無職だった俺は転生して世界最強の魔導士として成り上がってみせる。

源真

第一巻

序章「師匠と歩んだ魔導人生」

第1話「無職からの転生」

 俺はどうしようもない人間だった。そして到頭家賃滞納によってアパートを追い出された俺の行く先は見当たらないまま彷徨っていた時だ。俺に悲劇が起きる。


 ドカーン!


 俺の下に運転中に居眠りしていたトラックが突っ込んで来て、自分の息の根が止まるこになった。それをきっかけに俺はこの世を去ったのである。


 そして気が付いた時には俺の目の前に一人の美女が見下ろしていた。それも彼女はどこか神々しく思える雰囲気を醸し出している。そこで彼女から現状について話があった。


「どうやら気が付いたみたいですね? ようこそ【転生の間】へ!」


「んぅ? お前は?」


「私は転生を司る女神だよ? よろしく」


「どうも」


 俺はらしくない一言がつい口から出てしまうが、それは決して悪いことじゃなかった。むしろ初対面の相手には妥当な行為なのではないかと、そんな気がしてならないのだ。


 そして女神様は俺に向けて死を宣告した。


「貴方は死にました。そこで新たに女神として選ばれた私は、死者を転生させてやり直すチャンスを与えるのを使命としています。そこで貴方にも転生を許したいです」


「転生だと? どうやら死んだのは本当らしいが、その後はどうなるんだ!」


「大丈夫です。貴方がこれから向かう転生先は【大魔導世界】と女神の間では知られています。それを知ったからには、貴方にはそこに転送させてもらいますが一つだけ注意です。そこでは生死を決める一戦を強いられる場合もあることから、実力不足にとっては生きづらい世界になります。魔法を扱った発展を中心にしては挙げ句の果てに私たちを超えた人間も少なからずいるのでした。なので、貴方はそこで充実した人生は送れそうですか?」


(いきなり何を言い出すかと思えば、俺にも魔法が扱えるのか? それなら少しは転生するのにも抵抗がなくなるな!)


「どうしますか? 迷っている暇はありませんからね!」


 そんな風に俺は転生した後の人生を決めさせられた。そこで諸注意を受け、これからの生活に備えるようにと言われる。


「それでは今回の転生が生前の無職だった頃の反省を活かす場として提供します。生前の人生から大逆転を狙って頑張ってください」


 俺は女神様からそんな一言をもらって転生を開始する。そして俺の視界は女神沢の手で塞がれ、気が付いた時にはすでに三歳を迎えていた。そこで俺が転生したことを思い出すと、そこで自分は眠ってしまっていたことに気付く。そして俺の人生は挽回のチャンスを与えられたのだと自覚を持ち、読んでいた魔法の本に再び視線を移した。


「まずは水魔法から取得しないと。お母さんからもらった本には丁寧に解説がされているし、これを読めば大抵の魔法は取得できるだろう。まずは【水流操作】から覚えるんだ」


 俺は転生したことを思い出した時には、すでに魔法の取得を始めていた。【水流操作】とは【水流を発生させて操る】のが大前提であり、これを取得した後はさらに【フレアミスト】や【フレアフォース】などの魔法を扱えるようにしたいと考えている。基本的に炎魔法は消費する魔力量によって火力が異なるので、その性質を活かすことで、俺は最強の魔導士を夢見ていた。


「シリウス! ご飯が出来たよ!」


「はーい!」


 そこで俺の名前が呼ばれた。俺に出来た新たなお母さんの名前はミサナギ・フルグレイトでお父さんがタイガ・フルグレイトだ。そして肝心の俺はシリウス・フルグレイトと言うのであった。


 俺はお母さんにご飯の支度が出来たことを知ると、家の中に入って食卓に着く。そこで目の前に並べられたご飯を食すため、挨拶をしてから食事を開始するのであった。


「美味しい! やっぱお母さんの手料理は最高だな!」


「そう? 今日は二人の好きなシチューにしたんだけど、喜んでくれたかな?」


「もちろん。いつもご飯を作ってくれてありがとう」


「いいえ。どうも致しまして」


 お父さんは相変わらずお母さんを大切にしている。それも俺の両親はかなり仲良しで、喧嘩をする様子も見られないのであった。両親が結婚する前はお互いに二級魔導士として活躍していたらしい。それを聞いて俺もそんな風になりたいと思って本を読みながら魔法の取得を目指しているのだ。


 そしてご飯を食べ終えると、お母さんが食器を片付けてくれ、俺は再び外に出て魔法を取得しに入った。


「大分完成に近いな? 魔力量もかなり増えて来たし、これなら自在に水流を操作することぐらいは簡単だ」


(あの時に夢を見てから俺の生前は無職だったことを思い出した。だから、今度はそうならないように頑張らないといけない。これは絶好のチャンスであり、こんな機会は滅多にないと思えてしまうのである。そこで俺がこの世界で最強を極めれば、それだけの功績が称えられるだろう)


 そんな思惑を抱きながらも、俺は魔法の取得に精を注いだ。それに魔法を取得するのは俺にとって一つの楽しみで、世界最強になれた時には、自分を誇りに思えると良いのであった。


