ラフマニノフの夜明け

瀬戸はや

第1話

まどろみと覚醒の間で漂っていた。ラフマニノフがボーカリーズ なんか作るから こんなことになってしまうんだ。 僕はもう少し眠っていたかったのに、まだ起きたくもないのに無理やり起こされて 昨日のこと 、いや 過去の全てのことを整理しなくちゃならない。幼いあの子はまだ何も知りはしない。でも しかしここにいる誰よりも知っているのかもしれない。ラフマニノフがよく知っていたあの美しさも恐ろしさもあの子はすでに知ってしまったのかもしれない。19になった直美がなんとか体の奥で それを知ったのに。年端も行かない彼女がすでにそれ以上のことを知っているのかもしれない。普通の意味で彼女は何一つ知りはしないだろう。しかしあの様子は全てを知っているかのように思えてならない。

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