第15話

第15話: 陰謀の影


**新王即位の準備が整う**


レオナード王子の即位の儀式は数日後に迫っていた。王都の街はその準備に沸き立ち、王宮もまた新たな時代の幕開けを迎える準備が進んでいた。しかし、その華やかさの裏には、目に見えない緊張が漂っていた。


サイルは、公爵と宰相の協力を得たことで、レオナード王子の側近としての地位を確立した。王宮内での影響力は確実に広がりつつあったが、依然としてロドルフ伯爵の動向が気になっていた。


『サイル様、ロドルフ伯爵が静かにしているのが不自然です。彼が何らかの行動を起こさないはずがありません。彼は何か大きな策を隠し持っているはずです』


AIの警告に、サイルは頷いた。伯爵がこれまでに表立った動きを見せなかったのは、何かを準備している証拠だった。彼が王座を巡る争いから手を引くとは到底思えない。


「確かに、不自然だ。即位の儀式を機に、何かを仕掛けてくるつもりだろう。準備を怠るわけにはいかない」


サイルは、王宮内の警戒を強化しつつ、即位の儀式を無事に進めるための準備を進めた。レオナード王子を守り抜くためには、あらゆる可能性を想定しなければならない。


**新たな陰謀の兆し**


ある日、サイルのもとに宰相ウィリアム=クロフォードから緊急の呼び出しがかかった。彼はすぐに宰相の執務室へ向かい、ウィリアム宰相と顔を合わせた。宰相は険しい顔をしており、すぐに話を切り出した。


「サイル殿、私の耳に入ってきた情報によれば、ロドルフ伯爵が秘密裏に、他国の使者と接触しているとのことです。どうやら、即位の儀式を混乱させるために何らかの協力を取り付けようとしているようです」


サイルはその言葉に眉をひそめた。他国との連携を企んでいるとなれば、ロドルフ伯爵は王国の内乱を引き起こそうとしているかもしれない。


「他国との連携……即位の儀式を妨害するつもりか?」


「その可能性が高い。しかし、まだ具体的な証拠は掴めていない。儀式当日に動くつもりならば、私たちも即座に対応できる準備を整えておかねばならない」


ウィリアム宰相の言葉に、サイルは静かに頷いた。即位の儀式は王国にとって極めて重要な瞬間であり、そこで混乱が起これば、国全体が揺らぎかねない。サイルは冷静に状況を分析し、AIに次なる動きを指示した。


『サイル様、ロドルフ伯爵の動きを監視するために、私たちも情報収集を強化すべきです。彼が他国とどのような交渉を行っているか、詳細を把握する必要があります』


「その通りだな。まずは、伯爵の周囲の動きを探る」


サイルはすぐに動き、宮廷内にいる信頼できる者たちに命じて、ロドルフ伯爵の動向を探らせた。伯爵がどのような陰謀を巡らせているか、その手掛かりを見つけ出すことが急務だった。


**伯爵の策略**


数日後、サイルはついにロドルフ伯爵が密かに動いているという情報を得た。彼は他国の使者と王都の外れにある館で秘密裏に会談していたという。サイルはその動きを見逃さず、すぐに対策を講じることに決めた。


「伯爵が動き出したか……」


サイルはすぐにウィリアム宰相とランカスター公爵にその情報を伝え、二人と共に対応策を練り始めた。伯爵が他国と手を組んで即位の儀式を妨害する計画があるならば、それを未然に防ぐための策を練らなければならない。


「公爵、軍の配置を強化し、王宮の警備を万全にしてください。宰相、儀式当日に予想される動きについて、さらに情報を集めてください。私も伯爵の館を直接探り、具体的な証拠を掴みに行きます」


サイルの指示は的確だった。ランカスター公爵はすぐに王宮の周囲に軍を配置し、警備を強化した。ウィリアム宰相も、宮廷内の信頼できる者たちを使って情報収集を強化した。


そして、サイル自身は伯爵の館へと向かい、彼の陰謀の全貌を暴くために動き出した。


**伯爵との対峙**


夜、サイルはAIの支援を受けながら、ロドルフ伯爵の館へと忍び込んだ。館の周囲には異常な静けさが漂っており、伯爵が何らかの重大な密談を行っていることは明らかだった。


『サイル様、館内に複数の警備兵が配置されていますが、こちらの動きを感知していないようです。内部に接近すれば、密談の様子を探ることができます』


「わかった。慎重に行動する」


サイルは静かに館内に潜入し、警備兵の目をかいくぐりながら、伯爵がいる部屋の扉にたどり着いた。扉の隙間から中を覗き込むと、そこにはロドルフ伯爵と数名の異国の使者がいた。


「すべては、王位が混乱している今が好機だ。即位の儀式当日に動けば、新たな王を容易に傀儡にできる」


ロドルフ伯爵の声が低く響いた。彼の計画は、他国の力を借りて即位の儀式を混乱させ、新王の権力を奪い取ろうとするものだった。


サイルはその言葉を聞き、すぐにAIに指示を出した。


『サイル様、これでロドルフ伯爵の陰謀の全貌が明らかになりました。即位の儀式を阻止するために動き出すのは確実です』


「間違いない。だが、俺たちもこのまま黙って見ているわけにはいかない」


サイルは静かにその場を離れ、すぐに王宮へ戻って策を講じる準備を始めた。ロドルフ伯爵の計画が動き出す前に、彼を封じ込めるための対策を打つ必要があった。


**次なる対策**


サイルは王宮に戻ると、ウィリアム宰相とランカスター公爵に伯爵の陰謀の全貌を報告した。


「ロドルフ伯爵は、即位の儀式当日に他国の力を借りて、儀式を混乱させようとしています。彼を阻止するために、さらに警戒を強化する必要があります」


ウィリアム宰相は冷静に頷き、公爵もまた重々しい表情で答えた。


「なるほど。では、私が軍を直接指揮し、儀式が無事に進行するように守り抜くとしよう」


ランカスター公爵の力強い言葉に、サイルは安心した。彼らの協力があれば、ロドルフ伯爵の陰謀を未然に防ぐことはできるはずだった。


『サイル様、儀式当日まで時間がありません。さらに監視を強化し、伯爵が最終的にどのように動くかを見極める必要があります』


「その通りだ。儀式当日、何があっても王子を守り抜く」


サイルは強い決意を胸に、次なる一手を打つ準備を整え始めた。レオナード王子の即位が無事に果たされるかどうかは、彼の手腕にかかっていた。そして、王国を守るための戦いが、いよいよ最終局面へと近づきつつあった。


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