俺はラムネになる

「俺はラムネになるために生まれてきた。だから、俺はラムネになろうと思う。そうラムネに」


俺は自己紹介をビシッと決めた。


人間、誰しも第一印象が大事だ。

第一印象によっては今後の学校生活に支障が出てしまう。

下手な自己紹介で挑めば今後クラスでぼっちになることは確定。

今後とは限らず、今年、来年、そのまた来年も三年間ぼっちで過ごすこともあるかもしれない。

それだけは回避せねば・・・という思いでこの自己紹介にしたわけだが、クラスの反応はどうだろうか。

俺はクラス全体に視線を向ける。


静まり返る教室。クラスメイトの冷たい目線。先生の困り顔。そして輝く先生の頭。

さらには先生のお腹も音を鳴らす。

グ〜という音に笑いを堪える生徒たち。


先生ナイス!!俺は心の中で叫んだ。

先生のアシスト(お腹)のおかげでクラスメイトの気分も向上傾向にあるだろう。

叩くなら今がチャンスだ!!


「ラムネになりたいっていうのは嘘だ。悪かったなみんな。実は俺グミになりたいんだよ。グミって噛むと味が広まるし・・・あ、あとお肌にもいいだろ、な、そうだから俺はグミになりたいんだよ。ってことで一年間よろしく!!」


決まったー!!みんな静まり返ってるけど先生のお腹の時みたいに笑いを堪えてるに違いない。きっとみんなまだ緊張してるんだ。ここは俺が歩み寄ってあげないと。


「みんな!!何か質問とかあるか?」


黒縁メガネでマッシュヘアーの男の子が手を挙げた。


よく手を挙げられるなぁと誰かが小さな声で呟く。


「なぜグミになりたいんですか」


話聞いてたのかこいつとクラス全員が心の中で叫んだ。


「ぐ、グミは美味しいからな、」


急な質問に戸惑ったのかグミは拍子抜けな声で答えた。


さらなる静まり返った空気を変えようと先生はグミ男を席に戻して「次は、蛙ヶ丘之陰陽師くん」と次の生徒を呼んだ。


「俺は蛙ヶ丘之陰陽師鯵場三明という。俺の夢はこの右手に宿し蛙の・・・


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る