女神に可哀想と憐れまれてチート貰ったので好きに生きてみる

紫楼

序章 1

 人生初の彼女が出来て、かなりグイグイくるアクティブな彼女にちょっと引いたりしつつも、これ逃すと二度と彼女出来ないしなって思ってたらいつの間にやら外堀埋まってて、そんなのもアリかと結婚が決まった。


 彼女はとにかく派手好きで、今どき派手婚かとちょっとめんどくさかったが、俺も長く親を心配させたし、親族に自慢の種にしたい親の思惑も受け入れて、それもアリかと迎えた披露宴の最終打ち合わせを兼ねたデートの帰り。


「うっふふ!ドレスみんな可愛い。四着も選ばせてくれてありがとう」

「全部似合ってたよ」

 正直言って色が違うとかしかわからんが、金で機嫌が取れるなら良いかと流す。


 俺の趣味はネットゲームとネット小説。

 たまに良い酒を買うこと。

 中小企業ながら、勤続二十年でこの前やっと課長になったところだが、アクティブな趣味がなかったので金もそう使う機会がなく。

 その金をなんとなく同僚に勧められた株で小金持ち。


 ケチケチしてキーキー言われるよりは、ドレスくらいって思ったら全部オーダーメイドだった。披露宴終わったら二度と着ないのに。着ないよな?


 新婚旅行はもう好きにしてと任せたら、パリとイタリアだと。

 別に記念の旅行使うのは良いけど、後先考えてないなーと若干早まったと後悔ももはや披露宴間近。


 俺、四十二。彼女、二十八。

 そりゃこの歳の差で浮かれた俺がバカだった。地味で特に長所がない中年にグイグイくる女がいるわけねぇか。

 ちなみに未だ手を出してない。

「結婚するまではぁ、出来ないのぉ」

 二十八でイケイケ(古)でそんなわけあるかとは思ってた。

 ただそれに至るまで口説くのが面倒だと思った。

 ツレに「そんなんで良く結婚決めたな」って言われてしまった。

 なんとなく流れに身を任せちゃったんだよ。

 ちょうど昇進で忙しかったし。


 そんなわけで死刑執行間近な俺は彼女とディナー(一人五万と高級ワイン三本)を終えてタクシーに彼女をぶち込もうとしていた。


「うふふ。美味しかったねぇ」

「そうだな」


 タクシーを見つけて止めようとした時、彼女の足元が光った。


「え、なぁにぃ??」

「キャァ」

「わぁ!」


 夜の繁華街。

 彼女の近くには夜遊びの若者たちもいた。彼女も込みでまとめて光る円に消えそうになってる。


「アンナ!?」

 慌てて手を伸ばすが、今度は俺に横から光が当たる。


「危ない!!」

「離れろ!!」


 俺に向かって野太い声が飛んでくる。


 あ、さっきの光にやられてバスとか制御失った感じ!?


「わぁーーーーー!!」

「ダメだ」

「ギャァアアアア」



 ブッブーーー!!ガッシャーン!!

 キキィーーー!ブァーン!



 マジか?俺死ぬわ。






「あー、起きてくれない?」

 んー、今日は休みだ。もう少し。


「もう休みとか関係ないから」

 はぁ?有給いっぱい残してあるわ。新婚旅行で消えるけど。


「あ、もう旅行もないよね」

 なんだって?


「とりあえず起きてって」


 うるさいなぁ。


 ん?俺の部屋こんな明るかったっけ?


「部屋でもないけど」


 ん?ん?


 手元を見ても天井見ても何もない。


 そして目の前には足を組んで気だるげに俺を見ている美女がいる。


「ふん、美的センスは良いじゃない。なんであんなのに引っかかったのかしら?」

 呆れ顔の美女、何に座ってるんだ?家具がないんだけど、空気椅子?


「どうでも良いことが気になるんだね。物質の概念なんてないよ」

 

 おー!って、ここどこだ?


