防国の淫魔

直治

第1話ー雪原の淫魔ー

月明かりが眩しい真夜中の雪原に二人の人影が見える。

一人は雪のように白い髪と黄金色の綺麗な瞳が美しい少女でもう片方は黒髪のまだ幼い姿のインプだった。

「キイゥ!!キイゥ!!!」

何かを見つけたのか、インプが地面に屈みこんで手で雪をかき分け始める。

雪の中から現れたのは人間の女だ。

さらに雪をどかすと、魔晶石の埋め込まれた長剣と空になったポーション瓶が出てきた。

服をはぎ取られて胸を曝け出す女の冷たくなった瞳には生気が感じられない。

彼女が何をされたのかは言うまでも無い。

「魔力探知はできる?」

白い吐息を吐きながらローズが尋ねる。

「キィ!!」

それにローズは頷くと、「じゃあ私が囮になるから、あなたが仕留めて」インプに不可視化の雪原を駆け出したのだった。

ローズに遅れてインプも自身の体に不可視化の魔法を施して後を追っていく。


ローズは魔力が集中している場所目がけて走りぬけていた。

罠を設置する当たり、冒険者を倒せたのは偶々でもなく、それなりに今まで喰ってきたのだろう。

そうとあれば、なおさら早く討伐せねばならない。

ローズの足は自然と早くなっていく。

そして、ある一歩を踏み込んだ瞬間、激しい重力が彼女の体を地面に叩きつけ、かと思えば次の瞬間には彼女は宙に浮かび上がっていた。

ローズの身体には紫色にうねる太い触手が手足に絡みついて、身動きが全く取れなくなっている

「アハハッ、また一匹捕まえたわ♡」

甲高い声共に現れたのは、一匹のサキュバスだった。

それもあふれ出す魔力が尋常じゃない。

一体どれほどの人間の精気を吸い取ったのか想像すらできない。

「あら?捕まったというのに顔色一つ変えないのね」

サキュバスは不満げに頬を膨らませながら、触手を操ってローズの足を広げさせる。

しかし、それでも彼女の顔色はちっとも変わらない。

「分かった♡もしかして、インプを使って不意打ちを企んでるんでしょ?」

サキュバスはニヤリと笑って触手を操作させる。

すると、現れたのは触手に手足をがっちりと固定されたインプの姿だった。

その瞬間、ローズの目がピクリと動き、そのことに気が付いたサキュバスはニヤリと笑みを浮かべる。

「見てなさい。裏切り者は徹底的に壊してあげるから」

サキュバスはそういってローズの頬をひとなめする

そして、触手を操作すると細い触手がインプの耳の中へと入っていった。

インプの耳から紅い液体がつぅーと流れ、真っ白な雪原に斑点を生み出したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

防国の淫魔 直治 @Naochi-Yot

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