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鳥の巣の近くの森には竹がたくさん生えている竹林があった。(それはなんだか浮世離れしていて、とても美しい風景だった)
その竹の一つを切って加工したのだろう。
炊き上がった土鍋のご飯(土鍋を開けると、ふわっと白い湯気がたくさんでて、粒のたったつやつやした白いお米の美味しそうな匂いがした)を盛り付ける器は斜めに切った竹の器だった。(いつも鳥の巣で白藤の宮が作ってくれたお食事をいただくときには、毎回斜めに切った竹の器にご飯を盛り付けていた。普段のお食事のときにも白藤の宮はこの竹の器を使ってお食事をいただいているようだった)
いつものように戸棚の中から白藤の宮がその竹の器を取り出すと、そっと新鮮な竹のいい緑の匂いがした。(もしかしたら、毎回、若竹姫が森を尋ねるころになると、白藤の宮がわざわざ新しい竹の器を作ってくれているのかもしれないとその新鮮な匂いを嗅いで若竹姫は思った。ありえるお話だと思った)
「はい。できました」
そう言って、にっこりと笑いながら両手を合わせて白藤の宮は嬉しそうな声で言った。
今日のお食事の献立は竹に盛り付けた土鍋で炊いた炊き立てのご飯と、新鮮な橙色の鯛のお刺身、そして森のお野菜のお味噌汁だった。(本当にとても豪華な献立だと若竹姫は思った)
二人は出来立てのお食事をはじめに二人でお話をしていた囲炉裏のある部屋の奥にある、ものがなにも置いていない、蝉の抜け殻のような少し寂しい雰囲気のある、鳥の巣にあるもう一つの部屋の中にお膳を運んで、そこでいつものように二人で向かい合うようにして白い鈴蘭の花の模様の座布団の上に座った。
部屋の障子は閉めっぱなしで外の風景は見えない。
……薄暗い部屋。
そのなんの飾り気のない質素な部屋が、いつも二人が二人だけで静かにお食事をする部屋だった。
いつもはこの部屋で、一人で白藤の宮は食事をしているのだという。(そんなことを楽しそうな顔で白藤の宮は言っていた。一人だから気が楽でいいと言って笑っていた)
そんな風にこの部屋で、一人で食事をしているいつも明るい笑顔の白藤の宮のことを想像して、若竹姫はそれはとても寂しい風景だと思った。(太陽の光が溢れるような、そんなもっと明るい部屋が、白藤の宮には似合っていると思った)
「では、あったかいうちに、いただきます」と手作りのお箸(桜の花の飾りのあるお箸だった)を持って両手を合わせている白藤の宮は(自分のことをじっと心配そうな顔で見ている)若竹姫を見ながらにっこりと笑って(まるで私は全然大丈夫ですよとでもいうようにして)そう言った。
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