第9話 リアニマという輝かしい力
リウムが起きてからは、ドローン内部で監禁状態となっていた。これは外を見てしまった子供の多くが絶望してしまい混乱に至ったためである。リウムの対応をできる子供は少ない。
それもあり、上層部の子供たちへの説明は保留である。とてもではないが、現状を伝えられる状態ではない。無難に情報をシャットアウトして、ローの活躍を見守りながら城塞を築き上げていく形をとった。
不安がある子供たちには、限られた大人のセイジ軍医がメンタルヘルスをすることになっている。
そんな中リウムとリアは気を紛らわすためにゲームをしていた。世紀末この上ない状況だが、二人はワイヤワイヤと戯れている。
進展があったのは、七時間後程度である。
唐突にローの戦闘の中継映像が開始された。
灰の舞い散るの中、軍服を着た少年が疾走する。蒼く光る眼は水平な軌跡を刻み込んだ。
一軒家を肉塊にした大きさのルインダーの前で止まり、足を踏み込んで、高速で掬い上げるように右腕を振り上げる。
怪物は六分割されて、鮮血が降り注いでいた。
全ての子供に鮮烈に映る。
完全に人の枠外の
希望の号令が多くの子供に轟いた。
一番影響を受けたのがリウムだった。それは、リアニマを起こすほどである。
「すっごーい!!!」
興奮のあまりリアの肩をブンブンと揺らし、「お姉ちゃん、見えない」と言われるほどだ。
今もローによるルインダー殲滅無双は続けられている。子供達の憧れの星は煌々と輝いていた。
「お姉ちゃんもあんな風になりたい!!!」
ドローンのモニターを輝いた眼で見るリウムの姿に、リアは違和感を持つ。
「お姉ちゃん、眼が輝いてる?」
そう、リウムに降り注いだ奇蹟こそがリアニマ。眼はその影響の一つだ。
リアニマとは異常なほど強い感情によって、魂の形を再定義させる現象である。副作用によって、頑丈になり、熱量変換権を授かり、瞳孔が輝くようになる。この熱量変換権によって、ローもルインダーを殺している。通常兵器では意味がない巨大なルインダーに敵うようになる力だ。
「それに、お姉ちゃん、そんな髪型だっけ?」
リアニマは魂の形を再定義させることの方が本命である。リウムの場合それは犬だ。それに引き寄せられて、髪型がビーストイヤーズ(獣耳のカチューシャをつけたかのような髪型)の犬耳スタイルになっていた。
「そんなことよりも、見て! かっこいい!!!」
当の本人は気にしていないようだ。リアニマの副作用は、今のところ戦闘面と見た目のみである。
「……いいの? 容姿って大事……お姉ちゃんは気にしないか」とリアはこぼす。
「同じ人間だから私にもできるかな? できるよね!」と未だにリアの肩を揺らすリウム。
「見えないよ〜」とジト目でリウムを見るリア。
「あ、ごめん……見たらわかる?」と言ってリウムは肩を揺らすのを辞める。
「……うん、まぁ、習った範囲にはないよ。でもそれこそ、体の一部がアニマニウムになっているとかなんじゃない? アニマニウムって意味不明だしね」
「なるほど⁉︎ さすが! ……でもどうすればアニマニウムになれるんだろう……? リアならわかる?」
リウムはまじまじとドローンを見渡す。ドローンこそ有名なあアニマニウム製の一品の一つだ。
「それは大人になってやっと教わることができる話だから、七年ほど待たなきゃいけないんじゃない?」
「今すぐな〜り〜た〜い!」と言ってベッドの上でゴロゴロところがる。
「まず一部がアニマニウムのようになっているっていうのも仮説に過ぎないんだから……」
「じゃあ会いに行こう!」リウムは唐突にベッドの上に立ち上がった。
そのまま歩き、リウムはドローンのドアの開閉をチョーカーにて命令するが、ロックされている。
『緊急事態宣言中のため強制ロック中です』と視界にメッセージが映った。
「え〜ロックされてる!」
「それよりも、この人同じ年齢のローっていう人らしいよ」
ドローンの壁につけられたモニターを指さして、リアは自らの姉の注意を引かせる。
「え⁉︎ 本当だ! なになに……能力の名前はリアニマ?ステージⅣ?って何?」
右上にラベルのように書いてあった文字をリウムは読んだ。
「普通に考えてリアニマの強さの度合いなんじゃない?」
「決めた! 私もロー様のように、ステージⅣになる!」
椎茸目を輝かせて、高らかにリウムは宣言した。
「まだリアニマに目覚めてもないでしょ、お姉ちゃん……」
そんなリアの小言なんか気にせず、リウムはローの戦闘に夢中だ。
「聞いてないな。お姉ちゃんらしい」
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