五日目

 彼女に出された宿題に、俺は驚くほど熱中していた。どれぐらいかと言うと、昨日の夕方、調べることに熱中しすぎて、夕飯ができたと大声で知らせる母親の声が全く聞こえなかったほどだった。

 調べれば調べるほど、知らない数字の面白さが広がっていた。

 完全数について調べていても、それに関係した知らない単語が出てきて、そしてその単語について調べると、全く違う数字の列と、全く関係無いような単語で溢れている、というのがザラだった

 まだ自習のノートは二ページしか埋まってないが、今日はもう遅いので、とりあえず、この熱が冷めないうちに、ここまでの成果を振り返ろうと思う。

 完全数の代表的な性質をいくつか挙げていく。未来の自分がもし過去にさかのぼって日記を読んだ時に、この美しさをもう一度噛み締めてもらいたいのだ。

「その一。完全数とは、『その数字自身を除く約数の和がその数字自身に等しい自然数』のことで、小さい順に、6(1+2+3)、28(1+2+4+7+14)、496、8128、33550336、……、と続く」

「その二。完全数は、メルセンヌ素数(素数の中でも、2の累乗-1の形で表すことの出来るやつ。3とか7とか)と深い関係で結ばれている。具体的には、2のp乗-1が素数なら、2のp-1乗×2のp乗-1は完全数になる。要は、

 p   1 2 3 4 5

    p-1  1 2 4 8 16

   p-1 1 3 7 15 31

とあって、  p-1が素数になってるところだけを見る(15は素数じゃないから見ない)。そして、その隣の    p-1 の数字と掛け算すると、2×3=6、7×4=28、31×16=496、と完全数が現れる」

「その三。完全数は1から  p-1までの数の足し算の形で表せる。

 6=1+2+3、

 28=1+2+3+4+5+6+7

 496=1+2+3+4+5+6+7+8+……+30+31」

「その四。『その二』での関係によって現れる完全数は全て偶数で、奇数の完全数は存在するかどうか自体が不明」

「その五。偶数の完全数が無限個あるかどうかは、数学の未解決問題になっている」

「その六。2024年現在、約の数字まで調査されていて、その中で完全数は五十一個しか見つかっていない」

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