体調不良短歌

なばな

体調不良短歌

腹痛

人生のいくばくをここで過ごすのか厠でうめく晩夏の夕べ


不眠症

温めた牛乳の膜喉奥に張り付き息を潜める深夜

朝ぼらけ法定速度30の家のおもてで犬の鳴き声

スーパーの開店前の惣菜の匂いを浴びる寝不足の朝


頭痛

頭蓋には廃油混じりの泥水が詰まっているが今日も誤魔化す


肌荒れ

瘡蓋を毎日剥いで食べている泥濘む傷に爪を立て掻く

指先の皮膚は分厚く強張って罅割れ剥がれ日々剥がれ落ち

割れた手で水をつかんでうめく朝タオルににじむ赤は見ぬふり

軟膏を赤く荒れ果つ泥濘に塗るも虚しく縷々流される

夏の日も耳の穴からとめどなくチーズが流れ髪を伸ばす


蕁麻疹

燎原の火を掻き毟り抗議するおいしいお肉からだが拒む


腱鞘炎

手を振るとカクカクカクと軽快に壊れた機械の音が聞こえる


歯痛

砕けるなわたしを置いて行かないで帯解き来の友よ永久歯


疲労

吊り革に縋って揺れるよる夜中ガラスに克明疲れと老い


青あざ

くろぐろと色鮮やかに花開き身体を彩る打撲跡愛づ


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