第19話 ~ダンジョンに閉じ込められちゃった3~

「やはり避けますか」


「初見じゃないからね!お前は必殺技を見せすぎなんだよ」


「睿!僕は一旦離脱します。剣を渡しますね!」


「サンキュー!これで、まださっきよりは戦える」


「強者に武力を集めましたか、でも僕にはあまり効かないですよ」


「なぁに言ってんだ?俺もいるぜ!」


「ぐ、左腕を失いました、左腕が」


 ホントは胴体を狙ったんだがな、後ろからの攻撃も反応してやがる!


「なにか未練でもあったか!?もう一本も飛ばしてやる!」


「…………そうはさせません、これ以上の消費はいけません」


「次俺ね!」


「右足を失いました、ダメです、これ以上はダメでっす」


 このまま押し通せばもしかして倒せるかもしれん!


「睿!気合い入れてくぞ!」


「右腕失いました、たった。右、腕でで」


 俺がバケモンの右腕を飛ばすと、いきなり様子がおかしくなった。


 そして奴から大量の魔力が噴き出した。


「熱ッ!」


「やったか!」


「睿!それフラグって言うんですよ」


「ア、アアアア……せ、いぎょで、できませ、ん」


 そして魔物は噴き出した魔力を再度自らの身体に吸収すると、次の瞬間唸り声を上げ始め身体中から結晶が飛び出し、もはや人の形を保てなくなった岩のようなものがその場に残った。


 三人がその様子を伺っていると、後ろから手を叩きながら男の声を発した白衣を着た青色の塗装が施されたロボットが現れた。


『いやぁ、良いもの見せてもらったよ諸君!』


「アンタ誰だ?」


『おっと、申し遅れたね。私の名前はダン・ジョンだ』


「おっさんふざけてるね、本当の名前は?」


『ふざけてたって良いじゃないか、それに名前なんてなんの意味がある?君たちはゲームのキャラに本名とかを付けたりしちゃうタイプなのか?それにおっさんなんて心外だ、私はまだピチピチの30代さ』


「おっさんじゃねぇか……まぁ良いや、とりあえずコイツはなんなんだ?」


『私が造ったダンジョンチルドレンさ、良く出来ていただろう?その子は読み書きも出来るんだ。今はこんな塊になっちゃったけどね、まぁしばらくしたら周囲の魔力を取り込んで復活するだろう』


「なぁ、なぜこんなことをしている?なにか目的があんのは確かだろうが、俺たちを巻き込んで高みの見物たぁ良いご身分だな」


『実際良いご身分でやらせてもらってるからねぇ、目的かぁそうだね簡単に言うとこのダンジョンチルドレンを使って革命でも起こそうかと』


「革命ですか?」


『そ、まぁこういうと至極薄っぺらく聞こえるけど、外の奴らはダンジョンを食い物にし過ぎた。そのせいで最近かなりの異変が起きているだろう?それは君たち探索者のせいなんだよ』


「だからと言ってこんなことしたら、外の探索者じゃない人たちがかなりの被害に遭ってしまうのは想像がつかないんですか?」


『うーん、綺麗ごとを言うのは良いんだけどさぁ、じゃあ君たちはこのダンジョンの魔物のことを考えたことがあるのかい?君たちは搾取するだけ搾取して、まるで我が物顔で資源を奪い、魔物を殺してるじゃないか。彼らにだって生活があるというのは想像がつかないんですか?』


「そこまで考えているなら、外の世界でそう発信すれば良いじゃないですか、それに専門家に掛け合えば何か策があるかもしれない」


『あのねぇ、私もいきなりこうなったわけじゃないさ……まぁ何言っても無駄って気付いてしまったんだ。そうだ、ゲートは元に戻ってると思うよ……この話は聞かなかったことにして日常に戻ってね、じゃあ元気で。そこのお嬢ちゃんも元気でね』


「あ、待て!」


 ロボットは一通り話し終わると、段々と透明になっていき、最終的には完全に消えてなくなった。


 !


