月と果実

菫野

月と果実

訪ふ人もなく秋深くなりまさる林檎いくつも卓に並べつ


磨かれし床にわが身の映るのを木通は立ちて凝と見てをり


無人駅あるやとおもふ辺りまで行けば柘榴の袋さわだつ


葡萄屋の葡萄いづれももだふかく月の光をうすくまとひき


蟻はみな蝶の翅などはこびゆく長き縦列ふともさびしき


踏まれゐし画廊の床の手袋をかつて充たした手はいまいづこ


歌ふくちびるを花としおもひ見るあなたの声のかほる間に間に


梨と月 さかひのいよよあやふきにあをき光の部屋に満ちたり

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月と果実 菫野 @ayagonmail

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