第17話 閉会、そして封書

「「えーーーそれでは!!本日の閉会式ならびに表彰式を行いまーす!」」


その合図に合わせて会場からは拍手が上がる。決勝の時より幾分か人は減ったがそれでも相当な数の人が残っている。遠い空はオレンジがかっており本日限りのお祭りがもうすぐ終わろうとしていることを告げていた。


「「まずは本日の主役!キョースケ選手とその相棒シン選手に登場してもらいましょう!!」」


そういえば登録名は愛称のままシンにしてたんだった。すっかり定着しちゃったな。


俺とシンは控えていたステージの袖から出てステージの中央へと向かう。観衆の拍手と歓声、ねぎらいの声が俺たちを迎える。最前列ではリゲルが指笛を鳴らしてこっちに手を振っているのも見える。


レース後のこの雰囲気なんだかとても懐かしいな。そんなに前のことではないはずなのに。


「「はい!それではキョースケ選手!今回は圧巻の走りで大逆転劇を飾りました。優勝した感想はどうですか?」」

お姉さんが自分の持っていたマイクを俺に渡してくる。


やべっ、デイヴィットが言ってたこと忘れてた、、。何も考えてなかった、、。


えっと、、今回は逃げ切りを図ったんですけどいつもは違う後方からのレースになって、、ってこれは何か違うな


うーーーん、、もう何でも良いか、、。


「「とにかく!最高でした!!」」


会場が一瞬静まり返る。隣のお姉さんもきょとんとしている。


あれ、、これじゃダメだったかな、、。


次の瞬間、

ドワァァァァァァァァァ!!

会場から再びの歓声が上がる。


「最高だったぞーーー!!」

「最高だーー!」

「とにかくだーーー!」


いろんな声が聞こえる。ん?とにかくだーはなんか違くないか?まぁ盛り上がって気に入ってくれたなら良かった。


「「はい!とにかく最高だったということでキョースケ選手ありがとうございました!それでは次に賞金とトロフィーの授与になります!」


おおおおおお!

会場からはまた今までとは違った歓声が上がる。何だと思ってみると反対の袖からテラルド王が両サイドに騎馬隊長と魔術師長を付けてこちらに歩いてくる。思わず俺も緊張して身震いしてしまう。


やがて王と正面に向かい合って目を合わせたが、やはり最初に受けた通り厳しくかつ質素な印象は変わらなかった。特にその身なりだけでなく印象を受けたのはその目だった。俺の目を見る目は力強く厳しくも見えるが決してぶれず、自分自身の目で相手の本質を見定めてやろうという強い意思を感じる。あまりの迫力に何度も目をそらしてしまいそうになるがタイミング良くお姉さんが話し始める。


「「それではテラルド王様からの贈呈になります!」」


「見事な走りだったぞ。あんなに速く走れる馬は私も初めて見たよ」


すると王様がまず横の騎馬隊長から金のトロフィーを受け取り俺に差し出してくる。その高さは1mにも及び身長が低い俺にはかなり大きく感じる。


「ありがとうございます」

王に対するお辞儀の仕方などもちろん分からないので普通に深々お辞儀をしてトロフィーを受け取る。


おもっ!!

これ一体何で作られてるんだ!?もしかしたら本物の金とか一部に使われているのかもな。というか、、


なんで騎馬隊長もこのおっさんも軽そうに持ってたんだよ、、。


続いて、今度は魔術師長が赤いリボンのついた白い封筒を王様に渡す。あれ、、こんなものに金貨100枚も入るはずないよな?


「おめでとう、後日受け取りに来てくれ」


「え、あ、ありがとうございます」


そうか、そういうことかどうやら本物の金貨100枚は後日もらえるらしい。まあ、たしかに今そんな大金を急にもらっても不安だしそっちの方が助かる。


「「はい!それでは表彰式は以上になります!!皆さんもう一度キョースケ選手とテラルド王に盛大な拍手をお願いしまーーす!」

それから俺はもう一度王にお辞儀して握手を交わしステージを降りた。








「あぁ~~疲れた~~」

俺は袖に隠れて観客の見えなくなったところでリアの方へとだらしなく向かう。


「何よ。良かったじゃない。とにかく!だっけ?」


「もうそれは良いだろ~?忘れてくれよ~」


フフフと楽しそうにリアが口に手を当てて笑う。そしてここからが本題というようにキリッとした顔つきになる。


「それで、賞金は?」


「これだ。どうやら後日受け取りだそうだ」

俺は受け取った白い封筒を見せる。


「あらそうなの?何が入っているの」


「開けてみるか」

俺はリボンを雑に開けてさっさと中身を取り出す。中からは一枚のはがきのような紙が出てくる。固く肌触りが良く質が良い物なのは素人でも分かる。


「なんか書いてあるわね」


「どれどれ?」


そこにはありがちな祝い文句が大体書かれている。大事なのは、、


「えーっとつきましては明日テラルド王の城へと賞金を受け取りに来ていただきたく存じます、か。明日か話が速くて助かるな」


「そうね、、後は大体どうでもよい決まり文句ね、、ん?なんか最後に書き足してあるわよ」


ほんとだ、、リアの言う通り本文の機械のように綺麗に書かれた文字とは明らかに別の人が書いたであろう行書なのかただ汚いだけなのか崩れた文字で何か書き足してある。


「ん?明日、、城で会おう。テラルド、、。ってこれ、、」


「テラルド王、、のことよね?」


「だよな、、ってことは」

思わずお互いの顔を見合わせる。


「やったわ!!直接会えるってことじゃない!」


「おお!やったな!こんなこともあるもんだな!」


元々賞金のために出た大会ではあったがまさかこの国に来た最大の目的を果たせることになるとはとんだ棚ぼた展開である。


でも、直接会うなんて何か用事があるのだろうか。それともただ俺とおしゃべりしたいだけか、いや、そういうのが好きなようにも見えなかったし何かあるのかもな。まあいずれにせよリアのことより重要なことではないだろう。


、、でもテラルド王に会えるってことは、、もしかしたら、、。俺は自然と目の前のリアに視線を向ける。


当のリアはそんなことには気付かず喜んだのも束の間でもう何やら考え事をしている。


「「それではこれにて馬術大会の一切を終了いたしまーす!」」

その間にいろいろ進んでいたのか閉会式も終わったようだ。


「よし、じゃあ俺たちもぼちぼち帰ろうか」


「そうね、なんか食べて帰りましょう」


そう言って出口に向かおうとしていると会場にいた白いマントの立派な服を着た兵士が俺たちの方へと向かってくる。その白いマントに入るラインの色は青。ってことは、、


「魔術隊の人ね」

リアが耳元で俺にしか聞こえないくらいの声で囁いてきて思わずドキッとする。


「キョースケ殿とお連れの方ですね」

その若い男俺たちのピッとまっすぐ立ち止まる。


「は、はい」


い、一体何の用だろう、、。







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