第36話
蔵之介は、自分のスマートフォンを手に取り、まず月島舞にDMを送ることにした。心の中で迷いながらも、彼は決めたことを実行しなければならないという覚悟を持っていた。
月島舞へのDM:
「舞さん、突然の連絡で驚かせてしまうかもしれません。今回、パーティーで出会った件でお話をしたいと思います。DMでは詳しい内容を伝えることができません。会うことはできませんか?」
次に、彼は美咲にも同様の内容を送ることにした。
橘美咲へのDM:
「美咲さん、突然のメッセージですみません。パーティでー出会うと思いもしておらず驚かせてしまったと思います。どうしても伝えなければならないことがあります。そこでお話をする時間をいただけないでしょうか? 出来れば会って話したいと思います」
蔵之介は二人に対して、DMを送り返事を待つ間に深々と息を吐いた。
♢
月島舞は、蔵之介からのメッセージを見た瞬間、動揺を隠せなかった。
いや、仕事中も集中できていなかったと思う。大きなミスは少なかったと思うが小さなミスを多くしていた。
彼との関係は今まで穏やかで、彼が誰かの彼氏であることなど考えたこともなかった。
いや、若い彼のことだ女性がいてもおかしくはない。
私は美人局にでもあったのだろう。
彼女は冷静を装いながらも、心の奥底で疑念と不安が広がっていくのを感じていた。
(どうして、そんなことを…彼は何を考えていたの?)
舞は、一瞬、怒りの感情が込み上げてきた。しかし、その感情はすぐに薄れ、代わりに自分の中に浮かぶのは深い悲しみだった。
彼女は、蔵之介に対して抱いていた信頼が揺らぎ始めていることを感じ、どう反応するべきかを考えた。
(彼は何かを伝えたいという。それが別れの言葉なのか……)
「ケジメをつけなくちゃいけないわよね」
舞は自分の気持ちが整理できず、返事を送る手が止まっていた。彼に対する感情と、彼が他の女性とも関係を持っているという現実が、彼女の心を複雑にさせていた。
だけど、彼女は自分の方が年上であり、大人の女性として一歩を踏み出すために、ケジメをつけるつもりで、DMを打った。
「わかったわ。会いましょう」
彼からの返事はすぐにやってきた。私は仕事の打ち上げや、次の仕事の準備に入る数日の休み。彼の話を聞くために時間を空けることにした。
♢
橘美咲はメッセージを読んだ瞬間、激しい怒りを感じていた。
自分ではなく、蔵之介が立花麗華を選んだくせに今更、なんの話があるというのか? 美咲にとって蔵之介の行動は許しがたいものだった。
自分に対して特別な感情があると思っていた彼が、他の女性とそんな関係を持っていたことが、裏切りのように感じられたのだ。
(なんで…なんでそんなことを私に隠していたの?)
彼女は自分の感情を抑えきれず、スマートフォンを強く握りしめた。蔵之介のメッセージには誠実さが感じられたが、それでも彼の行動に対する怒りは簡単に収まるものではなかった。
(彼が私に本当に興味があるなら、どうして最初から話してくれなかったの?)
美咲の心は、舞ほど大人ではなく。心の中での葛藤は激しい乱気流のようだった。
彼女は蔵之介を信じたかった。
ただ、それ以上に今感じている怒りと失望が、自分の判断を曇らせていた。彼からの謝罪の言葉は誠実に聞こえるが、それでも彼を許すべきかどうか、彼女はまだ答えを出せずにいた。
蔵之介、舞、美咲、各々が気持ちを激しく揺さぶられて、どのような選択をとるべきか答えを決めかねていた。
蔵之介は、自分が彼女たちにどのように接して、誰に対して、どんな言葉をかけるのか考えなければいけない状況が差し迫っていた。
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