メモ(2024/09/25)







「さいどのかい」




239:怖いの大好き名無しさん

2015/07/14(火) 21:02:28.42

俺がまだ八つで、東京に住んでた頃の話。

都営住宅でいつも二食で、まあ貧しい方。

でも部屋は10階で、眺めが好きだった。

外廊下から町を見下ろすのが楽しいんだ。

それにクラスで一番貧乏でもなかったし。

下の階に住んでたやつが一番。

俺は夕食あるけど、そいつは給食だけ。

でもそいつの両親とも教師とか堅い職。

しかもバイトまでして毎日帰りが遅い。

だから放課後はいつも俺といた。

仲は良くなかった。

外に出たいのに、中にいたがるんだそいつ。

しかもそいつん家汚いんだよ。

ゴミ屋敷と仏壇のあいの子って感じ。

雑な作りの箪笥的なのが部屋中ぎっしり。

中は何か変な紙屑で床にも散らばってる。

そのせいで人が住める空間がほぼ無いの。

そいつは「紙屑の上で寝てる」て言ってた。

その紙屑も筆で何か書いてて、お経的な。

「宗教か~」とは思ってたけどまあ、ね。


240:怖いの大好き名無しさん

2015/07/14(火) 21:12:34.33

んで二人で何しているかって言うと、勉強。

俺ら上昇志向強くてさ。

テストとか競争してた。

俺のドリル見て嫌味ばっか言ってくんの。

「問題の理解を間違えてる」とか賢げに。

だから仲は良くなかった。

それで俺、ある日仕返ししたくてさ。

無理矢理外で遊んだんだよね。

そいつを家に帰さないように。

他に嫌がることも思いつかなくて。

まあ最初は嫌がってたけど。

後半は楽しそうだったよ。

その薄暗くなってきた帰り道。

長い通りを二人歩いてた時。

「あ」て、そいつが声出して振り向いた。

俺も見る。

20mぐらい後ろに女が一人立ってた。

まあ東京だから、他にも人は沢山いるけど。

一人だけ振袖的な和服で場違いにギラギラ。

それに俺達のこと見てたから、わかった。

逃げなきゃ。


241:怖いの大好き名無しさん

2015/07/14(火) 22:02:43.45

女と俺が走り出したのは同時。

不思議と隣のそいつは走らなくてさ。

俺は右手を掴んで引っ張った。

逃げた理由は直感、何となく。

「これが外で遊びたくない理由」だって。

それで追いかけっこが始まるけど何か変。

女が遅いんだよ。

大人だし、変な服着てるけどそれでも遅い。

追いつけないけど見失わない距離のまま。

走るうちに気付いた。

「行き先がわかってるんだ」

俺達の家がどこか知ってる。

他のどこかに逃げなきゃ。

でももうその時にはアパートの前だった。

仕方なくエレベーターに駆け込んだ。

押したのは10階、いつもの癖。

狭い室内でハアハア息を吐く。

カンカンカン。

エレベーターの外からそういう音。

誰かが階段を上っている音。

すごく大きくて速い。

カンカンカンカンカンカンカン!!

小窓を覗くと、踊り場にあの女がいた。

服の裾が千切れんばかりに足を開いてる。

全力疾走で、でも首だけこっち向いてた。

それで初めて顔が見えた。

顔が溶けてんの、何かドロッドロッ。

写真のインクが滲んだみたいな、

目も鼻も口もわかんねえ。

俺はもうパニックなったよ。


242:怖いの大好き名無しさん

2015/07/14(火) 23:03:03.33

続きまだ?


