【書き散らし】ペシミスティックな妄想

二木

ペシミスティックな妄想

 人生を前向きにしようと意気込む時、天災や事故が降り注いで全部ダメになってしまうのではないか、という恐れが突如暗闇から湧いてくる。

 おかしな話で、精神的に辛い時期など、その悩みの為にこの世から消え去ってしまいたいと願うのに。

 いよいよ苦しみと折り合いをつけ、人生の常態は苦しみであるという事を受け入れ、それでも日々の楽しみを大事にし、有意義な人生を歩もう。そう思い立つと、俺は急に怖くなるのである。

 この人生というものが如何に先の見えないもので、我々は先の見えない暗闇の中、薮をかき分けて進んでいるのかということである。

 今日俺は1つの苦しみの種に打克ち、生きていくんだと誓う。

 しかしその翌日、身内や親友に不幸が訪れるかもしれない。そうなる可能性はゼロではない。それが堪らなく怖い。

 俺はこれを馬鹿な妄想だと思えない。起こり得る事態は起こり得るのだから。


 この感覚については別に俺個人が特別持っている感覚ではなく、多くの人が潜在的に持ち合わせている恐れであると思う。しかし、皆それを常に念頭に置きながら生きているわけではないだろうし、そんな事をしていては気が違えてしまう。

 だから俺も、当然普段からこんなことを考えて生きているわけではない。

 しかし、ニュースやSNSを見ると「飲酒運転をしたドライバーが運転する車が対向車に衝突し、幼い子供を含むなんの罪もない家族が亡くなった」というような惨たらしい情報を知らされることがあるだろう。その瞬間、俺はこの世界はなんてランダムで、無軌道で、支離滅裂なのだろうと思う。

 戦争のニュースも勿論凄惨だとは思う。だが、特にこういう事故のニュースを以て、あの独特な感情に陥るのは、自分の身に起こり得るものとしてのリアリティが想像しやすいからなのだろう。


 考えなくてもいいことをウダウダ考えてしまうのは俺の悪癖だ。これのせいでちっとも前に進めない。

 未来は明るいなんて、冗談でも信じられない。

 でも、こんな不条理な世界で生きていくにはある程度馬鹿になるしかない。それすらも不条理だ。なんなんだこれ。

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