美羽蒼來Ⅴ
「にしても、蒼來、どうしてそんな可愛らしい姿になったのよ?」
「検査とかも受けてないけど、症状が特徴的だから断定するけど、【TS病】ってやつだと思う」
「TS病ねえ.... ニュースとかで見たことあるけど、自分には無縁の話だと思ってたわ」
「それは僕も同じだよ。TS病は世界でも発症例は低いから、なおさらね。そういえば、女性が男性よりも平均的に見て身長が低いから多少低くなるとは思ってたけど、ここまで低くなるのは予想外かな」
「言われたらそうねえ.....身長、もはや幼女レベルよ、それ」
「だよね......はあ、警察に無駄に声をかけられることが増えそうだ」
この姿の僕が一人で歩いているの、傍からみたら小学生かそれ以下の幼児が歩いているようにしか見えないからね。僕が見ている立場でも大丈夫かな、って心配になるよ。
僕の心配事のつぶやきを聞いたのか、母さんが一言。
「普通の人と心配するところがズレてるわねえ.....まあ、蒼來らしいけど」
「ズレてる.....?ああ、普通の人なら、身長が小さくなったことにショックを受けるかもね。人は身長が高いのを好む傾向があるし」
「最近の人は低身長にも需要がある!!!とかってネットで騒ぎまわってるらしいわよ?」
「まさに好みは好みは人それぞれ、だね」
僕と母さんは、その後椅子に座り、顔をつきあわせて朝ごはんを食べた。
言い忘れてたけど、僕の家族は母親だけの母子家庭。
朝ご飯食べた後はそれぞれ登校や出勤の準備......
「あ、蒼來、今日は学校休みなさいよ」
ではない。TS病は人体に悪影響はほぼないとはいえ、病気には指定されているので、発症したら病院の受診が必要。
診断書を役所に届け出ないと、TS病患者の特別措置が受けられないからね。
「TS病発症したから病院行かないとだもんね....あ、弁当作っちゃった」
「....今日の昼ごはんか夕ご飯の代わりにしましょ」
「.....そうだね」
作んなくてもいいって思っても、毎日のくせで弁当作っちゃった。
くせって怖い。
しばらくした後、
僕と母さんは病院へ向かうために車に乗った。
体が小さくなったから、チャイルドシート的なやつ、またつけた方がいいかもな、なんて思った。
母さんは運転がうまいから、こうして車で出かけるときは結構話をしながら進む。
「最近学校はどう?」
「相変わらずさ。基本は一人。たまに遥くんと話すくらい」
「本当に相変わらずねぇ.....」
「勉強も運動も適度にやってるからさ、何か突出しているようには見えないし、誰も寄り付こうなんて思わないのさ。遥くんが物好きなだけさ」
「適度、ねえ..........」
「どうしたの?疑ってる?」
「いやさっきのことレベルじゃないと自分の子供のことは疑わないわよ。あなたのように真面目でいい子なら尚更ね」
「.....どうしたのさ、母さん。今日はやけに褒めるね。褒めても何も出ないよ?」
「あら、人を褒めるのに理由は必要かしら?」
「ふふ、それもそうだね」
「それに、褒めたら笑ってくれるじゃない。それだけで親としては十分ってものよ」
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