式神使いの美琴さん、お仕事です。

赤目夢人

プロローグ


 平安京で、不気味な人がいた。貴婦人であろうが、蹴鞠をしていた。

 一人で血が出るまで蹴鞠をしていた。朝から夜まで、芦屋道真はたまたま彼女を見かけ、拍手をした。

 彼女の髪は足先以上あった。最近噂話があったことを思い出していた。

「ずっと蹴鞠をしている女がいるというのは、貴殿のことですか?」

「千……、これで勝ちましたわ」

 彼女は、芦屋道真の言葉を聞かずに、そういった。その時ぞっとする気配が一瞬したが、周りを見渡し、すぐさま式神を出せるようにしたが、どこにも見当たらない。風が止まり、嫌な汗が垂れる。

 パタン、と倒れる音が聞こえてきて、はっと我に返った芦屋道真は振り返って、彼女のもとへやってきた。

「大丈夫ですか?」

 すぐ、安倍晴明の親戚の子だとわかっていた。だが、この子がいるということを聞いたことがなかった。抱きかかえたときはとても軽かった。

 すぐさま、まともな食事がとれてないということが分かった。

 黒い影がよぎって、彼女がいなくなってしまった。周りを見渡していると、烏天狗らしき人物が、井戸の下に入っていった。

「な、なにがあったんだ?」

 芦屋道真は、式神についていくように、ヒトガタの紙のものに息を吹き込んで、追いかけさせた。


  ****


 次に目が覚めた美琴は、広い場所にいた。

 銃を向ける自衛隊に対して、手を挙げる美琴、美琴は状況がよく分かっておらず、周りの数千人という人間達をよく見ている。

「すいません、今は西暦何年でございましょう」

 ヘルメットをかぶった、偉い長官らしき人物が、大声を出した。

「嘘をつくな! 宇宙人め!」

 宇宙人と言われ、美琴は困った顔をして、思い出したように手を合わせ、地面に座った。

「わたくしの名は美琴、式神使いを仕事としている人間です。どうか、敵対心向けないでほしいです」

 土下座をしていう美琴に対して、銃を下した。

「待て皆! 俺がいいというまで、動くな」

「おーおー、ルトが偉そうに言いだしたぞー」

「銀次郎兄さんは黙ってくれ!」

 鹿島ルトという男性は、黒い髪をオールバックにし、自衛隊の格好をしていた。美琴は頭を下げたまま動かなかった。まるで、死ぬのを待っているようだった。

 ルトは、銃をいつでも引けるようにして、布の状態や、武器を持ってないか確認した。

 だが、出てくるのは紙切ればかりだった。

「お前は」

「式神使いの美琴です」

「なるほどな兄貴、うちで預かるぞ」

「いや、どうしてそう言えるんだよ、本当に宇宙人で、殺人鬼だったら」

「その可能性はない、ぞっとするくらいの、貴重な服だ。帰ったら嫁を紹介する」

「は、はい」

「あと、頭を上げていい」

 そう言って、ルトは手を前に出して、全員に言った。

「皆は、いつもの訓練を続けてくれ、俺と銀次郎兄さんは、緊急事態じゃなきゃ戻ってこん」

「そんなじゃなー!」

 鹿島銀次郎という人物は陽気な性格で、銀色の髪を後ろに纏めていた。軍人的には偉い人物だろう。

 美琴を抱き上げて、驚いた表情をしていた。

「お前、やつれてんな」

 美琴の頬はやつれ、肉はついておらず、骨だらけの体。足はずたずただった。

「ルト、文月に連絡してきてくれ。確か病院にいるはずだ」

「ああ、わかった」

 美琴は、目を閉じて眠りについた。

 

 ****


 車に乗せて、二人はシートベルトをつけた。結構高価な車で、銀次郎は金持ちなのは確実だった。

「ルト、お前どういうつもりだ?」

「兄さんもわかっただろう、触ってみた質の服」

「ああ、あれは、完璧に平安京の人物が着ているものだった」

 車のカギを取り出し、車の鍵穴に入れて、エンジンをかける。そして自動車を発進させた。

「正直、これから関わっていくなら覚悟が必要なんじゃねぇかなと思う」

 銀次郎は運転しながらそういった。ルトはパソコンを取り出して、文月に連絡を取っていた。文月は受け入れる準備をするとすぐさま返事が返ってきた。

「俺が捨てられてた時、兄さんは助けてくれた。だから、今回も助けるんだろ」

「はは! バレバレかぁ」

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