美羽蒼來Ⅱ
…..んー.......
気のせいで済ませるには体がちょっと変。
...もしかして。
僕はひとつ、見当がついた。
限りなく可能性は低いけど、もしこれなら
今の状況すべてに説明がつく。
そうとなれば、早速確かめてみよう。
確かめるために何をするかって?
簡単だよ。
自分の体をもう一度よく見直すこと。
そうして僕は一つの仮説の真偽を確かめるべく、自分の体を見てみた。
結果......
仮説は大当たり。
僕の体は小さくなっており、「男性」だった肉体が「女性」へと変化していた。
「ほぇー」
その変化に対して僕は、どうしてこうなった、という驚きではなく、この病気が実在したんだー、っていう感嘆の声を出した。
僕が生まれたぐらいから、日本を中心に流行したTS病。
この病気は発症すると、発症者の肉体的性別が男性なら女性に、女性なら男性に、って反転する。
病気の発見当初は、それは大変だったそう。
未知のものを他の生き物よりも恐れる人間だから、
過剰とも言える対策をとって、反発を受けたり、発症者に対して心無い一言が浴びせられたり。
近年では法でそういったのからは保護されるし、そもそも病気への理解が深まったから、そういうことを言う人も減ったし。
本当にいい時代に生まれたもんだよね、僕。
今の時代、質のいい教育が保障されているし、昭和にあったような体罰もない。
美味しいものもいっぱいあれば、良質な書物もいっぱいある。
昔を生きていなかったから詳しくは知らないけど、昔は今言ったことが当たり前じゃなかったんだってさ。
欲しいものは手に入らないし、学校に行けるのもほんのひと握り。
現代の暮らしを享受している僕から見れば未知の世界。
....やば。
物思いにふけりすぎて、時間が結構経っちゃってる。
朝ごはんとお弁当を早く作らないと、学校に遅れちゃう。
というわけで僕はささっとベッドから降りる。
その瞬間、ぱさっと、着ていた服が体から落ちた。
つまり僕は今すっぽんぽんだ。
そっかー....体、だいぶ縮んじゃったもんね。
高校生の女の子の平均を明らかに逸脱してるんだよね、これ。
まだ鏡で自分の姿を見てないから、体感でしかないけど。
多分今の僕の身長は130cm台で、女の子の平均身長で言えば9〜10歳の子と同じくらい。
生物学上、女性の方が男性よりも身長が低くなりやすいから、TS病で女性になったら、身長が多少なりとも縮むのは当然だろう。
でもここまで縮むのはなくない?
病気の突然変異?それとも僕の体が悪いのか?
可能性が高いのは後者だろうなぁ....
僕、162cmっていう、割と低めの身長だったんだよねえ....
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます