プロローグ-2
「起きなさい。もうすぐにタワー駅に着くわよ」
机が電車にかたかた揺れる。
「ん……女神様……?これは夢…………?」
「誰が女神様ですか。ねぼすけさんもいいところですね」
突っ伏していた顔を上げて、目の前にいるこの人物をぼんやりと見つめた。
「私がゆすっても起きない程疲れてるのね……その気持ちも分かるけど。ただ、もうそろそろ駅に着きますから、起きてもらわないと困ります」
その人物は窓の外を指差した。
「この景色は、慣れないうちは怖いかもしれませんね。それにあなた……確かこの電車は初めて乗るのよね」
「…………ん」
頷く。
「けど怖くないよ。こういう高い場所には慣れてるから」
「慣れてる……?」
「わぁ……すごい。ちょっとワクワクするかも」
「そう……気に入って貰えたのなら良かったです。ゴフェルアルカが一望できるのはこの電車だけでしょうから」
まるでビルの森のようだ。
「ゴフェルアルカ……この世界に唯一残った国家の名前。数百の個性的溢れるエリアにより構成されています。そして、あなたがこれから暮らす場所でもある……」
彼女は小さなカメラを取り出した。
「空に敷かれた線路なんて不思議よね。こんな電車に乗る機会なんて中々無いでしょうし、写真でも撮りましょうか?」
「うん、お願い。一緒に思い出を残そう」
「私と一緒に写真を撮るの?……ふふっ。そうね、構わないわよ」
「?」
「はい。チーズ」
パシャッ!心地の良いシャッターの音がした。
「自撮りなんて初めて。上手く撮れてるといいわね」
「現像まで楽しみだ」
「ええ、楽しみね」
「次はI.F.t〜次はI.F.t〜お降りの際お忘れ物の無いようお願いします〜次は〜」
車内アナウンスがそう告げる。
「アルカ鉄道の列車は流石ね。あの田舎から一日足らずでこの都市まで……」
「プルルルル!」
「こんな時に……あら、マコト大尉?はいもしもし。」
「な……ナギサ局長……」
「はいこちらナギサ。教会襲撃テロの制圧の件ね?」
「え、ええ。それでそのぉ……」
「どうかしたの?『あの件』に触発された狂信者達がテルモス教会襲撃に及んだ話は聞いているけれど。たかがテロリスト数人なんでしょう?そちらでもう制圧まで終わらせているのかと思っていたのだけど」
「は、はい!ですが……その……予想外の事態が発生してしまいまして……」
「予想外の事態?」
「狂信者グループの幹部……『薬師時アカ』が、襲撃に加担……教会を占拠し、教会のシスター二名と神父一名を人質に立てこもりを現在も続けている状態でして……」
「………………………………」
「か……完全に予想外だったんですよぉ!!派遣された小隊は薬師時アカたったひとりに吹っ飛ばされて壊滅状態で……十一名重症七名骨折一名軽症といった様子で……」
「一個小隊を壊滅させる力……やはり薬師時アカ、彼女はやはり『遺産』持ちの人間なのでしょうか。今から現場に向かいます。はあ、折角の休暇が台無しに……」
「お、お願いします……狂信者グループは教会本部に身代金を要求しています。早く対処しないと事態が取り返しのつかなくなってしまいます……」
「(身代金?テロリスト達の要求としては不自然のような……)」
「では局長、なんとかお願いします!」
ツーツー……と、そこで電話は切れた。
「はぁ……」
「だ、大丈夫?ナギサ」
「なんとか、ええ……こんな事態となってしまいましたし。……あなたには先に宿泊予定のホテルで待っていて貰おうかしら」
「私もついて行くよ」
「?」
「きっと、私に出来ることがあると思う」
「……なるほど。確かにあなたのその『不思議な力』は、テロリスト達の鎮圧に役立つかもしれないわね……」
「それに……教会が襲われているなんて、見過ごせないから」
「あなたらしいですね。ありがとう……その力、借りるわね」
シスターズアーク でんじゃらす時計猫 @necomura_alice
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