243:怖いの大好き名無しさん

2015/07/14(火) 23:05:22.32

でも隣のそいつは平気な顔してた。

俺はもう何か八つ当たりみたいに怒鳴った。

「10階にあのバケモンが待ってるんだぞ」

そしたらそいつは平気な様子で窓を指差す。

「このさいどのかい……」

小さな呟きは外の音で上手く聞こえない。

けど閃くものはあった。

俺はエレベーターのボタンを押す。

「この際どの階でもいいから降りよう」

そう言ったんだと思った。

9階の辺りで女を見送り、即座に降りた。

9階のそいつの家に一目散に駆け込む。

この時もそいつはのろのろしたまま。

暗い玄関で靴を脱ぎ始めたので引っ張る。

ドアの外からはもうカンカン聞こえてた。

鍵は閉めたけど、次の逃げ場を考える。

そうしたらこの部屋には山ほどあった。

あの紙屑が詰まった箪笥みたいなやつ。

目についた一番デカいのの中に籠った。


244:怖いの大好き名無しさん

2015/07/14(火) 23:06:14.56

箪笥を閉め切ると当然真っ暗闇。

何故かあの女が部屋まで来ると確信してた。

息を潜めているとやはり、ドアが開く。

カチリ、蛍光灯のスイッチ音。

くぐもった足音、部屋を徘徊している。

暗闇の中ぐっと身を固める。

隣の奴が笑う。

「怖がりだなあ」

いや怖いだろ。

と、反論する前に奴の口を塞ぐ。

「黙れ」

「いや大丈夫だよ」

「そんなわけない、顔溶けてんだぞ」

そいつは体を揺らしてコロコロ笑う。

その振動が手に伝い、

そこでようやく違和感。

体の振動はあるのに、

口の感触が無い。

咄嗟に手に力を強めると、

どろりとした感触。

卵の黄身ぐらいの粘っこさのドロドロ。

奴の顔中そのドロドロでできていて、

「これってあの女と……」

そう思った瞬間、箪笥の戸が開かれた。

俺は立ちはだかるより、そいつに釘付け。

そいつはへへっと俺を鼻で笑う。

「お前は問題の理解を間違えてるってかさ」

どろどろが口もないのに喋ってる。

「このさいどのかいは……」

そこで俺はもう直視できずに顔を背けて。

「お前には影響ないよ」


245:怖いの大好き名無しさん

2015/07/14(火) 23:10:12.31

また投稿してたのか。

それでオチは?


246:怖いの大好き名無しさん

2015/07/14(火) 23:14:56.33

>>245

後は同時に灯りが消えて、終わり。

気付くと、俺の母親に抱えられていた。

場所は例の俺達が入っていた箪笥の前。

母は帰宅後俺がいないことに気付いて、

下の奴の家に駆け込んだらしい。

下の階の奴は見つからなかった。

というか、その両親ごと行方不明になった。

警察にも聞かれたけど。

まあ東京ではよくあることだしね。

俺もその一年後に引っ越した。

だからもう何も知らね。


でも、大人になってから知ったこともある。

「さいどのかい」の意味がわかった。

一度怖いオバケから逃げる。

で、その先でまた同じオバケに会う。

「再度の怪」

怪談によくあるパターンなんだってね。

今思えば、あいつのあの部屋。

あいつがオバケにならない為だったんだ。

でもオバケが来たから、オバケになった


でもあいつ、外で遊んでた時。

すごく楽しそうだったんだよね。


247:怖いの大好き名無しさん

2015/07/14(火) 23:21:41.02

>>246

オチとか言いながら結局長々話すんかい




※以上、『2ch風怪談集』(作者名:トロトロ氏)より引用。







【今日の進捗】

・ついに見つけた

・これまで探してた中でミームの要素を一番拾っている掲示板回


【考えたこと】

・でも、おかしい

・この掲示板回の投稿日時が2020年なのもそうだが、やっぱり今まで聞いたこともないし、ランキング・評価等サイト内影響力がある作品とも思えない

・確かに「また~か」→「後は同時に消灯です」の流れを踏襲していて、「卵」「女」などの頻出ワードも拾っているが、ミームの礎になれる強さを感じない。

・これは本当にミーム、コピペの類か?

・何か違和感がある、根底から、問い立てから違うような…

・まさに「問題の理解を間違えてる」感じがする

・これまで集めてきたミームを見ているとどこかに共通点がある気がするんだけど…………わからん!


・あと、例のサークルの先輩。

・他の人達に聞き回っても収穫は少なかった

・っていうか、みんな「その人の存在は知ってるけど詳細は知らない」的な私と同じ状態

・色々聞いたけど、人となりも不明

・ただ、住所的なものだけはわかった

・どこそこのどこに住んでいる…「あの町のあの店がある通りの奥のアパート」みたいな感じ


・正直、このミームを見つけてから嫌な予感がしている

・何か気付いてはいけないことに気付いてしまったような

・気付いた日から掲示板回で見つける頻度がどんどん増えてる

・でも大学の発表ももうすぐだし…

・いずれにせよ、撤退するタイミングはもう逃してしまった



【今後の方針】

・例の先輩に会いに行ってみる







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