「やっとか。まずお前、死んだのは理解していないな?」


 あ、俺やっぱあれで死んだのか。そうか。


「さほど驚いてないな。未練がないのか」

「未練・・・」


 んー、親より先になって悪いとか、仕事引き継いでないとか、あとPCの履歴とか昔の同人誌とエロ本・・・。


 死んじゃったならもういい。恥ずかしいとか感じないからなぁ。


「あっさりだな。以前あった奴はPCは破壊してくれとか貯金がーとか地図のかけらを見つけられなかったとか騒いだぞ」


 あー、御愁傷様なヤツだ。

 俺も知りたい。財宝の在処。

 

「一昔前は七つの玉だとか銀のタマとか未知の食材がどうとか言っていたな」

 みんなジ○ンプ派か。


「俺はなぜここに?」


 そう、死んでも知りたい物語の結末はあるけど、そこはもう仕方ない。未完で打ち切りとか何度も見た。仕方ない。血涙。



「やっと聞いたわね。まずはお前はまだ死ぬ時期じゃなかったのに巻き込まれてしまったの」

 あ、あの光った輪っかのせいか。

 そういえば、アンナと若者たちどうなったんだろ。


「お前、結婚予定の相手に淡白ねぇ」


 だって、なんかグイグイ来たーと思ったら決まってて。


「そうねぇ、あの子図太いっていうかねぇ?あの光は一緒にいた若い子たちが、とある世界に召喚された魔法によるものだけど、彼女もは巻き込まれただけなのよ」


 あ、彼女もイレギュラーなんだ。


「一応、向こうに行く前に担当がこういう空間に呼んだけど、なぜか喜んで話も聞かずに召喚した国に飛んで行ったのよ」


 あいつ、話聞かないんだよな。自分の希望が叶って当たり前だと思い込んでて、叶わないとうるさいから。


「あー、だから妥協しちゃったの?」


 女神は、手元に出てきた紙?を読んでる。


「まぁ、死ぬ予定じゃなかったお前が可哀想だからね。本来は召喚魔法を行った世界の者が補償すべきなんだけど、意見を聞いてあげることになったの」


 ほー!巻き添えにしたヤツに罰はないのか。

って言うかネットで流行りの召喚って誘拐とか犯罪だろ。


「犯罪ね~。まぁ法と掟はその世界で基準がちがうから難しいところなんだけど、お前の世界では犯罪だね」


 だろう。


「とは言え、地球に還してあげたくとも肉体はミンチだ。消滅しか無い魂に返還のための余分な神力が使いたく無い」

 

 オブラートに包もうぜ?え、魂って消えるのか?


「お前は次元を超えてしまったから戻しても還るべき道に戻れなのさ」

 

 それ、召喚魔法の国にペナルティつけて!


「まぁあのアンナだかが混ざっただけで結構な罰だろうさ」


 そのアンナ、俺の嫁になるとこだったんだが。


「お前、流されていいことではないぞ。あのアンナは元彼と言うのか?と別れずに「あはー♫パチンカスだけど顔とアッチは最高♡だからお取り置き♡結婚相手は顔はブスだけど口うるさくないしぃお金持ってるから妥協☆何しても許してくれるお財布ゲットぉ♬アタシか・し・こ・いぃ☆うふ」などと言う阿婆擦れで、あのまま結婚しておったら性病を移されたあげく、貯金が全部吸い取られて、托卵されておったぞ」


 だからオブラートをよ。


 って、何そのネットマンガとツブヤイタのサレとかザマァで出てくるフルコンボな未来。

 性病もってて子供できるってどんだけ!


 しかも声真似うま!!何その無駄なクオリティ!!


「お前、女運無くて諦めきっていたにしても最大凶を引くとは」


 イヤァー!!

 俺のライフはもうゼロよ!


「本当に稀に見る気の毒なダメ男だな」


 さらにダメ押しーーーーー!!!


「お前、そのアンナと同じ世界に行きたいか?」


「嫌デース!!」


 ニューヨークに行きたいかー!みたいなノリで何言うのさ。


「ならば、気の毒な四十二歳童貞よ」


 イヤァーーーーー!!!!


「気の毒すぎて涙が出るから私の受け持つ一つの星で望む人生をくれてやろう」 


 望む人生???


「うむ!チートと言うのだったか?魔法や見てくれ、あと持ち物をな。お前はなんとも不器用でどうしようもない宝の持ち腐れの見本のような男だったからな。哀れすぎるので大サービスしてやるぞ」


 何、貶して落として持ち上げるみたいな感じ。


 ボッコボコのフルボッコの後に餌吊り下げてるの。




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