第1章

だってまだ..その1

時間ピッタリ、私は浮遊カメラの配信ボタンを押す

「こんにちは、甘党るりでーす。今日も配信していくよー」



[楽しみ]

[待ってた!!]

[今何層?]

[週1の癒しです...]

同接数972 平日にしてはちょっと多いかな?


急速に流れていくコメント欄をダンジョンで鍛え上げた動体視力でおっていく。

「今は50階層中の5階層にいるよー」

リア凸防止のためどこのダンジョンかはなるべく控える。

群馬県、B級ダンジョン遊園地跡、そこまで難しいダンジョンではなく10階層のボス部屋まではCランクの中堅ならソロで難なく進めるレベル。

イレギュラーさえ起きなければCランク上位の私なら問題ないはず..


ダンジョンに潜る度に小さい頃の、と言ってもまだたったの6年前のことを思い出す。お父さんが死んだ日のことを、渋谷の悲劇を。

Aランクだった。

死ぬわけないと思っていた。

でも死んだ。

ダンジョンはそういう場所だとその時初めて認識した。けど私は配信をする、絶対に辞めない。これは復讐なんだ、私のちっぽけなダンジョンへの。


[今日はどうするの?]

[10層のボス攻略までやる?]

[ボスだぞ、ソロは無理だろ]

[頑張ってください]

[かわいい]

[君に死んでほしくないんだ!!だから潜らないで!!!!]

[JC100入りおめでとう!!]

[ダンジョン先進国強すぎ、3カ国でWA100のうちほぼ6割閉めてる]

[と言うか日本が弱いだけ]

[それはしゃーない笑、年齢制限追加した国に文句言え]

[↑あと対応が遅れたも追加で]

[相変わらずJC100って紛らわしいよな]

[ジャパンCランカーTOP00だろ変な妄想すんな]

[ワールドAランカーTOP100→WA100...略ってむずいな]

[↑ださい、もっといいのないの?]

同接数1000人ちょい

テンポが悪くなコメはコメは無視。

早く潜りからね、


「今日は8階層まで潜るよ、目的は無難にスキル強化かなー」

右手に水、左手に炎を出しながら答える

私のスキル魔術師は4属性全ての魔法が使えるB+スキル。


スキルはあくまで可能性。絶対的なものでは無い。例えば絶対防御というスキルを持っていたとしても、本人がスキルを扱い慣れていないと簡単に突破されてしまう、本人の努力次第でどんなスキルも強スキルにできる。そうお父さんは言っていた。

でも、やっぱり才能の差はある。初めてダンジョンに潜った日私の才能は可視化された。ならその力で限界まで頑張る。それだけ。


「JC入りなんてまだまだだよ、目指すはAランクだからね」

JC100なんてTOP10でようやくWCに入るかどうか、そんな低レベルにいつまでも居たくない、私はWA100に入る。父がそうだったように

「それじゃあ、攻略していきましょう!」

思考とは裏腹に明るい声色と表情で元気よく

人間は案外自分を取り繕える。だってほら、こんなことを考えていても誰も気づかない。

*********

もうすぐ9階層へ続く階段が見えてくるころ、ここまで目立った問題はなし、順調に攻略できている。

情報が正しければそろそろかな、私は警戒心をMAXまで高める。

....きた!!

私の目の前で魔法陣が輝き出すと同時に、私は予め準備しておいた魔法を発動する。

「『トラップ』『アイススピア』!!」

出てきたシルバーウルフの群れは見事に私の魔法に引っ掛かった、トラップで魔法陣の地面を底なし沼へ変え機動力を奪った後、貫通力の高い『アイススピア』で滅多刺し、想定通りの結果に満足だ。

落ちた魔石10個とドロップ品を確認する。レア物はなし、

[強い!!]

[ナイス!!]

[うまいな〜]

[これはJC入る実力あるわ]

[おめ〜]

[よく反応できたな]

[知ってたんじゃないの?]

[これ初見は無理でしょ]

[情報収集できてえらいね]

同接数1342お昼時だから人が増えてる


「今のは対応ミスったら即死だからね、そういうのはギルドで教えてもらえるんだよ」


そしてついに9階層階層へと続く階段に到着した。


「少し降りてみよっか」


[OK]

[大丈夫なの?]

[階段のセーフィゾーンでなきゃ大丈夫でしょ]

[行っちゃおー]

「レッツゴー!!」

そう言って階段に足を踏み出した瞬間、「へ?」私は光に包まれた。

光が収まり視界が開ける。焦るな情報収集だ、敵の確認→自分の20メートル先にある8メートルほどの巨大な牛の石像、多分あれ。

隠れられそうな障害物、大理石の床と巨大な柱が自分を囲むように8本。

「最悪」洞窟型じゃない、ということは

[ボス部屋か]

[柱までダッシュしろ]

「わかってる」

柱に身をひそめる。がボスが走りながらこちらに近づいてくる。

[カメラで確認する限り扉なし、倒すま出れないやつか]

[そこ30階層だって、Aランク来るまであと6時間くらい]

[耐えてくれ]

[推しが転移に引っ掛かったのは初めてや]

[ボスは石像型、攻撃力防御力は高いけど動きは今のが全力]

「ナイス」

[追いつかれたら終わりか]

[これならギリ耐えれそう]

[そこ遊園地跡だろ?なんで転移トラップがあんだよ‼︎]



ダンジョンには稀に即死トラップと称されるものがある

モンスターハウス、召喚陣、他にも沢山、

そして最も凶悪とされるものが転移トラップ、場所も、タイミングも唯一全てが完全ランダム。、

最後だけおかしいと思う。明らかに設定ミス。作者どうにかしてよほんとにさっ、

私は逃げ惑いがら、小さく呟くカメラに拾われないくらい小さく。

「『まだ』死ねない」

だってまだ、

[後ろ!!!]

全身に衝撃が走る。

何をされたんだろう、うまく行ってたはずなのにな、ちゃんと逃げてたのに、

ゆっくりとそして徐々に速くなりながら、敵がこっちに走ってくる。

やだ死にたくない

だってまだ、

まだ...




彼氏できたことないのに。


私の意識はゆっくりと落ちていった。





*******

現代ファンタジーっていいよね。







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幼なじみと縁の下の力持ちやってたらなんかバズってた。 ククノ宮八一 @ankana

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