異世界転生した鍛冶師 ~最強の魔獣と始める最強鍛冶師生活~

りおりお

第1章:レオとフィンの出会い

第1話:異世界への転生と初めての一歩

 目が覚めた時、まず感じたのは身体に降り注ぐ心地よい日差しだった。顔に柔らかく当たる太陽の温もりが、まるで長い間忘れていた感覚を呼び戻すようだった。


「……ん?」


 ぼんやりとした視界の中で、俺は自分がどこにいるのか理解できなかった。見覚えのない空、見知らぬ大地――どこまでも青い空が広がり、風が穏やかに草原を揺らしている。その景色がまるで絵画のように美しく、現実感がない。


 俺はゆっくりと体を起こし、周りを見渡した。体の感覚はしっかりしているが、どこか不思議な軽さがある。ふと手を伸ばしてみると、確かに自分の手がそこにあった。だが、それは俺の知っている自分の手ではなかった。


「なんだ、これ……」


 手のひらをじっくりと見つめる。昔の自分の手より若々しく、力が漲っているように見える。俺は確かに、年老いた男だったはずだ。前世の記憶が頭をよぎる。思えば、あの世界での俺の人生は決して平穏なものではなかった。


 病床に伏せ、歳を重ねるごとに体が衰え、夢も希望も見失っていた。俺は、ただ穏やかに最期を迎えることしか望んでいなかった。家族もなく、仕事も失い、何もかもが色を失った人生。だからこそ、この瞬間が現実だと思えなかった。


「ここは……どこなんだ?」


 俺は立ち上がり、足元の草を踏みしめた。草原がどこまでも続いていて、遠くに森が見える。風に乗って運ばれてくる香りは、今まで嗅いだことのない新鮮なものだった。空気が澄んでいて、呼吸するたびに肺がすっきりとする。こんなに清々しい気持ちになるなんて、前の世界では想像もできなかった。


「もしかして、ここが……異世界か?」


 言葉にしてみて、改めて自分がいる場所を理解しようとする。異世界……そうだ、どうやら俺はこの世界に転生したらしい。前の世界で命を終えた時の記憶は曖昧だが、気がついたらこの新しい身体で目覚めていた。


 驚きや戸惑いはあるが、不思議と焦りはなかった。むしろ、静かな安心感が胸を満たしていた。前の世界での苦しみや孤独から解放されたこの瞬間を、俺は心から受け入れていた。


「まあ、こういうのも悪くないか……」


 ぽつりと呟いて、俺は新しい世界での一歩を踏み出した。


 どれくらい歩いたのだろう。草原を越えて森の手前まで来たところで、俺は足を止めた。周囲には人の気配が全くない。静寂が広がり、森の中から時折聞こえる鳥のさえずりや木々の揺れる音だけが耳に届く。


「こんな場所でどうやって生きていけばいいんだ?」


 俺は自問自答しながら、現状を整理し始めた。まず、この世界のことを知る必要がある。そして、俺がどうやってここで生活していけるのか、その方法を考えなければならない。


 幸いなことに、体は健康そのものだ。異世界に転生したことで、若返ったのだろうか? それとも、この世界の人間として生まれ変わったのか。いずれにせよ、これなら体力には自信が持てる。何とかして食料や住まいを確保し、この世界での生活を始めるしかない。


 ただ、何から始めればいいのか――正直、手探りだ。


「ああ、そうだ……俺には鍛冶師の技術があるじゃないか」


 前の世界で、俺は鍛冶師として働いていた。もう何十年も前の話だが、手が覚えている。鉄を打ち、火を操り、武器や道具を作る技術はこの新しい世界でも役立つはずだ。


「まずは、村を探さないとな」


 この世界で人々がどんな生活をしているのか分からないが、少なくとも村があれば、そこで鍛冶師としての技術を活かして生きていけるはずだ。俺は決意を固め、再び歩き始めた。


 森を抜けた先に、俺はようやく一つの村を見つけた。


 小さな村だが、どこか懐かしさを感じさせる風景だった。畑が広がり、木造の家々が点在している。村人たちがそれぞれの仕事をしており、遠くから見ても平穏な生活が感じ取れる。


「ここなら、俺も暮らせるかもしれない……」


 そう思い、俺は村へと足を踏み入れた。村人たちは俺に驚いた様子を見せたが、すぐに親しげに話しかけてきた。彼らに自分が鍛冶師であることを伝えると、村には鍛冶師が必要だと歓迎された。


 その瞬間、俺はこの村で新しい生活を始めることを決意した。


 異世界に転生し、俺は再び鍛冶師として生きていくことになった。この世界がどんな場所で、どんな人々が住んでいるのか、まだ分からないことだらけだが、まずはこの村で自分の力を試してみようと思う。


 穏やかな風が、また草原を通り抜けていく。



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 本日、第1章完結まで更新していきます。


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