第5話

 シュンジュは、夢を見ていた。

 若いころの自分が、砂漠にいた。

 砂漠には、大小さまざまなドラゴンの卵があった。

 小さなものは、5才ぐらいの子供と同じぐらいの大きさのもの。

 大きなものは、大人の男と同じぐらいの大きさのもの。

 ドラゴンの卵は、およそ10年かけて孵化できるサイズになる。

 ドラゴンは毎年、卵を産むとは限らない。

 それでも、この砂漠には、8個の卵があった。

 シュンジュは、まだ見習いで、卵を清潔に保つのが、その役割だった。

 卵が孵化すると、さっそく健康診断をする。

 体格云々よりは、幼零期には病気に弱い個体が多く、毎日の診断は、欠かせない。

 特に、虫歯には要注意で、1~2日で、全身に毒素が回り、最悪の場合、害悪をもたらす個体へと変貌してしまう。

 そうなると、手の施しようがなく、やむを得ずに、殺処分の対象になる。

 幼零期を1年ほどで終えると、ある日、忽然と姿が見えなくなる。

 しかし、どこへ降り立ったのかは、すぐに判別する。

 ドラゴンが降り立つことなど、滅多にないがゆえに、噂が瞬く間に流布するからである。


 とても懐かしい夢をみたものだ。

 身分も低く、貧しさゆえに、ひもじい思いを経験したことは数えきれない。

 それでも、なんとか、ドラゴンの世話係として職を得た。

 あとは、一生懸命、師匠についていくだけだ。と意欲にあふれていた時、ある一つの噂を耳にする。

〈ドラゴンの牙は、高値で売れる。なにせ、不老不死の効能があるから、あれ一つで、一生遊んで暮らせる額になるぞ〉


 これを聞いたシュンジュの眼は、怪しい炎をたぎらせるようになった。

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