巡る ー第1部ー

@TsuOe

冒険は始まる

第1話 巡る

吸血鬼が、生まれた。

この世界では別に珍しくないことだった。ただ、生まれた。そう、なんてことない生命の誕生だった。だがその吸血鬼は長寿だった。もちろん他の吸血鬼も千年ほど生きるほど長寿である。それはもう長寿だ。だがそれをも超えるほどその吸血鬼は長寿だった。その吸血鬼には寿命がなかった。他殺されない限り生きていけるのだ。だからこそ、吸血鬼は見た。


自然の崩壊を。

人類の滅亡を。

生命の滅亡を。

地球の崩壊を。

太陽系の崩壊を。

太陽系の再生を。


そして今。何年たったかわからない。

吸血鬼は。

オレは。

とても。ものすごく。


「いやバカ暇なんだけど。」


(何億年単位で)暇してた。(とても重大)

いやマジで。何億年まてばもっかい地球できんの?キレそうなんだけど。ハゲそうなんだけど。ずっと目に映る光景は変わんないし。もう大魔法の『ギャラクシー』で自分の過去見るのすら飽きたよ。いや、過去を思い出すのは飽きないよ?うん。何億何京年分の記憶があるんだしね?でもさ、「見る行為」に飽きたわけよ。なんかアニメ何時間耐久で見る人は分かるんじゃないかなぁ。なんかこう…さ…。わからない?ずっと画面を見続ることに飽きると言うか…。ところで俺は今誰に話しかけてるのかな?1人になりすぎておかしくなりそうだわ…。


「あーあ。久しぶりに地球行きてー…」


マジであそこは最高だった。俺の故郷。森もあれば動物もいて文明もある。何より話せる人間もいた。あの頃を思い出すと涙が…グスッ。

ああ…あと何年たったら俺はあそこにまた行けるんだ…。


「…いや時間早めればいいのでは?」


気がついてしまった。そうだ。時間はやめればいいんだ。


「いける…!これしかない…!」


時間操作系の魔法なんて聞いたことも見たことも使えたこともないけどいける気がする…!(※彼は疲れています。)


「やってやろうじゃねえかコノヤロー!!」


やってやるよ。何億年か前に三秒だけ未来にいけたことがあったからな!あの感覚を思い出せ…!

ハハハハハハハハハハハハ!できる気がしてキタァ!

(※彼は疲れています(2回目))


◇一週間後◇


少し、三秒未来に行った時の思い出を『ギャラクシー』で見直すことにした。

すると、当時のオレは本気で加速したらどれほど早く移動できるのか出来心で試していた。(略:バカだった。)

そしていざやってみるとどんなに試しても秒速50万キロメートルを変えられなかった。別にそれでも十分だったけどなんか悔しくて(バカ)何回かチャレンジしてた。そしたらなんかできてた。(バカ)

この時オレは特に何も考えなかったが今思い返すと本当に何したかわからない。筋肉も『身体強化』もバネとして使った『血液操作』も時間という概念に関わっていない。どう言うことだ?強いて言うなら『加速』と実際に移動したと言う事実が残ってる。そこで二つの仮説がたった。


一、オレはあの時あの瞬間だけ移動していたものが「距離」から「時間」に変わっていた。

二、オレがあの時『加速』していたものは「オレ自身」ではなく「時間」だった。


いや、二は意外とあるんじゃないか?あの時は本当に早くなるように集中してた。だから意図せず『加速』の効果範囲を広げていたんじゃないか?ありえる…。


「…やってみるか…。」


何事もやってみなきゃわかんないしね。


◇さらに二週間後◇


「できた…。」

できたできたできた!やっと!ついに!時間を加速する感覚がよく分からんくてマジで苦労したけどやっと出来上がった!よし、早速行こう!


「…いや服着るか。(急に冷静になった)」


よし、今度こそ行くか。服着たし剣持ったしその他諸々(説明がめんどくさくなった)も持った。いやほんと、ここまで長かった…。何億年暇してたんだか…。いやでもここからは違う!オレは晴れて暇人を卒業するんだ!よし、いざ!!


