第22話: ダンジョンからの帰還と新たな始まり

レンは「深き眠りの番人」との戦いを終え、広間に静寂が戻るのを感じた。全身が疲労で重くなり、息を切らしながらも、ようやくダンジョンを攻略したという達成感が胸に広がっていく。無限成長の力は確かに彼を支え、これまでの数々の戦闘を乗り越えさせてくれた。だが、それ以上に、自分の努力が勝利へと導いたのだと実感していた。


「ついに……終わった」


そうつぶやきながら、彼は剣を腰に納め、ダンジョンの奥に横たわる「深き眠りの番人」の巨大な体を見つめた。倒した敵の威圧感がまだ残る広間は、どこか異様な静けさに包まれている。


しかし、この静寂も長くは続かない。レンは、心の中で次の一歩を踏み出す準備を始めていた。ダンジョンの攻略は確かに一つの区切りだが、それは次なる冒険への第一歩に過ぎない。


疲れ切った体を引きずりながら、レンはゆっくりとダンジョンの出口へと向かった。周囲の石壁は無機質でひんやりとしており、足元に響く自分の足音がやけに大きく聞こえる。かつてスライムたちとの激しい戦いが繰り広げられた場所を通り過ぎると、広間はまるで彼を見送るように静かに佇んでいた。


「ここまで来られたのも……スキルと自分自身の成長のおかげだな」


レンは一瞬立ち止まり、ダンジョンの空気を感じ取った。かつての緊張感が嘘のように消え去り、代わりに彼の心には静かな自信が芽生えていた。次の試練が何であれ、自分なら乗り越えられる――その確信が彼の心にしっかりと根付いていた。


しばらく歩くと、ようやく遠くに光が見えてきた。レンはさらに足を早め、出口に向かって進んだ。ダンジョンの暗闇から抜け出すと、目の前にはオレンジ色の夕焼けが広がっていた。空には沈みゆく太陽が淡い光を放ち、風が静かに肌を撫でる。


「戻ってきたか……」


レンは深呼吸をし、新鮮な外の空気を肺いっぱいに吸い込んだ。冷たく張り詰めたダンジョンの空気とは違い、外の世界には温かみがあり、どこかほっとする感覚が彼を包み込んだ。しばしの間、彼は目を閉じてその感覚を味わった。


再び街道に戻り、アルヴァナの街へと歩を進めた。街の門が近づくにつれ、街の活気が彼を迎え入れるかのように聞こえてくる。商人たちの声や、冒険者たちの笑い声、そして行き交う人々の雑踏が、街全体を賑やかにしていた。


レンが街に入ると、その喧騒がすぐに耳に飛び込んできた。戦いの疲労はあるものの、こうして無事に帰還できたことに胸がいっぱいになり、自然と顔がほころんだ。


「帰ってきた……」


街の中を歩きながら、レンはギルドへと向かった。今日までの冒険の成果を報告し、次に何をすべきかを考える必要があった。ダンジョン攻略を終えた今、彼の目標はさらに先へと向かっている。


ギルドに到着すると、扉を開けた瞬間、冒険者たちの活気が彼を包み込んだ。依頼を受けたり、仲間同士で話し合ったりする冒険者たちでギルド内は賑わっていた。レンはその中を通り抜け、まっすぐ受付に向かった。


いつものように受付の女性が彼を見つけ、笑顔で迎えた。


「おかえりなさい、レンさん!無事に6級ダンジョンをクリアされたんですね!」


「ただいま。何とか攻略できたよ」


レンは穏やかな表情で答え、彼女にダンジョン攻略の証を手渡した。彼女はそれを確認し、満足そうに頷いた。


「お疲れ様でした!こちらが6級ダンジョン攻略の報酬です。銀貨25枚になります」


レンは銀貨25枚が入った袋を手に取った。その重みを感じながら、達成感が再び胸に押し寄せてきた。これで装備を整え、次の冒険に備えることができるだろう。


「ありがとう。これで次の準備ができる」


「こちらこそ、レンさんのご活躍にいつも感心しています。また次の挑戦、楽しみにしていますね」


ギルドを後にしてレンは宿へと向かった。疲れが一気に押し寄せ、足取りも少し重く感じたが、心はすっきりと晴れやかだった。宿に着くと、受付で部屋の鍵を受け取り、ゆっくりと階段を上がった。部屋の扉を開けた瞬間、暖かい空気が彼を迎え、ベッドが柔らかく彼を待っている。


「ようやく……休める」


レンは荷物を置き、剣を丁寧に壁に立てかけると、そのままベッドに倒れ込んだ。心地よい柔らかさが全身を包み込み、瞬く間に眠気が襲ってくる。


「次の冒険……もっと強くなって、きっと……」


レンは次の冒険への期待を胸に抱きながら、ゆっくりと瞼を閉じた。これまでの試練を乗り越えたことで、自分自身が確実に成長していることを実感していた。そして、この成長がさらに大きな冒険への道を切り開くと信じていた。


その夜、レンは深い眠りに落ちた。明日から始まる新たな挑戦に向けて、体と心をしっかりと休めるために。



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本日5話更新となります。


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