その頃、あのアンナ 1

「おお~成功だ!」

「・・・成功か?」


 天井高く神殿のような建物の中、アンナはポカーンと立っていた。



 アンナは婚約者との夕食の帰り道、

 (本当はSNSで話題になった最低でも十万円かかるお鮨屋に行きたかったんだけど、成くんが予約がどうとかアタシのマナーがどうとか言うからマジムカだったけど、予約を取ってくれてた創作フレンチも美味しかったな)

と満足しつつ、

 (もっと飲みたいって言ってるのに全然聞いてくれないんだもん。マジ使えないジジィ)

と不満タラタラでもあった。


 そんな気持ちを持ちつつ、彼、一ノ瀬成とタクシー待ちしてたら、足元から変な模様が現れてピッカーって光った。

 結構強めな光りに当てられ、ビックリしてたら横からもライトが急接近してきた。

 急ブレーキの物凄い音と周辺の人から悲鳴の中、

 (あ、死んじゃうかも。せっかくバカで使い勝手の良い男捕まえたのに、頑張り損じゃん)

と、アンナの目の前が暗くなったのだ。


 そして、白い空間で目が覚めると、派手な容貌の美女が、転生とか特典とか謝罪とかごちゃごちゃ話していた。

 話が長かったので「貴族がいる世界?婚約者より金持ちで使い勝手が良い男がいるなら」「そこに行けばモテるってことね?」などと超解釈をして「アンナ行きまーす♡イケメンまっててねぇ」と白い空間に浮かんでいた扉に飛び込んだ。



「何ここ」

「ヤバ!」

「コスプレっすか!」

「乙女ゲー?」


 アンナがぼんやり体験した事を思い出していると、不思議な服を着ている人たちに囲まれている、どう見ても見たことのある人をたちを見つけた。


 (あ、あの子達、私と成くん見てて「パパ活」「港区かよ」とか言ってたガキじゃん!

トー○キッズみたいな格好の男女とチャラ系ホストみたいなのがアンナを馬鹿にするのムカつく~生意気~)


「早く鑑定を!」

 偉そうな男が神父のような衣装の男とローブを羽織った男たちに命令を出す。


「まず、この銀髪に青色がまだらに入ってる男は、佐藤恋路(レンジ)、十八歳、スキルは剣士」

 男キッズの片割れ、佐藤は「微妙か」っとセルフツッコミをしていた。


「こちらの中途半端な黒髪の男は、山田雪之丞十(ゆきのじょう)、十九歳、スキルは魔法士」

 山田は、ダルダルの黒いパーカーと黒いサルエルパンツに安全ピンをたくさん付けた男なので、地雷系だとアンナは判断した。


「おい、あまり目立ったスキルじゃないな」

「失敗か」 


 白くて長いヒゲのお爺さんと偉そうな小太りの男は、何かと失礼なことを言ってるのでさすがに佐藤と山田も嫌な顔をしている。


「ゴホン、こちらの金髪に赤を混ぜている男は、板谷ミッチン琉稀弥(るきや)・・・十九歳、勇者」

 チャラい系ホストにしか見えない板谷が勇者だと言うのにはアニメの類に興味がないアンナにはピンと来ていない。


「「「「勇者!!!!」」」」

 広間の不思議な格好の人間たちが騒めく。


「えー、やっぱゲーム」

「ルキ、ミッチンって何だよ」

「セカンドネームかよ」

 山田と佐藤はミッチン琉稀弥という名前を知らなかったようで爆笑している。

「うるせー」


「ではそちらの少女が聖女・・・?」

 山田と佐藤のそばにいたミニスカ、網タイツ、厚底靴の紫髪、垂れ目メイクの少女に視線が集中する。


「鈴木茉莉衣那(まりぃな)、十八歳、精霊士」

「えー、勇者と一緒に転生した女が聖女はお約束だよな」

 山田と佐藤が「なんでやねん」と悶えてる中、大勢の人の視線がアンナに集まる。


「まさかこの年増が?」

「えー、パパ活女が聖女って嘘だろ」

「うそっ」

「え、聖女と勇者くっ付くの?ルッキー、おめ!」


 キッズたちがアンナを見て好き放題言いだしたので、アンナはブチ切れた。


「パパ活じゃないわよ!!結婚相手だったっつーの!!」

「えー、あのおじさんと?」

「金目当てはパパ活と何が違うのん」


 最近のガキとは仲良く出来ないわ、とふと見たら、偉そうなおっさんの横にイケメンがいた。

 アンナは聖女云々は良くわかってなかったけれど、あの地雷っぽい女より私の方が可愛いし、お金持ってそうな格好なのできっと自分を気にいるはずと思った。


 アンナは、年上の婚約者のために一応清楚めの茶色に染めた巻き髪、石原さとみや深田恭子を意識したモテメイク、ディナーだったので港区女子風衣装という雰囲気を目指した姿なので、地雷系の女よりは悪印象は持たれるはずはないと思った。


 普段のアンナはギャル系、ダーがゆきぽよちゃんや山本舞香が好きだからね。

 

 そんなわけで、スキルとやらは何だろうと発言を待っていた。


「小柳アンナ、二十八歳、ヒーラー」

 ヒーラーってなんだろうと首を傾げていたら山田が「ブハー!!何を癒してくれるんですかぁー?」とアンナを煽った。


「二十八歳!?行き遅れのババァではないか」

「はぁ!?」

「ヒーラーなら神殿にも魔導士協会にもおるではないか!!」

「聖女じゃないだと!?いや、聖女でなくて良かったのか!?」


 年齢を晒された挙句に、ババァと言われて阿鼻叫喚な状況にアンナはブチ切れた。

 この世界、貴族女性は十六歳から十九歳までが適齢期だと言う。最低な世界だとアンナは思った。


「来月結婚式だったのにこんなとこ連れてこられて変な事言われてマジ最悪なんだけどぉ!?」


「いや、勇者の目立たないってどんな異世界転生だよ」

「二十ハ歳のオバ、マジウケるんだけど」


 山田と佐藤はゲラゲラ笑い、鈴木は「ここパキれる?」とフードの男に聞いて、勇者は「帰っていい??」と困惑していた。


 こんな事なら、普通に成と結婚の方が良かったとアンナは後悔していた。



---------------


 いらないかな?と思いつつ、アンナの状況を小出しで出していこうかと。

 二話くらいをたまに挟む感じで、なぜアンナと結婚しようとしたか、ちょっと残念なアンナの異世界生活を書いてみます。


 いらないって言われたら、やめて本筋のみに日和るかも。



 いつもお気に入り、エール、良いね!ありがとうございます。やる気になります!!


 今更ですが、あらすじに書いてる通り、喫煙、飲酒に誘いたい意図はありません。ファンタジーの世界でダラシなくもカッコいいオッさんを楽しんで書きたい、そして楽しんで頂けると嬉しいと言う気持ちです。


 正直もっと嫌われて読んでもらえないと思っていたので、不思議ではありますが、ヤニ臭いオッさんキャラいてもいいんだと思って書けるとこまで書いていきたいです。


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