「よーし、行くぞー!『時間加速トラベラー』!」


光が俺を包む。眩しかったので、思わず目を瞑る。これは…!


チュンチュン


ガサガサ


ヒュ〜


鳥の囀り。森の木々が揺れる音。そしてこの暖かい風。

「ついに…やっとだっ!」


思わず涙する。この森の光景、音、匂い。間違いなく…


「地球だーーーー!!!!!!」


ィヨッッッッッッッッッシャァ!!!!

ついに来た!あんな暗い宇宙空間じゃない!地球に!


「これでオレは自由だーー!!!(元から自由ですが指摘しないであげて下さい。彼はとても疲れてます。)」


◇三日後◇


この三日間、オレはうまい自作の肉を食べながらこれから何をしていこうか考えていた。鳥達をテイムして街を探す&様子見をしてもらったところ、ギルドを仕切っている人が一番かっこよかったのでやってみようかなと思い、本を漁らせてもらったところ、基本的にギルドマスターになるには十段階ある星を稼ぐことで評価を集めて初めて設営できるらしい。即ち冒険しなければならない。さらにさらにこの世界には魔王がいて、さらにその下には四天王。さらにその下には幹部と呼ばれるバカ強い十六体の悪魔がいるらしく、人類と争っているんだとか。それ以外の悪魔達はダンジョンにいるらしく、ダンジョン攻略によって星は稼げるんだとか。でもね。一人旅は飽きてるんだよ。やっぱりパーティーメンバーが欲しいなあ!


「集めるか…。」


強そうな人オファーしに行こう。




ここはビュウラン。剣の国。オレは今そこで強そうな人探しをしている。なんか強いのはブルーとレットとキールらしい。ブルーとレットは兄弟らしくて、仲が悪いそう。それで1番若いのがキールらしい。そして今、そのキールと一緒にメシを食ってる。


「それでさ、オレのパーティーに入らない?」


「うーん、あんたの強さ次第。」


「へぇ。なんで?トップ目指したいから?」


「もちろん。オレはリーダー向いてないからリーダーはしねえけどリーダーはオレより強くないと納得できないから。」


「なるほどー。じゃあオレと後で戦う?」


「あんたがそれでいいんならいいぜ。戦おう。」


「おっけー。じゃあ一時間後くらいに戦ろうか。ルールは?」


「なんでもありだけど殺しはナシ。あと場外でアウトもいれとくか。」


「それだけ?」


「おう。」


「それでいいの?オレ魔法とか使っちゃうけど。」


「魔法も含めてあんたの強さだろ。だからアリだ。」


「なるぺそー。おっけ、じゃあ一時間後に。」


「ああ、強いことを期待してるぜ。」 


そして俺は店を出る。


「…いやアイツカッコ良すぎない?」


素で惚れ惚れしちゃったよ。


◇一時間後◇


「…じゃあ、始めるがほんとにいいのか?剣も用意せず。」


「いーよいーよ。オレは剣も杖も全力出す時だけって決めてるから。」


「つまり俺には本気を出さなくても勝てると?」


「ノンノン。戦いは条件で縛った上でいつも本気だよ。ただそれは縛っているから全力の百パーセントじゃないだけ。」


「へぇ。言ってくれる。」


キールは剣を構える。踏み込む。そして、


「泣かせてやるよ。」


そしてキールは真正面から切り掛かってきた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【補足説明】

結局最初主人公が何をしたかって言うと自分以外の時間を『加速』しました。だから主人公以外はなんと影響もない。ちなみに未来の自分と会っちゃう可能性はありません。なぜなら未来が存在しないからです。未来とは現在のことであってその時々の「選択」によって動いています。だから、何者かが現在から過去に移動しない限り未来は生まれません。


【更新日】

割と自分の予定が不定期なのと小説の筆が進む速度が変わってくるのでいつ投稿するかわからない…。マアキットナントカナルヨネ!今回は二本一気に行きます。

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