第3話 K先生の問題点

 校長先生に直接お手紙を出したのは三月の末ですが、届いたのは四月に入ってからかもしれません。

 息子はK先生のせいで人生を狂わされたと思っています。

 ただ、息子のことを除いてもK先生には問題があると判断しました。私はその問題点をお知らせして、学校で適切に処分してもらいたかっただけです。生徒と付き合っているという噂は知りませんでしたが、単純に教師としての資質に欠けていると思ったので匿名でそれを指摘しました。

 私がそう考えるようになったのは、二学期に入ってからです。

 一学期の頃の印象は悪くなかったです。保護者会でもハキハキと喋っていて、明るくて熱心そうな先生だと思いました。進路の説明などもわかりやすかったです。

 ただ、二学期に入ってから少しおかしいなと思うことが増えました。

 うちの息子は朝が苦手で時々学校を遅刻してしまうのですが、そのことについてきちんと連絡をしてくれないのです。私は息子が家を出るより早く仕事に出てしまうので、息子がきちんと学校に行っているのかは息子か先生に聞かなければわかりません。遅刻と言っても午前中には行っているようなので先生もわざわざ連絡しなくていいと思ったのかもしれませんが、十月頃にあった三者面談で遅刻の回数が三十回を超えていると言われてしまって驚きました。

 もちろん息子が悪いことはわかっていますが、そんな回数になる前に連絡はもらえないものなのでしょうか。

 成績についても、一学期の期末試験で赤点がいくつかあって連絡をいただいていたので危ないということはわかっていましたが、二学期の中間試験が終わった後に「このままだと留年もあるかもしれません」と言われてしまって、本当に寝耳に水というか、そんな大事なことを三者面談があるまで言わないってどうなの?と思ったんです。

 一度そのことを先生にメールでお伝えして、二学期の期末試験にはK先生も息子の勉強に付き合ってくださったらしく少し成績を上げることができました。ただ、成績は上がっていたのに何故か冬休みに入る直前になって学年主任の先生から電話があったんです。

 その内容は、息子の成績のことと遅刻のことで、このままだと進級ができないという話でした。

 私はK先生ともお話していましたし、息子も成績を上げているのにどうしてそんな話になるのか、担任ではなく主任の先生から突然連絡がくる理由もわからず、混乱していました。

 すぐにK先生に連絡すると、三学期は試験が一度しかなくてそこで進級できるかが決まってしまうので、保護者との正確な情報共有のために一律でどの家庭にも主任から連絡していますと言われました。

 私が聞きたかったのはそういうことではなくて、なぜ担任が対応しないのか、そもそも成績は上がっているのになぜ進級ができない話になるのかということなのですが、何度聞いても同じことしか言わないので諦めました。

 私はこの時点で、担任の先生と学校が息子を進級させないように仕組んでいるのではないかと疑い始めていました。

 息子ははっきり言って問題児だと思います。小学生の頃から落ち着きがないと言われていましたし、中学の頃にも色々と問題を起こして私が学校に呼び出されたこともあります。

 ただ、高校に入ってからは大きな問題はなく、あってもその場で担任の先生に叱られる程度のことだったと思います。実際、一年生の頃の担任の先生は屈強な体育の先生で、年齢的にもかなりベテランの先生でしたから息子も大人しくしていました。

 K先生のクラスになってからなんです、緩い先生になったからか遅刻も増えて、髪の色でも注意を受けたそうです。(これは学年主任の先生から聞いて初めて知りました。)

 三学期に入って、私も息子がきちんと学校に行っているかは息子に確認して気にするようにしていました。不満はありましたが、学校の思惑通りに息子を留年させてなるものかと意地になっていました。年頃の息子なので連絡してもあまり返事をしてくれませんが、遅刻していないか、成績はどうかなど逐一聞くようにしていました。

 学年末試験の前にはK先生からも連絡があって、テストの日程や対策の仕方など聞いていました。息子は英語と数学が苦手だったので、その二つの範囲についてはK先生にも何度も確認して、一番点数の取りやすい方法も考えてもらいました。K先生は英語や数学は教えられないらしく、その点は少し不安でしたが私からも息子にしっかり勉強するよう言っていましたし、実際にテストが終わって帰ってきた日にはたぶんできたと思うと言っていました。

 それなのに、息子は留年してしまったんです。遅刻も減らしたし、先生の言う通りにテスト勉強もしていたのに。

 もちろん点数が悪かったのは事実だと思います。でも、本当にそれだけなんでしょうか。

 私は一年間のK先生とのやりとりなども含めて、息子が進級できなかったことに本当に先生の責任がないのかを問いたいと思っています。

 例えば、遅刻や成績のことを保護者に伝えるタイミングが適切でなければそれは学校の落ち度ですよね。子どもの人生がかかっているのに連絡をしないのは、あまりにも無責任です。

 K先生がおやめになったと聞いて最初は私の要望が通ったのかと思いましたが、別の理由らしいと知ってがっかりしました。何にせよ息子は留年してしまい、結局通信制の学校に転校することになってしまいました。

 生徒と付き合っているという話は私はあまり信じていませんが(勝手な見方ですが、K先生はあまり魅力があると思えないので、それを高校生が相手にするでしょうか? 甚だ疑問です。)問題のある先生が教壇に立っているというのは保護者からするととても不安です。

 もう縁の切れた学校ですが、資質の欠ける先生を雇わないよう工夫するのが私立の努めなのではないでしょうか。

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