第7話 さらばだ、荒木小晴よ

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9月1日 日曜日 午前4:30分


家に『家出します。』と書かれた置手紙を置いてきた。こうすると警察にと届けても捜索はされないらしい。左手には灰色のキャリーケース、背中には黒のリュックサック。徒歩で新越谷駅に向かった。今日は少し人が多い。

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座席に座ったり、乗り換えを繰り返す。ただただ時が過ぎていくのを車窓から眺めていた。何分か経つと、街の風景があれこれ変わっていた。


すると突然、脳裏に光なようなもなが通り、過去が俺を引きずり出す。

目の前に映像が浮かんできた。鮮明に映る。


小晴と過ごした何も変哲もない日常。確かあの時は、小6か?小5かもな。コロナパンデミックの前だったはず。


カビが生えた教室が目の前に広がり、最新のエアコンが一番後ろにある。

自分の席は覚えていない。女子らしい声が真横から聞き取れた。


「ねえねえ京介くん!一緒に鬼ごっこしよ!」

相変わらず能天気なやつだ、まったく。


「小晴、俺らもう小6だぞ?鬼ごっこするような年齢じゃないぞ。」

呆れた風に言う。


「そんなこと言わずにさぁ!一緒に遊ぼうよ~お願い~!」

しょうがない、遊びに付き合ってあげるか。


「チッ、わかったよ、鬼ごっこでもするか。」


「やったあ!ありがとう京介くん!☆テヘペロ☆」

いつの時代のネタなんだそれは…


昼休みの時間で、小晴と一緒に鬼ごっこした。俺は足が速いから、鬼なってもすぐ捕まえることができるし、素早く逃げることができる。


「もう~京介くん速いってばあ!」ぜえ、ぜぇと息を吐きながら、ぼやきも吐く。足を鍛えておくべきだったな。


「どうした?もう疲れちゃったのか?お子ちゃまだねぇ~。」

少し止まり相手を罵るように言った後、小晴が


「バカにしないでよおー!」とキレ気味に言われ、俺は油断していたが、それが仇に。 彼女の右手の手のひらが勢いよく飛んでくる。


「あべし!——」


『次は、羽田空港第2ターミナル駅、羽田空港第2ターミナル駅です。お忘れ物のございませんように、ご注意してください。』

日本語と英語、中国語などの機関音声が強制的に目を¥だ思ってるうちに終点に着いた。


モノレールから出て、空港に入った。広い。数年ぶりだ。

さっさとチェックインをすませよう。


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保安検査、税関検査そして出国検査を済ませた後、搭乗口に着いた。

メキシコ行きの便は日本人もいるが、外国人が占めていた。


窓際がある指定席に座り、長い旅が始まろうとした。飛行機は速さをつけて離陸した。体に衝撃が加わる。高度約1万mに到達した、水平飛行に切り替えたみたいだ。窓際から見える世界はちっぽけな存在に見えた。


実際そうだった。それにしても、エコノミークラスは少し心地が悪い…

メキシコまでは遠い道のりだ。


ああ、小晴。お前と別れの挨拶無しで消えるのはさぞかし悲しいと思うだろうが、真逆だ、俺にとってはな。反比例だ。


さて、寝るとしよう…


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目の奥には真っ白な世界が広がって、ブレザーとスカートを履いた一人の女の子がポツンと立っていた。興味本位で近づいた。


「京介くん…お願い…行かないで…。」聞きなれた声が鼓膜に響いた。

彼女は哀哭をした。泣き言をずっと言っている。


「京介くん…どうして…?いやだ…行かないでよ…!。」

彼女の後ろから巨大で黒い霧なようなものが迫ってくる。全てが包み込まれた。


『Pronto llegará al Aeropuerto Internacional de la Ciudad de México. Por favor, abróchense los cinturones.《間も無く、メキシコシティ国際空港に到着します。シートベルトを着用してください。》』


スペイン語のアナウンスに起こされた。寝ぼけながらも指示通りにシートベルトを着けた。

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