第36話 後日
あの日からもう三ヶ月か。聖一と二葉はまだ意識は戻っていないけど、生きている。らしい。
そういや管理人さんがハイエルフだとはまったく気づかなかったな……。
管理人さんが、スタンピードの制圧に、研究所の職員や、なぜか顎で使う高橋さんを連れて来てくれた。
そこでわかったんだけど――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あなたたち! 無事だったのね! それでゴブリンキ……ングは、達磨になってるそれで、クイーンがあのミノムシね」
「エルフィさん。あっちにジェネラルが四体転がっていますよ」
「その名で呼ぶな高橋! 今はしがないのアパート管理人やってんだから!」
「なんじゃ。エルフィにたかぴーではないか。しぶとく生きておったか」
「タマさん! たかぴーは辞めて! これでもいい大人になったんだから!」
「くっくっく。善き哉。ならばエルフィよ、こ奴らを人間に戻せるかの?」
「タマ様まで……。まあ、できないことはないですけど」
「え? 管理人さんが治せるの? え? だって治せるのはハイエルフだけだってタマちゃんが……」
「ぬ? レイ、お主の住むアパートの管理人であったか。わらわが言っておったハイエルフとはこやつじゃ」
衝撃のあまり開いた口が……だ。
「ハイエルフさんなのです? 普通のおばあちゃんなのに?」
「こらシオン。住まわせてもらうアパートの管理人さんなのですよ。おばあちゃんは駄目ですわ」
「はぁ、しかたないわね。この姿は幻影なの。ここにはまだ探索者ギルドの連中も来てないし、あなたたちだけならいっか。どうせ
「くっくっく。レイ、惚れるなよ。エルフィは絶世の美女と言うヤツじゃからな。中身はわらわと変わらんほど生きたババアじゃ」
「タマ様! ハイエルフではまだまだ子供なんですからね! まったく!」
そうか、ジェネラルになった四人も、聖一に二葉も人間に戻せるんだ。
管理人さんが高橋さんを顎で使いながら、次々と気絶しているジェネラルたちを人間に戻すのを、なにもできず眺めている。
次にまだバタンバタンと暴れる二葉だ。
無防備に高橋さんが近づき、顎に見えない速さの一撃。
バコンと、高橋さに噛みつこうとしていた顔が斜め上に跳ね上がり、気絶させてしまう。強い。
やっぱり高橋さんはレベルの違う強さだったと思い知った。
最後に、血を流しすぎたのか、さすがのゴブリンキングだけど、ピクピクしてはいるけど手も足もないし、反撃はまず無理だ。
高橋さんが聖一の手足をもとの位置に戻して、自己再生の力でくっついたところを押さえつけ、管理人さんが元の人間に戻してくれた。
聖一の左腕は、二の腕の途中で無くなってしまったけど。
よかった、んだよな。この後探索者ギルドや、警察。もしかすると自衛隊とかも出てくるかもしれないけれど、生きていれば償うこともできるし。
保育園で、俺を苛めていた聖一。ある日突然『友達になるぞ』といきなり態度を変えたときは、不信感しかなかった。
それから小学生にあがり、友達もできなかった俺は聖一と、三久だけが遊び相手だったよな。
事故で両親が死に、三久も意識が戻らず。俺だけが取り残されたように思い、本当に一人になったんだと思った。
そんなとき、聖一は俺を遊びに連れ出した。口では『ほっといてよ!』とか言ってたけど、本当は感謝しかなかったんだよ。
それが例え偽物の友情だったとしても、ね。
全員をゴブリンから人間に戻し、この後ダンジョン内のゴブリンの一掃をどうするか話し合っている最中に、探索者ギルドの方たちがゾロゾロと三階層に降りてきたんだったな。
タマちゃんはなぜか慌てて黒い入口を作り逃げちゃうし、管理人さんも元の管理人のおばあちゃんの姿に戻っていた。
後から聞けば、高橋さんは引退したけど、管理人さんも昔、Sランクで、パーティーを組んでいたんだって。
そして一番驚いたのは、残りのパーティーメンバーが父さんと母さんだったってことと、タマちゃんが父さんの従魔として登録されていたことかな。
俺が産まれてパーティーが解散したそうだけど交流は父さんたちが死ぬまで続いていてらしい。
記憶をたどると、そういえば頭を剃りあげていた、今はフサフサの高橋さんと、ハイエルフの姿の管理人さんのことは見たことあったな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
佐藤先輩と山本先輩。佐藤先輩は刑務所を出て保護観察処分とかで、学園は退学となりどこかへ転校していったらしい。
山本先輩も、外国の学校へ留学したようで、すでに学園にはいない。
聖一と二葉の病院も、どこの病院かは教えてもらえなかった。
治した直後の管理人さんが――
『全員駄目ね。殺してあげた方がこの人たちのためだけど。この先、何十年とゴブリンになってる悪夢にうなされ続けるわよ? 私なら土下座してでも殺してもらうわね』
――と、恐ろしいことを聞かされた。
でも、病院か、教えてもらっていたら、行ってただろうな。
そんなのだから『甘い』『優しすぎ』とか二人に言われてる。しかたないだろ! と、俺は言いたい。
あとはそう、今回のスタンピードは秘密裏に処理された。実質的に被害が、加害者側だけで済んだのもあるだろうけど……。
一番の要因は、御三家と呼ばれる凄く偉い家から報道などを全て止めてしまったからだと。
高橋さんが言ってただけだけど、ちょっとモヤモヤする。悪いことを無かったことにしたみたいで――
「うー、緊張するですよ! 帰っちゃ駄目ですか?」
――スタンピードのことを思い返していて、隣のシオンのことを忘れてたな。
今日から学校に復帰する俺たち
それならと一緒に戻ろうってことになるよね。
「ほらシオン。そんなことばかり言ってないでちゃんと前を向いて歩きなさい」
「
「ですが私も先生の許可が降りるまでの数ヶ月、休んでいたので緊張はしていますわよ」
「むー」
「ほらほらふくれないの」
シオリがシオンのほっぺたをつついて潰している。あ、またふくらんだ……。
そうそうシオリの名前。やっと本人から聞けたときは嬉しかった。
『私の名、ですか?
そうなのだ。あの時するはずだったのに、ズルズルと聞かず仕舞いになっていた。
その後すぐに二人にプロポーズをしたんだけど、答は変わらず――
『『友達から
――だった。
第一章 完
――――――――――――――――――――
ここまで【NTR+裏切り≠ぼっち】を読んでくれた読者の皆様ありがとうございます。
このエピソードをもって、第一章の完結とさせていただきました。書籍化すれば、だいたい一冊分の文字数です。
『聖一や二葉はこのままなのか!』(´°‐°`)ナンデ
『佐藤先輩はどこに行ったの!』( ᐛ )ソーソー
『山本先輩の企てを潰さないのか!』(≖ᴗ≖ )ニヤリ
『ハーレムだろ? まさか付き合ってもないのにこれで終わりとか無いだろうな?』(´˘`💢)
『三久ちゃんは?』(* ᐕ)ドッタノ?
『もっと激しいざまぁ希望!』(⅃ Ⲻ 𐂮Ⲻ)⅃ヤレー!!!
等々あると思いますが、カクヨムコン10に違う作品も出す予定ですので、続きは少し先になるかもしれません。
とか言いながら何話か書けています(*´・ω-)b
が、どうか、【NTR+裏切り≠ぼっち】を今後とも応援してくれると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます