プロローグ-2"少女たち"
「なぜこんな酷いことを!?」
「貴女方とは相容れないということ、です」
ライフルの銃声が聖堂に響く。
「ひっ…………!」
「きゃうん!!」
「や、薬師時アカの反撃です!弾丸が狙撃手に命中しました!」
「嘘だろおい!教会からここまで800mだぞ!!?」
「ノースコープ狙いをつけて、スナイパーに命中させるなんて……敵ながら感心します……まさに超人ですね」
「いッ、医療班――!!」
「ああっ……」
「少しばかり寝ておきなさい」
「さて。準備は整いました」
「……誰にも私は止められない!」
「ふふふ……あはははははははは!」
薬師時アカ。
眼鏡の下から、大きな瞳が黒く燃えていた。
***
「……あいつ、本当に倒せるのか……?はぁ……」
「狙撃もろくにこなせないなんて……私、もう死んで詫びるしか……うぅ……」
「確かに状況は芳しくありませんね。しかし『遺産』持ちの人間がこれほど集まっても苦戦するとは」
「やはり指揮に問題があるのではないでしょうか?例えば二十分前の……」
「み、皆さん落ち着いて下さい!」
「士気が下がってる……このままだと……はぁ……」
「警備お疲れ様です、失礼」
「……あれ?あれ?ナギサ局長!?」
「マコト大尉、遅くなりました。状況は?」
「さ、先程教会から弾丸が飛んできて……スナイパーが一名負傷しました……」
「ん?あら?隣のこの方はもしかして……」
「ええ……紹介しておくべきね。こちらはゴフェルアルカに招かれた客人の臨時指揮官の『……』さんです。」
「……この方は、この私達を苦境からの逆転に導いてくれるかもしれません」
「まずはよろしく。私に出来ることがあればなんなりと」
「あぁ!……新聞で拝見しました。アルカの客人の『……』さまでしたか。確か、記憶喪失でいらっしゃるのですよね」
「ようこそゴフェルアルカへ。私は七森チユメ、指揮の支援ならお任せ下さい」
スタイル抜群、容姿端麗、初めにそんな言葉が浮かんだ。
「本官は藤ヶ谷レイハだ。特別臨時の小隊ということで短い間だろうが、よろしくお願いする!」
小さい背に白い髪。黙っていれば儚げに見える。黙っていれば。
「あ、芥川モエです……あの、指揮官さん……私は覚えて貰わなくて結構です」
「……いやごめんなさい……そんな気にすらなりませんよね……」
内気な黒髪、何故かドレス姿の不思議な少女。
「ど、どうしてそんなに自分を卑下するの?」
「……お気になさらず……あはは……」
皆、それぞれ武器を持っている。
「かっ、彼女たちは『遺産』の力を使用することを正式に許可されたエキスパートです」
「そ、その戦闘を指揮するのには、秀逸な状況把握能力が必要かと思われますが……」
「『……』臨時指揮官にはそのための特別な能力が備わっています、私が保証しましょう」
「ナギサ局長がそこまで銘打つとは、それは頼もしい。流石はゴフェルアルカに招かれた客人様です」
「今度、ぜひ我がエリアのキヴターテスにご招待を……」
「抜け駆けなんて狡いぞー!ウチの学都市が先だ!」
「流石やばんじんゲフンゲフン学園都市エリアのお方。順番なんて知ったことではないと払いのける姿勢には、無欲な私達にも見習うべき点でしょうね」
「ぐぬぬギウターテスめ!強欲なのはいつだってお前らの方だろう!!」
「……はぁ、猫のようにけんかゴホゴホ失礼……不仲ですね……」
「こ、怖いね……」
「皆様……きょ、局長がお怒りになられないようお静かにお願いします……!」
「……教会の奪還と作戦は簡単です。皆様、これを耳に付けて下さい」
「イヤホンと……通信機器か?」
「特殊な機構のカメラも内蔵されています。『遺産』を持つ方々にはここから指揮を受けて貰います。ゆめゆめ返却するように」
「……遺産持ちを三人同時に指揮できるのか?いくらなんでも……」
「不安なのも分かるけど、見ていてほしいな」
「客人様……?」
「……………ぐぅ」
「………寝てる!?なんで寝たんだよ!?」
「そんな訳ないでしょう野蛮人」
「誤魔化しすらないんだな!やるか!?」
「静粛に。臨時指揮官は意識を失った訳ではありません」
「こちらの画面をご覧下さい」
……そう言うと、彼女はスマホを取り出し電源を付けた。
「ハロー。こちら臨時指揮官、いつでも指揮できるよ」
「客人様が……画面の中に!?」
「何だこれ!?これが……臨時指揮官の力なのか!!?」
「指揮官さん、凄い……不思議な力ですね……」
「……臨時指揮官はこの様に、電子機器に潜る『不思議な力』を有しています」
「原理はまるで私達には分かりませんが……さて。そろそろ時間です。皆様、出撃の準備を!」
「力を貸して、皆。私も頑張るね!」
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