アイドルありさ(仮)

臥龍岡四月朔日

第1話 アイドルありさ

スポットライトがステージ中央を照らし、小柄な少女が照らし出される。

鈴を振るような透き通った歌声が、ホールいっぱいに響き渡り、ステージの上を少女が舞い踊る。

彼女が歌い踊るたびに絹糸のような金色の長髪がたなびき、両サイドで括られた髪が跳ね、飛び散った汗が輝いた。

星を宿した深緑の瞳と、太陽のような笑顔がこの場のすべてを魅了する。それはまるでステージに舞い降りた妖精のようだ。

彼女がパフォーマンスするたびに観客席が沸き上がり、声援が会場を揺らす。その姿はまさにアイドル。

彼女は「ありさ」、今人気上昇中の、僕が担当するアイドルだ。


「お疲れ様、ありさちゃん」


ステージ袖で待機していた僕は、労いの台詞をかけつつタオルを渡す。


「ありがとう、マネージャー」


そういって彼女はタオルで汗を拭いながら微笑んだ。


「今日のステージも最高だったよ」


そう言うと、ありさは照れくさそうにはにかむ。その瞬間、彼女の首筋に光る汗が、一筋、煌めいた。

高揚して紅く染まった肌が艶めかしい。


「やっぱりステージで歌ってみんなが喜んでくれるのって良いよね」


そう言ってありさは子供っぽい笑みを浮かべる。

ああ、やっぱりこの娘はアイドルに向いている。


「あっ、でも……」


ありさの顔が少し曇る。


「ねぇマネージャー、この後ちょっとありさのマンションまで来てくれる?話があるんだ……」


なんの話だろう?

ありさの言葉に、一抹の不安を感じた。

アイドルをやめたいとかじゃあないよな?

もしかして、僕の事が好き、とかは無いか。

甘い妄想が頭をよぎるがそれを振り払う。

アイドルとマネージャーがそういう関係になるとかタブーだもんな。


僕達はありさが入所して以来の関係だ。

楽しいことも辛いことも二人で二人三脚でやってきた。

話と言うのは何だろう?

僕の事を信頼してくれているからこその話だと良いな。

そうポジティブに考えるようにして僕はありさと共にマンションへと向かった。


ありさの部屋へ着くと僕らは誰かに見られないように速やかに部屋に滑り込む。

静寂の中、ありさがテーブルランプを灯すと部屋の中が暖色の柔らかい灯りに照らされた。


部屋に帰るなりありさは服を脱ぎ下着姿になった。

凹凸の少いボディラインが露わになる。

透け感のある白のブラキャミとショーツが良く似合ってる。

女性経験の無い僕には少々刺激的だ。


「ありさちゃん、何度も言うけど部屋に帰るたびすぐ下着姿になるのやめてほしい」


目のやり場に困りながら彼女の行為を嗜める。

まあ、それだけ僕の事を信頼してくれているってことなんだろうけど、それはそれでちょっと複雑だ。


「えへへ、だってこの方が楽なんだもん」


舌をペロッとだしお茶目にそう言う。可愛いとは思うがもう少しプロのアイドルとして自覚を持って欲しい。


「はぁ…しかたないな……」


諦め混じりに僕がそう言うとありさは微笑んだ。



僕はソファに腰を掛け、一旦落ち着くと話の本題に移ることにした。


「それで、話っていうのは?」


僕が尋ねるとありさは恥ずかしそうにしながら言いにくそうに口を開いた。


「ねぇマネージャー、ありさとセックスして」

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