時、こうも父が嘆いていたのを覚えている。
「……お前、俺に似んでもええとこばっかり似とるな!」
それを言われても、変えようがない。何にも言い返さなかったが。ちょっと、複雑になったのはここだけの話だ。
私の父は見かけは穏やかそうに見えるが、なかなかにマイペースで辛口な人といえる。ドライブが好きで、旅好きで。若い頃はバイクに乗ってツーリングによく出掛けていたらしい。
現在は乗っていないが、代わりに自動車に乗り、遠出したりするのが好きだ。幼い頃はよく四国や中国地方、関西圏の奈良などいろんな所に連れて行ってもらっていた。
中でも、瀬戸大橋や明石海峡大橋を自動車で通った際の事はよく覚えている。
九州のハウステンボスやスペースワールドなどにも連れて行ってもらった。確か、まだ小学校の低学年の頃だったか。夏休みに行ったのは覚えている。
けど、私はまだ背丈も小さかったから、あまりジェットコースターには乗らなかったように思う。代わりに、観覧車やメリーゴーランドなどには乗った。暑くて、ジリジリと日差しがキツい八月だ。私はいいが、父はかなり暑そうにしていた。
小学校の修学旅行は奈良県、京都府に行った。まず、東大寺、若草山だったか。午前中はそれらに行き、若草山にて鹿に煎餅をあげたのはちょっと、ほろ苦い思い出だ。いや、煎餅をあげていたら、引率の先生が集合の合図を出して。私は慌ててそちらへ走った。煎餅を持ったままでだ。気がついたら、三十頭近くの鹿を引き連れて来てしまっていた。
鹿は「もう、くれないの?」と言いたげな表情だった。私は怖いやら、恥ずかしいやらで涙目になっていたが。先生は「何してるの?」と訝しげな表情だった。今でも、時折思い出す事柄だ。
それでは、失礼する。
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