第7話 国会での証言
ついにその日がやってきた。UDIラボは、レプコンワクチンの真実を公にするため、国会での証人喚問に臨むことになった。UDIラボのメンバーは皆、これが彼らの最終決戦であることを理解していた。証言に立つのは、神倉所長と三澄ミコト。彼らの証言が、ワクチンの危険性を公にし、厚生省の隠蔽工作を暴く最後の手段だった。
重々しい静けさの中、国会の証人席に座るミコトと神倉。彼らの前には、鋭い眼差しを向ける議員たちと、厚生省の代表である佐伯大臣が座っていた。大臣の表情は険しく、いまにも噛みつきそうな鋭さを見せている。
神倉がマイクに手を伸ばし、重々しい声で口を開いた。「本日、私たちはレプコンワクチンに関する調査結果を報告いたします。このワクチンには、重大な副作用が確認されており、その事実を厚生省が隠蔽しようとしている証拠を手に入れました。」
その一言に、会場全体がざわめき立った。議員たちの間でささやき声が広がり、テレビ中継を見ているであろう視聴者たちにも緊張が走る。佐伯大臣の目が細まり、神倉を鋭く見据えた。
「事実を提示していただきたい。」佐伯大臣がマイクを握り、冷静な口調で言った。「厚生省が何を隠蔽したというのか。」
ミコトはその言葉に一瞬もひるむことなく、手元の資料を持ち上げた。「こちらは、レプコンワクチンの臨床試験データの一部です。厚生省が公開している公式データには、複数の副作用に関する記録が改ざんされていることを確認しました。」
彼女はデータの改ざんの証拠を示し、ワクチン接種後に発生した異常症例の詳細を語り始めた。具体的な症例、心筋融解症の進行、急速に筋肉が破壊される過程を、科学的な根拠をもとに冷静に説明していく。その言葉には、一切の迷いも、誇張もなかった。
議員たちは資料に目を落とし、ざわめきが一層強まった。ミコトの証言が、厚生省が公表している情報と大きく食い違っていることが明らかになったからだ。
「これが本当であれば、大変な事態です。」一人の議員が眉をひそめ、佐伯大臣に問いかけた。「厚生省はこのデータの改ざんについて何か説明がありますか?」
佐伯大臣の目には冷たい光が宿った。「UDIラボの調査結果には疑問が残ります。彼らのデータがどれだけ信頼性のあるものであるか、証拠を提示する必要があります。」
ミコトは佐伯の発言に対し、すぐに応じた。「我々は独立した機関であり、外部の圧力に屈することなく科学的な調査を続けてきました。ここにあるデータは、患者の生命に直接関わる重大な証拠です。私たちはこの事実を隠すことなく、皆さんに伝えるためにここに来たのです。」
その瞬間、会場全体が張り詰めた静寂に包まれた。ミコトの真摯な言葉が、会場にいる全員の心を突き刺した。彼女の背後には、UDIラボのメンバーたちが見守り、画面越しに彼らの決意を共有している。
「あなたたちは何のためにこの調査を行っているのですか?」佐伯大臣が皮肉めいた口調で問いかけた。「UDIラボは何かを企んでいるのではないか?世論を煽り、政府を攻撃するための……」
「違います!」ミコトは即座に大臣の言葉を遮った。その瞳には強い光が宿っている。「私たちは、ただ真実を求めているだけです。人々の命を救うために、科学者としての良心に従って調査を続けてきました。政府や権力との争いではありません。犠牲者のために、真実を追い求めるだけです。」
神倉もまた、マイクに手を伸ばし、静かに口を開いた。「厚生省の方々には多くの責任があります。しかし、今ここで私たちが何をすべきかは明確です。真実を知り、それに基づいて行動することです。」
その言葉に、会場は再び静まり返った。佐伯大臣は何かを言い返そうとしたが、ミコトと神倉の視線に押され、言葉を詰まらせた。彼らの目には、揺るぎない信念が宿っていた。
「証人にもう一度尋ねます。」議長が重々しく口を開いた。「あなた方の証言はすべて真実であり、何らの誇張や虚偽が含まれていないと誓いますか?」
ミコトと神倉は同時に頷き、はっきりとした声で答えた。「はい、私たちの証言はすべて真実です。」
その瞬間、UDIラボの戦いが一つのクライマックスを迎えた。会場の中には、今まで隠されていた真実の重みが、まるで空気を震わせるように広がっていく。彼らの証言は、厚生省の闇に光を当てるものだった。
「証人の証言をすべて確認しました。」議長が結論を述べる。「これから、真実を明らかにするための更なる調査が行われるべきであると判断します。」
UDIラボのメンバーたちの目には、涙が滲んでいた。その涙は、戦いの果てに見つけた希望と、これからの戦いに対する覚悟を表していた。彼らは、ただ真実のために、闇に挑み続けた。そして、今、光が差し込んだのだ。
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