 そしてやっとのことで【水流操作】を取得したら、俺は早速水流を発生させて、それを口から摂取する。そんな使い道もあることから、俺が覚えた魔法はかなり役に立つと思えるのだった。


「お母さん! やっと【水流操作】が取得できたよ!」


「あら? そうなの? それは凄いわね? さすが私の息子なだけあるわ!」


「うん!」


 そんな風にお母さんから褒められると、俺はかなり喜ばしくてこれからも頑張っていきたいと思えていた。


 そして今度の魔法は【フレアミスト】だ。これは炎の霧を拡散させて燃やす魔法になっている。これが使えれば広範囲に渡って炎が散らせるのだ。広い範囲で燃やせれば、それだけで戦力になるのは間違いないだろう。


 それから俺が【フレアミスト】の取得に入った時だった。そこにお母さんがやって来たのだ。そこで炎魔法を取得しようとしていると、お母さんはびっくりする。さすがに三歳で炎魔法は覚えては行けないと判断が下されてしまったのである。なので、俺が扱って良い魔法としては制限されてしまう。何度もお母さんを説得しようとしたが、それはお父さんの方からも俺の意見を拒んだ。俺は仕方なく違う魔法の取得に入ることにした。それも【転域】と言う高度な魔法だ。これを取得できれば、距離に関係なくどこにでも移動することが可能だった。


「最近はどんな魔法に挑戦しているんだ?」


「それはね? 難易度としては高いけれど【転域】だよ。まど近距離しか移動できない段階だけど、何とか順調に進んでる」


「ええっ⁉︎ まさか【転域】の取得をしているのか⁉︎」


「うん」


 お父さんは俺が【転域】の取得に全力を注いでいると知った時には、すでに自分は成長していたのだと自覚したらしい。少し大げさな気がするが、それでも【転域】はそれほど凄い魔法だと心得ていた。


 そしてご飯の後で、俺はいつもの場所まで【転域】を使う。三度目でやっと目的地まで辿り着くと、俺の消費した魔力によって身体に負担が掛かった。これも全部疲労であり、その場で大の字になって寝転がると、そのまま気を失ってしまう。


「……んぅ?」


 俺が目覚めた時にはすでに夕暮れが沈んでいた。そこに一人の女性がやって来て俺に尋ねる。少し怪しげに思えたが、それはすぐに気のせいだと認識する時が訪れるのだ。


「大丈夫。私は敵ではない。今日から君の魔導講師として雇われた者だ。どうやら見ていた通り、【転域】が完成して来ているわ。その調子で頑張りなさい」


「誰が雇ったんですか?」


「君のお父さんだ。息子に【転域】を取得する才能があったと知らされているが、実際は無理した上で使えていると見て良いだろう。しかし、私が面倒を見るから、今からうちに来なさい」


「え? 俺には変える場所がある! 帰らしてくれ!」


「そうは行かない。君には私の弟子としてうちに来ることが約束されている。それもお母さんだって賛成した結果見たいよ?」


「み、まじだ言ってんのか⁉︎」


「ええ」


 そんな風に俺はがっかりした。いきなり出て来た女性に誘われて彼女の自宅にお邪魔することにしようか迷っていたのだ。何せ女性とは言っても、いきなり初対面で意味の分からないことを言うのは止めて欲しかったのである。しかし、そこで彼女が懐から取り出したのは、俺の両親が書いた手紙だった。


『シリウスへ。これはお父さんとお母さんが書いた手紙です。これを読んでいる頃にはシリウスにも師匠が出来ているはずでしょう。きっと魔法の取得に熱心なシリウスにとって師匠の存在は貴重です。なので、今度からは師匠に面倒を見てもらって、いつかまた私たちの下に帰って来てくれることを信じます。お母さんとお父さんより』


 そこに書かれていたのは、この先のことだった。それも俺には師匠が出来たみたいだ。それがこの女性なら俺はこれから彼女の自宅に招かれる必要があるのかも知れない。わざわざ親元を離れてまで魔法の取得を優先してくれた両親の思いはただ純粋に俺が上達することを願ってのことに思えた。しかし、いきなり過ぎて俺の目からは涙が溢れ、それは喜びと感謝の気持ちが込み上げて来た証拠を示した雫なのである。


「分かりました。今日からお世話になります。これからよろしくお願いするのです」


「オーケー。それじゃあ早速行こうか?」


 すると、師匠が魔法を発動させた。それも最近になって取得を目指していた【転域】であり、それを使って一瞬で目的地に辿り着くのである。


「到着だ。このように【転域】は任意の対象者を四人まで同時に移動させることが出来るから、覚えておくと良いよ」


「す、凄い! 自分以外まで移動できるなんて思わなかった⁉︎」


「ふふっ。ま、今度からは炎魔法まで解禁したいと思う。以前までは君も両親から禁止されていた魔法だ。今日を以て自由に魔法が扱えるようになると良いだろう」


「はい!」


 そうやって俺は師匠と出会った。それが何よりも運命的だと思えて仕方ないぐらいだ。


 ちなみに彼女の名前はエルシャ・ディオローズと言って、魔導講師を務め始めてから七年が経つと言う。そんな指導経験が豊富な師匠に魔法を教われるのはかなり貴重に思えたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る