サイコパスに溺愛された女

あ(別名:カクヨムリターンの人)

第1話 出会い

深夜の静けさが街を包み込んでいた。足元に響くヒールの音がやけに大きく聞こえる。涼しい夜風が吹き、アカリは肩をすくめながらも急ぎ足で帰路を急いでいた。人通りの少ないこの道を選んだのは失敗だったかもしれない。だが、こんな時間に出歩くのが自分の落ち度だと、心の中で言い訳をした。


突然、背後から足音が聞こえた。アカリの背筋が冷たくなり、胸の奥で鼓動が速くなる。足音は次第に近づき、彼女のすぐ後ろにまで迫っていた。振り返ろうか、走ろうか、一瞬の逡巡が頭をよぎる。しかしその瞬間、背後の人物が声をかけてきた。


「大丈夫ですか?」

低く静かな声が響く。振り返ると、そこには長身でスーツ姿の男が立っていた。鋭い目つきだが、顔にはどこか柔らかな微笑みが浮かんでいる。


「遅い時間に一人歩きは危ないですよ。送っていきましょうか?」

男の言葉にアカリは躊躇したが、何か引き寄せられるように頷いてしまった。そのまま男と並んで歩き出す。


「名前は?」

「アカリです…あなたは?」

「俺はユウマ。夜遅くにこんなところで会うなんて、運命かもね。」

彼の言葉にアカリは微笑んだが、どこか違和感を覚えた。親切に見えるが、どこか異様に落ち着きすぎた男。何かが狂っているような感覚が、心の片隅に残った。


家に近づくと、ユウマは立ち止まり「ここまででいいよ」と笑顔で告げた。「ありがとう」とアカリが礼を言うと、ユウマは一言だけ返して去って行った。


「また、すぐ会えるよ。」

彼の言葉はやけに自信に満ちていた。それが不安を誘う。


次の日、アカリは仕事を終え、いつも通りの帰路を急いでいた。だが、ふと気配を感じ振り返ると、そこには再びユウマがいた。そして、彼は以前と同じように微笑みながら近づいてきた。


その日から、アカリの日常は一変していく。ユウマとの再会は偶然ではなく、運命ですらなかった。彼の視線は彼女を監視し、彼の行動はすべて計算されたものだった。ユウマの異常なまでの執着に、アカリは少しずつ気づき始める。


「あなたを守るためだよ、アカリ。誰にも触れさせない、俺だけが君を守る。」

それは狂気に満ちた愛の始まりだった。


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