自分のウィッグ、自分のスタイル
悠人は、これまで女装の中でさまざまな変身を楽しんできた。
しかし、日常生活を送る中で、サラリーマンとしての現実も忘れてはいけない。
どうしても地毛を伸ばすことはできないため、ウィッグを買う必要があった。
「会社で長髪はちょっとな……」
そんな風に考えながら、休日にウィッグを購入するためにネットを見ていた。
今まではサロンでレンタルしていたが、もっと自分のスタイルを確立するためにも、普段使いできる自分専用のウィッグが欲しかった。
「短めのウィッグは楽なんだけど、どうも輪郭がはっきり出すぎて違和感があるんだよな……」
悠人は、これまで試してきたウィッグを思い返していた。
短いものは確かに扱いやすい。
しかし、顔の輪郭が強調されすぎて、どこか「女装している感」が抜けなかった。
一方、長いウィッグは華やかさがあり、見た目も一気に女性らしくなるが、日常生活においてはどうしても鬱陶しさを感じてしまう。
「長すぎると、どうしても邪魔に感じるし……現実的に扱うには厳しいかな」
そんな思いが頭をよぎる中、悠人は「自分らしいウィッグ」を求めて探し始めた。
しかし、ウィッグの長さやスタイルは数えきれないほどあり、どれを選べばいいのか迷ってしまう。
「丁度いい長さのウィッグなんて、見つけるのは難しいな……」
結局、短すぎず長すぎず、適度な長さのウィッグを探すことに決めた。
しかし、選択肢は多く、どれが自分に合っているのかがなかなか分からない。
ウィッグのサイトをスクロールしながら、彼はさまざまなモデルの写真を比較してみた。
「このぐらいの長さなら、日常でも使いやすいかな……?」
彼の目に留まったのは、肩にかかる程度のセミロングのウィッグだった。
短すぎず、かといって扱いにくいほど長くもない。程よい長さのそのウィッグなら、日常的に着用しても違和感なく、自然に馴染むかもしれない。
数日後、注文したウィッグが届いた。早速、鏡の前で試着してみる。
新しいウィッグは手触りもよく、軽やかに揺れる毛先が自然な印象を与えてくれる。
「これなら、自分に合ってるかも……」
悠人は、満足そうに鏡の中の自分を見つめた。
派手すぎず、落ち着いた雰囲気のウィッグは、今までのような「変身」感を抑え、どこか日常の延長線上にある「女性らしさ」を感じさせた。
「今まで、ウィッグって服装に合わせて変えてただけだったけど、自分専用のものを持つと、なんだか自分らしさを表現できそうだな」
そう思うと、悠人の中で「ウィッグ」というアイテムがただのアクセサリーではなく、自分を形作る大切な要素であることに気づいた。
これまでサロンで貸し出されるウィッグや、イベント用の派手なものばかりを使ってきたが、これからは自分専用のウィッグを持つことで、「自分らしい女装スタイル」を確立できるかもしれない。
「よし、次のサロンにもこのウィッグで行ってみよう」
悠人はそう決意し、再び女装サロンへ足を運ぶことにした。
サロンに到着すると、いつものスタッフが出迎えてくれた。
「今日は新しいウィッグを持ってきたんです。これ、どう思います?」
悠人は少し照れながら、新しく購入したウィッグを見せた。
スタッフは微笑みながら、ウィッグを手に取って確認した。
「おお、すごく自然でいい感じですね。この長さなら扱いやすいし、どんな服にも合いそうです」
「ですよね。ちょうど日常でも使える長さかなって思って、選んでみました」
悠人は少し誇らしげに、自分の選択が間違っていなかったことを確認するように頷いた。
「じゃあ、今日もメイクして、ウィッグを合わせてみましょうか」
スタッフの言葉に頷きながら、悠人はメイクの準備に入った。
新しいウィッグを使うことに少し緊張していたが、これまでの経験から、自分がどんなふうに変わっていくかを楽しみにしていた。
メイクが完成し、ウィッグをセットされた悠人は、再び鏡の前に立った。
そこには、これまでとは違った「自然な女性」の姿が映っていた。
これまでの派手さを抑え、ウィッグの程よい長さが悠人の顔に優しさと落ち着きを与えている。
「わあ……本当に、変わったな」
自分の姿を見て、悠人は言葉を失った。
地毛のように自然に馴染んでいるウィッグが、これまでの「女装」という枠を超え、まるで「もう一人の自分」が現れたような感覚を与えてくれた。
「やっぱり、このウィッグ選んで正解だったかも……」
悠人はそう感じながら、これまでの女装とは一味違う、新しい自分を発見したことに嬉しさを感じた。
ウィッグ一つでここまで自分が変わるとは思ってもみなかった。
サロンでの撮影も、これまでとは異なる雰囲気で行われた。
自然体で立ち、笑みを浮かべるだけで、女性としての存在感が醸し出される。
ウィッグが自分に与える自信と、自然なスタイルが合わさり、悠人はこれまで以上に「自分らしさ」を感じることができた。
「やっぱり、このウィッグがあれば、もっと自然に楽しめるかもな」
撮影が終わった後、スタッフと話しながら悠人はウィッグの選択が自分に与えた影響について考えていた。
これまでの「コスプレ風」の女装から一歩進み、日常の中で女性らしさを取り入れるという新しいステージに立ったのだ。
自宅に帰り、鏡の前で再びウィッグをかぶってみた。
サロンでのメイクはもう落としていたが、それでもウィッグ一つで十分に女性らしさを感じられることに、悠人は驚きと喜びを感じていた。
「次は、どんなスタイルに挑戦しようかな……」
ウィッグ一つで自分の世界が広がったことに気づいた悠人は、これからもっと多様な女装を楽しむことができるだろうと、新しい期待に胸を膨らませていた。
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