異世界殺人記
葵葉 郁月
第1話 心臓
「大量殺人犯 アルフ・ロロ、今日お集まりの皆さんもご存知のように、
この者は799名の善良な人々の命を奪い、作品と称し弄んだ!
その罪は重く、如何なる観点から見ても冷酷無慈悲極まりないものであり、
その罪は決して許されない!
よって今日! この場で! この男を絞首刑とすることによって、この街の正義と安寧を取り戻す!」
市長代理であるモーガンは声高々に集まった民衆に宣言し、その声に民衆も同調し声を上げる。
「その殺人鬼を早く吊るせェ!」
「娘を返しなさいよ! このクズ!」
アルフは凄まじい歓声を全身余すことなく浴び、そして浸る。
絞首台からの景色は絶景であるが、それだけではタダの箱に過ぎない。やはりファンたちからの声援があってこそ舞台は舞台たり得るのだろう。
今日はなんて素晴らしい日なんだ! こんなに興奮したのはいつぶりだろうか?
著名な画家などは死後に作品の価値が上がり、讃えられることが多いと聞くが、
僕は生きながらにしてこの栄誉を授かれている! なんと素晴らしいことか!
思わず全身の毛が逆立つ、高揚を抑えられない!
思えば、僕の一生はとても幸せなものであったと思う。
何者にも縛られず生まれ持った衝動の為だけに生き、そして今この生涯を全うしようとしている。
ああ、素晴らしい! ファンの歓声には応えなくては!
「皆さん、まずはこの絞首という栄誉を授かれたことを感謝いたします!
お礼と言ってはなんですが、最後にショーをお見せしましょう」
そう言うとアルフは後ろ手に繋がれていた鉄の鎖をスルリと簡単に外し、右手を天高く掲げてみせた。
「おい、あれって……」
「なんか乗ってるぞ……」
「キャー!!!!!!」
動揺は次第に恐怖へと変わり、集まった民衆は青ざめ恐怖する。経験豊富な死刑執行人ですら、思わずたじろぐ狂気の沙汰。
「さぁて、これは誰の心臓でしょうか? 制限時間はこの心臓が止まるまで……」
異世界殺人記 葵葉 郁月 @RanRan_Shine
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界殺人記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます