第14話 満月が消える夜

再会と別れの神殿


ロキ(小泉悟志)は、ユグドラシル神殿の一室で横になり、空をぼんやりと見上げていた。手元には開きかけの本が放置され、すでにやる気を失ったかのようにだらけている。そこに、ノアが姿を現した。彼はロキの従者であり、背が低くモフモフした姿をした精霊だった。ノアは真面目な性格で、ロキの怠惰な行動に対して常に厳しく接しているが、その奥には深い信頼と心配がある。


「ロキ様、また怠けてるんですか!」ノアは厳格な口調で言い放ったが、その裏にはいつもの心配が込められていた。ロキが怠けすぎて本気を出さないまま、力を発揮できずに終わってしまうのではないか、ノアはいつも気にかけていた。


ロキはおどけて言いながら、軽く手を振った。「おや、ノア。そんなに眉間にシワを寄せるなよ。ちょっと休んでいただけさ。」


「ロキ様が少し休むと言うときは、たいていずっとだらけてる時です!」ノアはため息をつきながらロキのそばに立ち、腕を組んで見下ろした。その姿は厳しいが、目には確かな友情が感じられる。ノアはいつもロキのことを心配し、彼のそばにいることを誇りに思っていた。


その時、ガイア(森野美砂)がピーコを肩に乗せて現れた。小さなセキセイインコであるピーコは、羽をバタバタさせながら「おもしろいこと…いって!」と片言でロキに言った。


ロキはしばらく考え込み、ニヤリと笑って「じゃあ、こういうのはどうだ?『なぜ月は満ち欠けするか知ってるか? そりゃ、時々ダイエットが必要だからさ!』」と冗談を飛ばした。


ピーコは「ピーピー!」と楽しそうに鳴きながら羽をバタバタさせ、「もっと!もっと!」とせがんだ。


ノアは腕を組んだまま目を細めて、「ロキ様、どうしてそんなくだらない冗談を言うんですか?」と、呆れたように見つめた。しかし、彼の表情にはどこか温かい愛情が見え隠れしていた。ロキが冗談を言っているのを見て、少し安心している自分に気づいたが、それを表に出すことはなかった。


「まあ、ピーコを笑わせるのも、俺の大事な仕事のひとつだろ?」ロキは肩をすくめて軽く答えた。


ガイアはその様子を見て微笑み、「本当に楽しそうね、あなたたち」と優しく声をかけ、ピーコの頭を撫でた。ピーコは「ピーピー!」と嬉しそうに鳴きながら、さらに羽をバタバタさせた。


その光景を少し離れたところから見ていたアスクレピオス(松田真人)は、ガイアの楽しそうな表情に軽い嫉妬を感じていたが、口には出さず静かにその場を見守っていた。


満月が消えかかる

ロキたちは再び満月の光に包まれ、元の世界へと戻る準備を始めた。しかし、満月の光が次第に弱まっていくことに気づいた。空が徐々に暗くなり、彼らの周りに漂っていた光の粒子が消えていく。


「満月が消えかかっている…急がなければ。」ウラノスは眉をひそめ、緊張した声で警告した。


「早く、元の世界に戻ろう。」アポロンは焦りを隠せず、急ぎ足で言った。


ノアはそんなロキたちの様子を見ながら、心配そうに駆け寄った。「ロキ様…ちゃんと戻ってきてくださいね。いつも無茶をして、こっちがハラハラさせられるんですから。」彼の声にはいつもよりも少しだけ不安が混じっていた。


ロキはニヤリと笑って、ノアの頭を軽く撫でた。「心配するな、ノア。俺は戻ってくるさ。お前がいないと退屈でどうしようもないからな。」その言葉には軽さがあったが、ロキの瞳には確かな信頼が宿っていた。


ノアは少し目を細めて「全くもう、ロキ様はいつもそう言って…でも、待ってますよ。必ず帰ってきてくださいね。」と、いつも通りの厳しい態度を保ちながらも、どこか温かみのある表情でロキを見送った。


ロキたちは緊張感を抱えながら、満月の光が完全に消える前に異世界を離れ、現実世界に戻るために準備を急いだ。胸の鼓動が速くなる中、それぞれが不安と焦りを感じていたが、互いに言葉を交わす余裕はなかった。


現実世界に戻ると、彼らはそれぞれが異なる場所に立っていたが、全員が神社に戻っていた。異世界での記憶は失われていたが、アポロンは微かに異世界の記憶を思い出し、「あの夢…やっぱり現実だったのか。」とつぶやいた。


新たな戦いへの決意

彼らは次の満月の日を待ちながら、現実世界での生活を続けていた。異世界の記憶が消え去る中、アポロンだけが微かな記憶を頼りに準備を進めていた。


「最近の夢、あの戦いが現実だったんじゃないかって気がするんだ。」アポロンは友人たちに話しかけた。


「夢か現実かは分からないけど、何か大切なことを忘れている気がするんだよね。」ロキは思案しながら答えた。


「次の満月にまた何かが起こるかもしれない。念のために準備しておこう。」アスクレピオスは冷静に提案した。


彼らは次に訪れる挑戦に備え、日常の生活を送りながら、少しずつ必要な準備を進めていった。

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