第16話

第16話: 即位式の激闘


**即位式の前夜**


レオナード王子の即位式がいよいよ翌日に迫った。王都は緊張感に包まれ、誰もが新王の即位を待ち望んでいた。しかし、サイルはその裏で進行しているロドルフ伯爵の陰謀を完全に阻止できるかどうか、慎重に計画を進めていた。


ウィリアム宰相とランカスター公爵はサイルの指示に従い、儀式当日の王宮の警備を大幅に強化した。主要な入り口はすべて厳重に守られ、王宮内部には軍の精鋭たちが配置された。だが、サイルはまだ安心できなかった。


『サイル様、ロドルフ伯爵はすでに他国の勢力を引き入れ、即位式当日に何らかの行動を起こすつもりです。彼が正面から攻撃してくる可能性もありますが、他にも別の手段を用いる可能性があります』


「そうだ。彼が即位式を混乱させるつもりなら、警備の強化だけでは足りない。何か裏から仕掛けてくる可能性もある」


サイルは王宮内外に注意を払い、万が一の事態に備えていた。AIの助けを借りながら、あらゆる場所を監視し、ロドルフ伯爵がどのように動くかを見極める準備を整えた。


「明日がすべてを決する。絶対に王子を守り抜く」


サイルは決意を新たにし、即位式に向けた最後の準備を進めた。


**即位式当日**


翌朝、王宮は即位式のために厳粛な雰囲気に包まれていた。レオナード王子は堂々とした姿で即位の儀式に臨む準備を整えていたが、サイルは常に警戒を怠らなかった。彼の心には、ロドルフ伯爵の陰謀が頭をよぎっていた。


儀式は大広間で行われ、各国の使節や王国の貴族たちが集まっていた。彼らの目はすべて、レオナード王子に注がれていた。王子が正式に即位するこの瞬間、王国の未来が大きく動き出す。しかし、その影でロドルフ伯爵が動くのも時間の問題だった。


「すべての動きに注意を払え」


サイルは兵士たちに最後の指示を出し、自らも式場の隅に立ち、異変がないか目を光らせていた。


**ロドルフ伯爵の反撃**


即位式が進む中、サイルの耳にAIの警告が響いた。


『サイル様、王宮の外で異常な動きが確認されました。多数の武装集団が集まってきています。これは……』


AIが言葉を切った瞬間、王宮の入り口で大きな爆発音が響いた。サイルは即座に反応し、王宮の外へと走り出した。


「ついに動いたか……!」


王宮の外では、ロドルフ伯爵が引き入れた他国の傭兵たちが王宮に攻撃を仕掛けていた。爆発は彼らによって仕掛けられたものであり、門を突破しようとしていた。


「守れ! 王宮を守り抜け!」


ランカスター公爵が大声で指揮を執り、兵士たちは防衛線を張りながら必死に応戦した。しかし、敵の数は多く、彼らの侵攻を完全に防ぐことはできなかった。


サイルは剣を抜き、敵兵に立ち向かうと共に、AIの指示を受けて状況を的確に分析していた。


『サイル様、敵の狙いは混乱を起こすことです。最優先すべきはレオナード王子の安全確保です』


「わかっている。王子の元に急ぐ」


サイルは戦闘の中を駆け抜け、即位式が行われている大広間へと急いだ。王子の安全が最も重要だった。彼が無事に即位を果たすことで、ロドルフ伯爵の陰謀は崩壊するはずだ。


**大広間での攻防**


大広間に戻ると、すでに内部でも戦闘が勃発していた。ロドルフ伯爵が送り込んだ刺客たちが、儀式を妨害するために王子を狙っていたのだ。


「王子を守れ!」


サイルは即座に指揮を執り、兵士たちと共に刺客を迎え撃った。剣が交錯し、緊張が高まる中、サイルは冷静に戦局を見極めながら戦い続けた。


『サイル様、王子の安全を最優先に確保する必要があります。敵の動きは読み取れています。ここで押し切れば勝機があります』


「全員、突撃だ! 王子を守り抜け!」


サイルの指揮の下、兵士たちは一斉に反撃を開始した。敵の数は多かったが、サイルの冷静な判断と指揮により、徐々に劣勢を覆していった。やがて、刺客たちは次々と倒され、王子の元へ到達することができた。


レオナード王子は、混乱の中でも冷静な表情を保ち、サイルが駆け寄ると静かに頷いた。


「よく来てくれた、サイル。ここは……私に任せろ」


王子の言葉には決意が満ちていた。彼が王として即位する瞬間が今、迫っていたのだ。


**ロドルフ伯爵の最後の賭け**


戦いが終わりに近づく中、突然、大広間の扉が開き、ロドルフ伯爵が堂々と姿を現した。彼は冷ややかな笑みを浮かべながら、サイルとレオナード王子に向けて言葉を投げかけた。


「レオナード王子……いや、次の王よ。お前が王位に就くことは、我々の計画にとっては些末なことに過ぎない。だが、ここで全てを終わらせるわけにはいかない」


伯爵の目には狂気が宿っていた。彼は一瞬の隙をついて、王子に突き進もうとした。しかし、その瞬間、サイルが素早く動き、伯爵の攻撃を防いだ。


「これで終わりだ、ロドルフ伯爵。お前の陰謀はすでに崩れた」


サイルは剣を構え、伯爵に向き合った。伯爵の表情には動揺が浮かんでいたが、それでも諦める様子はなかった。


「私の計画が崩れただと……? 馬鹿な……!」


伯爵は叫びながら最後の攻撃を仕掛けてきたが、サイルはその攻撃を見事にかわし、伯爵の剣を弾き飛ばした。伯爵はよろめき、ついに膝をついた。


「これが……終わりなのか……」


ロドルフ伯爵は力尽き、崩れ落ちた。その瞬間、戦いは終わりを迎え、王宮内のすべての敵が鎮圧された。


**新王の即位**


戦いが終わると、大広間は再び厳粛な雰囲気に包まれた。レオナード王子は堂々とした姿で即位の儀式を進め、正式に王として戴冠した。


「私は、この国を守り抜くことを誓う」


王の力強い言葉に、サイルは深く頭を下げた。新しい王の即位は無事に果たされ、ロドルフ伯爵の陰謀も完全に終息した。だが、サイルはまだ気を緩めることはなかった。ロドルフ伯爵の陰謀が終わったとしても、彼が残した爪痕や王国内の不安定な要素が完全に消えたわけではなかったからだ。

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