「みんな、ごめん……あと、倒してくれてありがとう」


 みんなボロボロだ、龍二は大丈夫だって言ってたけど、これだけの出血ならかなりの深手だと思う、きっと無理してるんだ。


 私は結局戦いに参加できなくて、あのロボットが来た時くらいにやっとあそこに辿り着いた。


 無力なのは悔しいけど、きっと私も戦闘に参加してたらただじゃ済まなかったと思う。


「はっ!ま、俺たちだけで楽勝だったな!」


「しかしアイツはなんだったんだ?」


「…………」


俊杰ジュンジエ!とりあえず一件落着なんだから、ひとまず喜んどけよ!」


「しかし、あのロボットの言うことがずっと頭に残ってて」


「俺らができることは何もねぇよ、精々このことを協会に報告することぐらいだ。まずはここから出よう、アイツも言ってただろ、いずれ復活するってよ。色々めんどくせぇことは頭良い奴らに任せとけば万事解決よ!」


 確かに龍二の言う事も一理ある、けれどやはり探索者である以上あのロボットの言葉が頭を反復するのはよく分かる。


 魔物にも魔物なりの生活があるのはなんとなく想像してたけど、目を背けてたのはその通りだ。


 なんか一気にいろんなことを経験したから疲れちゃったな、今日は帰ったらすぐに寝よっと。


「ふ~!やっと外に出れた!てかもうすっかり夜だな!もう当分ダンジョンはいいかな~」


ルイ、このダンジョンに来た理由忘れたんですか?生活費がカツカツだから少しでも増やそうって潜ったんじゃないですか」


「あ~それね。これ見て」


「!魔力の結晶じゃないですか!」


「そ、これ売ったら多分それなりの金になるし、当分ダンジョンはいいかな」


「俺も取ってくれば良かったな…………」


 私も結晶取ってくれば良かったかな。


「志穂!」


 この声、もしかして!


「美瑠!」


「良かった!もう会えないかと思ったじゃん!」


「もしかしてずっと待っててくれたの?」


「そうだよ!おばあちゃんに電話してもなんにも分かんなかったし、もう私心配で…………」


「お、志穂の友達か?」


 私と美瑠が数時間ぶりの再会を果たしていると、後ろから龍二が話しかけてきた。


「あ、こ、こんばん、わ…………」


「この子は美瑠、私の友達なんだ。美瑠!この人は龍二、私を助けてくれた人の一人!あとあっちの方で会話してる二人は睿と俊杰って人だよ!」


「そ、そうなんだ、ははは」


 すっかり委縮しちゃってる、確かに龍二は強面っぽいけどそんなに縮こまらなくても…………。


「あ、そうだ。カフェ閉まっちゃってるよね。ごめん」


「無事に帰って来てくれたから許す……」


「じゃ俺はもう行くわ、おふくろがお腹空かせてるかもしれねぇからな」


「じゃあねー!ありがと」


「おう!」


「行った?」


「なーにそんなにビビってるのお嬢さん」


「うわっ!」


「睿!すいません邪魔してしまって、彼女に謝りなさい」


 美瑠は睿にびっくりして、凄いスピードで奥の街路樹の後ろに飛んでいった。


 美瑠ってあんなに人見知りだったっけ?私の知る限りあんなにか弱い感じじゃなかった気がする。


 もしかして凄く不安だったのかな。


「ごめんなー!」


 !


 志穂が帰って来た、よかった……また私、置いて行かれちゃうのかと思った。


 どうやら龍二さんと睿さんと俊杰さんが、ダンジョン封鎖の原因の魔物を討伐してくれたようだった。


 中で何が起きたか私は分からないけど、志穂が無事ならそれで良い……初めてのダンジョンでこんなことに巻き込まれたら私だったら、もうダンジョンに行けないかもしれない、でも志穂はまた今度ダンジョンに行こうって言ってくれた。


 寝る前に少しTyowiterを覗いてみると、ダンジョン封鎖の情報はまだほとんど出ていなかった、けれど何人かは脱出できたっていう旨の投稿を見掛けた。


 私も直前にダンジョンにいたので、私宛にDMが沢山来ていた。


 みんなを心配させないために、志穂のことは伏せて投稿した。


 やはり他にもダンジョン配信者が巻き込まれているらしく、Dtubeに配信中突然カメラが切れる映像の切り抜きが大量に上がっていた。


 ダンジョン配信、これからどうなっちゃうのかな。


 そんなことを考えている内に、私は寝てしまった。


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