第4話: スキル「無限成長」とその力

フォード家を出たレンは、冒険者としての第一歩を踏み出すためにまず自分の力を確認しようとしていた。「無限成長」という強力なスキル。それはただの「成長」ではない。レンは、そのスキルの詳細を理解するために森の中へ向かい、一人静かに訓練を始めた。


森の奥で立ち止まり、レンは手のひらを見つめた。スキルを意識すると、彼の中に小さな力が湧き上がるのを感じる。それは、自分が行ったすべての経験が無駄にならず、確実に自分を成長させているという実感だった。


「無限成長……まさに名前の通り、限界がない力だな」


このスキルの本質は、通常の成長とは一線を画していた。人間の成長には、必ずどこかで限界が訪れるが、レンに与えられた「無限成長」にはそれがない。努力すればするほど、レンの身体や技術、さらには知識に至るまで、全ての面で成長が止まらないのだ。


レンは軽く腕を振り、地面にある小さな石を蹴り飛ばした。それは何気ない動作だったが、彼はすぐに違和感に気づいた。同じ動作を繰り返すたびに、蹴りの感覚が鋭くなり、力の加減や方向を自然に修正できるようになっている。


「なるほど……」


レンはさらに何度か動作を繰り返しながら、その成長を自覚した。無限成長は、自分が行うすべての動作に対して少しずつ改善を加え、次第にそれが完璧に近づいていく。たとえどんなに小さな動作でも、何度も繰り返すことで精度が増し、やがて一瞬で最適な形に進化していく。


「これなら、どんな技術でもマスターできる」


このスキルは、ただ強さを増すだけではなく、技術や知識の吸収率までも高める。たとえば剣術や魔法を学べば、その基礎を覚えた瞬間から急速に技が洗練され、やがては誰もが到達できない域に達することができる。レンはその可能性に胸が高鳴るのを感じた。


「でも、この力は本当に『無限』なのか?」


レンはさらに考えた。このスキルに制限がないのなら、自分は永遠に成長し続け、やがて人間離れした存在になるかもしれない。だが、それがどれだけの時間を要するのか、具体的にどの程度の成長スピードなのかはまだ手探りだ。


その疑問を解消するため、レンは地面に落ちている小枝を拾い、即興で「剣」のように扱ってみた。何もかもが新しい世界で、まだ剣を手にしていない彼には、まず基本的な戦闘技術を習得する必要がある。


木の枝を振り回し、レンは自分の動きを確認した。最初はぎこちない動作だったが、わずか数分後にはその動作に安定感が増しているのがわかる。彼は一つの動作を何度も繰り返しながら、体が自然により良い動作を学んでいくのを感じ取った。


「これが『無限成長』の力……俺がどれだけ未熟でも、何度も繰り返すことで、すぐに最適な方法を見つけられる」


通常、人間は技術を学ぶために経験を積み、長い時間をかけてスキルを磨くものだが、レンはこのスキルによって、その成長を飛躍的に加速させることができる。それが「無限成長」の力だった。


さらに、この力は自分だけに留まらない。レンが仲間と共に行動すれば、その仲間にもスキルの効果が反映される。彼と一緒に戦うことで、仲間たちも成長し、その結果、チーム全体が強化されていく。レンは、自分がリーダーとしてパーティを導く立場に立ったとき、この能力がどれほど大きな影響を与えるかを想像した。


「仲間に与える効果は、俺自身の成長の20%程度か……それでも十分すぎるな」


レンは少し微笑んだ。この力を最大限に活かせば、自分だけでなく、共に戦う仲間たちも無限に成長することができるのだ。だが、それと同時に責任感も強く感じていた。自分の力が強くなるほど、仲間も成長する。逆に言えば、自分が強くならなければ、仲間の成長も遅れてしまう可能性がある。


「まずは、自分がもっと強くならなきゃな」


レンは改めて決意を固め、木の枝を握りしめた。このスキルがある限り、彼の成長には限界がない。だからこそ、レンは自らの能力を磨き続け、どんな困難にも立ち向かうための力を手に入れなければならないのだ。


しばらく訓練を続けた後、レンは森の木陰に腰を下ろし、ゆっくりと呼吸を整えた。無限成長の効果は確実に現れている。わずか数時間の練習で、自分の身体能力や戦闘技術が目に見えて向上しているのがわかる。それだけでなく、集中力や反応速度も以前とは段違いだった。


「これがあれば……どんな敵とも戦える」


レンは自分に言い聞かせるように呟いた。この世界でどれほどの強敵が待ち受けていようとも、彼は成長を止めない。何度も繰り返すことで、どんな技術も完璧に近づけていく。


「次は、ギルドだな」


レンは立ち上がり、森を後にした。自分のスキルを試すための冒険が、これから始まる。そして、その無限の成長を活かして、自分だけでなく、共に戦う仲間たちも強くしていくのだ。




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