第九話 木登学園のヤベー奴ら

昨日、霜枷ちゃんから課題を科された。

まぁそれはこの後の展開を見ながら考えるとしよう。

そんなことよりもだ。

一体俺のどこにおかしなところがあったのだろう。

昨日家に帰ってから何度も考えたが全く思い当たる節が無かった。

クソッ、さえいなければノートかなんかで状況を整理できるのに。

…いや、その情報通にも既にバレてる可能性があるのか。何とも面倒な話だ。


「おはよう」

「えっ?あぁ、おはよう」


銀也が俺の隣に並び、話しかけてきた。


「真、聞いてもらっていいか」

「えっ、どうした突然」


大体何の事なのかは想像できる。どうせ妹関連だ気持ち悪い


「昨日、霜枷が五時七分に家を出て行ったんだ」

キモッ、分単位で覚えてるとかキモッ


「霜枷は何故あの微妙な時間に家を出て行ったと思う」

「えー、でも帰ってきたんだろ?」

「あぁ、六時十三分にな。だが霜枷は携帯と鍵だけを持って出て行ったんだ。何をしていたと思う」


霜枷ちゃんはどうやら銀也に俺との関係性を言っていないらしい。

まぁ、英断だと思う。だって何しでかすか分からないもん、この兄。俺が殺される

まぁ殺されませんけどね俺は!!!

あっ、ちなみに今日は先程倒れてきた電柱に潰されました。全身がちょっと痛いです。


「まさかお前、尾行してたんじゃないだろうな」


それは二重の意味でやめてほしい。


「いや、俺は当時家にいなかったからな」

いたら尾行してたのか


「いなかった?じゃあ何で出て行ったって分かったんだ?」

「家に防犯カメラを置いているからだが?」

「あっ、そうなん。何?まさか泥棒に入られたとか?」

「何故そうなる」

「えっ、だってわざわざ防犯カメラをチェックしたって事はそういう事だろ?」

「妹達の行動をチェックするのは当たり前だろう?」

は?まさかコイツ毎日防犯カメラで妹達監視してんの?キモすぎんだろ

………まさか個室や風呂場にも付けてないだろうな


「話を戻すぞ。何故霜枷は出て行ったと思う。あんな時間に約一時間もだ」

「んー、部活の仲間に会いに行ったとか?」

「ない。部活仲間と外で会うのは休日だけだと本人が言っていた」


どういう会話してたらそんな言葉が聞けるのか非常に気になるが、今は置いておこう。


「こうなるなら霜枷にも早めにGPS発信機や盗聴器を仕掛けておくべきだった」

苦虫を噛み潰したような顔で言うな気持ち悪い


だが逆に安心した。

もし仕掛けられてたら、何故二人で話をしていたんだとか問い詰められたからな絶対

よかったよかった


…………ちょっと待て


「えっ、今霜枷ちゃんにもって言った?えっ、なに?まさか雪音ちゃんには付けたの?」

「あぁ、雪音の奴に、最近ナンパされたと相談を受けてな。こっそり付けた」

なるほど、主人公向いてないよお前。いや主人公なんだけど。残念な事に


………それにしても相談ねー

雪音ちゃんってナンパとか気にしないタイプだし、むしろそういうことする時って……いや、決めつけるのは良くないな。


「じゃあ雪音ちゃんの行動は全部把握できてるってわけか」

「あぁ、俺は誰よりも雪音に詳しい」

気持ち悪いんだよ冗談抜きで

……そうだ、この流れで聞いてみるか


「そうだ、ちなみにナンパされてから雪音ちゃんと出かけた事ってあったか?」

「昨日語っただろう、デートに行ったと」

「それ以外は?」

「ないな」

「なるほどなー」


はぐらかしたのか本当にないのか分からんが、もっと攻めたほうがよいだろうか


「ちなみにその日って買い物以外何かした?」

「それだけだが?それとデートな」

「いやなんで修正した。買い物だろ」

「お前は全く分かってない。いいか?昨日も散々話したが雪音が誘ってくれたんだぞ。遠慮ばかりの雪音がだ。そんな妹が俺を誘ってくれたんだぞ。これをデートと言わず何と呼ぼうか。そもそもデートというのはーー」

やっちまった。マシンガントーク確定だわ



⭐︎



「つまり民主主義には俺らが話し合いに参加して政治を決めてく直接民主制と俺らが選んでやった代表者が参加して決めてく間接民主制ってのに大きく分かれるんだ。」


現在は現代社会の授業。

担当の夢静ゆめしず先生は黒板にクソデカく字を書いていく。


「あっ、ヤベ。直接民主制の直接民で黒板埋まっちまった!三文字で埋まっちまったよ!!ヒャハハハハ!!!」

あまりにもクソデカすぎる。


夢静先生はリアクションもオーバーだ。

今だって手で目を覆ってオーバーに笑いながらのけぞっている。

そういうとこさえなければ普通の人なんだがな。


この先生は木登学園シリーズ内の男のキャラの中でもかなり印象に残る人だ。

何せ立ち絵が二桁も存在するのだ。ヒロインでもあって三つだってのに

噂によれば表情差分も一枚につき三桁を超えるらしい。意味が分からん。

ちなみに俺は一枚だ。首に手を当ててる立ち絵で、コイツいつも寝違えてんなとネタにされていた。


…直接かぁ、やっぱり聞くなら直接だよなぁ。遠回しに言ったところで知らない間に妹日記に変わるだけだし

……いや、直接言ったところで妹日記に変わるな




現在は昼休み。

結局銀也には聞けなかった。

よくよく考えてみれば実妹の霜枷ちゃんではぐらかされたのだ。俺が聞いたところで焼け石に水というやつである。無理だったと報告して終わろう。そうしよう。


………さて、目の前の現実に目を向けるとしよう。


「兄さん、はい、あーん」

「あーん。おっ、うまいなこの肉じゃが」


俺は現在屋上で冬神兄妹のイチャコラを見せつけられていた。どうしてこうなった、何を見せられてんだ俺は


「やっぱり分かります?隠し味を入れてみたんです。」

「隠し味か、気になるな」

「ふふっ、そ・れ・は、私のあ・い・じ・ょ・うです♪」

本当に何を見せられてんだ俺は

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