宝くじの呪縛

沼津平成

第1話 宝くじの呪縛

 そのとある世界では、本当に神様がいることを全員が知っていましたが、神の陰謀を知っている人は誰もいませんでした。

 その世界は、地球のような青緑の星でした。発見者は、よくわかりませんが、気づいていたら、地球上の人の八割が、その存在を認めていました。本当に頑固な人は信じていませんでしたが、虚勢を張って頑固だった人も、じつはその存在を信じているということになったのです。

 また、その世界では地球と同じくギャンブルがはやっていて、「宝くじ」というギャンブルが地球とほとんど同じルールで行われていました。


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 その世界に、Aミツオ3という男がいました。地球と違うのは人間のひとりひとりに番号が振ってあって、それが名前に付けられているところです。Aミツオ3を番号に直すと、3Aミツオとなりました。3Aは既婚済で、2ハルキBという若い女と婚約していました。


 あれから、十年。ミツオが48歳、ハルキも39歳になりました。

 ある朝のことです。

 机を赤いハンカチで拭いていたハルキがミツオのほうを見て、あらっと言いました。「あなた、宝くじア番193985って、3等じゃないの……?」

「なんだって!」

 ミツオは駆け寄り、目をしばたかせましたが、3等は3等です。忘れたころにあたりはやってくるのです。それは実は、ほかの人類全員もそうでした。


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 ここで、神様の陰謀のすべてを話すときになりました。

 神様はその様子を雲の上から眺めていましたが、ふっと笑いました。

「そうだ。この人間たちは欲がありすぎる。いったん欲をわすれないと、あたりはやってこないのだ。そのうちこの人類たちは欲をそそらせすぎて、自滅するだろう」——。


 ところでなぜ、地球のようなこの星で私が神様の陰謀を知っているのかと言いますと、それは私が神であるからなのです。

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