天体観測
ただし
アルタイル
ほうっと出た白い息は彼方へと飛ぶ。
少年は道なき道を進む。期日までは時間がない。
しかし急ぐわけにもいかない。仕事を放棄するわけには行かないからだ。
周りには雪が散っている。
一方の少年はというと一面銀世界で周りには何も無いというのにあまりにも軽装である。
だが少年の口からは熱気を孕んだ息が周りをさらに白く染めている。
もうずっと歩き続けているからだ。
少年の脇には馬が四頭ほど仲良く歩いている。
だが少年はその馬に乗ることはない。
馬の体力をなるべく温存するのだ。
なぜならこの辺りは不毛の地。
人間の食料は保存食を持ってくればいいが、馬はそうはいかないということだ。
と、いっても他にも方法はいくらでもあるのだが、少年は知らない。
”歴”が浅いのだ。
それもそのはず。少年は元々牛飼いである。
「ふう…」
枯れた大木の根に腰を下ろし、馬を木につないで少年は一息つく。
「ううっ、寒い…」
今更そんな当たり前のことをつぶやいた少年はいそいそと毛皮の外套を着込む。
「織女よ…」
そんな独り言をつきながら少年は眠りについた。
約束の地は、もうすぐそこまで迫っていた。
だが、翌朝、少年”牽牛”は死んだ。
死因は不明。
その場には少年の体だけが残されていた。
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